sleepy.ab成山剛さんの作詞的な黒歴史。発端はゲーテ。
「待ち合わせはいつも本屋。駅の本屋はすごくよく行きます」

 そう話すのは、北海道を拠点に活躍するロックバンド「sleepy.ab」のフロントマン・成山剛さん。まず真っ先に行くのは大好きなサッカー誌のコーナーだそうで、毎回『サッカーダイジェスト』を買って、若手プレーヤーを発掘するのが楽しみなのだとか。

 そんな成山さん、「本は数を読むタイプではなく、同じものを繰り返し読む方」だと言う。音楽活動を始めた頃にであって繰り返し読んでいるのが、沢木耕太郎の『深夜特急』だ。

「読んでいると、本当に自分が旅をしているような感覚になれるんです。そんなにアクティブな方じゃないので、自分で旅をすることはあまりありません。だからこそ、本を通して旅のドキドキ感を味わえるのがいいんでしょうね。でも僕、『深夜特急』は最後まで読んでいないんです。旅が終わるのが嫌で」

 おふっ! 最後まで読まないのは、ちょっと素敵な理由だった。ところでなぜ、一冊の本を繰り返し読むのが好きなんですか?

「音楽もそうなんですけど、読んでいた時、聴いていた時の自分を思い出したいからかな。あの時の感覚みたいなものを」

 おおふっ! またもや素敵な理由を繰り出してくださった成山さんだが、自身のバンドsleepy.abでは作曲だけでなく、作詞も手がけている。本からインスピレーションを得ることもあるのだろうか?

「小説や詩からの影響はあると思います。例えば太宰治さんの『斜陽』の日本語の美しさ、それにちょっと痛みを感じるようなところには、すごく惹かれます。ただ、以前入院していた時に読んでいたら、病院の先生に取り上げられましたけどね。今は読むんじゃない、と」

 ほかにも、97歳にして今なお現役で活躍するジャーナリスト・むのたけじの『詞集 たいまつ』も創作活動のこやしとなった本のひとつ。

「古本屋で見つけて、すごくぐっときたんですよね。短い文でずばっと核心をついたことが書かれていて。刺激的でした。あとは、ゲーテも読んでましたね。でもこれはほんとに真似したくなっちゃう。ゲーテさんには失礼かもしれませんけど、上目線の言い回し方というのがあるじゃないですか。そういう表現を真似して書いたノートが発見されて、すごく恥ずかしい気持ちになったことはありますね(笑)。「人間よ」とか偉そうに言っちゃったりして。何様だと(笑)。ただ、限られた作品にしか触れていませんが、詩を書き始めた頃は自分の好きな表現を、いろんな詩集や小説を読んで探していたような気がします」



〜後編ではニューアルバムと本の話をお届けします。お楽しみに!〜


(プロフィール)
成山剛(なりやま・つよし)
1977年北海道根室市生まれ。sleepy.abのヴォーカル/ギター。札幌の音楽専門学校を卒業後、1998年にsleepy ab.結成。ニューアルバム『neuron』が2月6日にリリース! また、4月11日の金沢vanvan V4を皮切りに全国ツアー「neuron tour」も開催予定!
http://www.musicaallegra.com/sleepy/

取材・文/根本美保子



『猫に言いたいたくさんのこと―親愛なる君にもっと好かれる73の方法』
 著者:野澤 延行
 出版社:池田書店
 >>元の記事を見る



■ 関連記事
アノヒトの読書遍歴 西田征史さん (後編)
アノヒトの読書遍歴 西田征史さん(前編)
アノヒトの読書遍歴 川村元気さん


■配信元
WEB本の雑誌