理髪店が「ねじねじ」になった理由




普段、なにげなく目にしている街中の看板やサイン。昔からある目印の中には「なぜ、このデザインに?」と思うようなものもある。そこにはどんなワケがあるのだろうか。





今回お届けする後編では、誰でも見たことのある目印のトリビアをふたつ、取り上げてみた。





■軒先で見かける「アレ」は巨大タワシにあらず





蕎麦懐石(そばかいせき)のお店や居酒屋などで見かける、まんまるの巨大タワシのような物体。これ、何でしょう? うんちく好きの人ならいざ知らず、若い世代では知らない人も多いのでは。



これは杉の葉をたばねたもので酒林(さかばやし)や杉玉と呼ばれる。そもそもは酒屋で新酒ができたときに軒先に下げて「お酒がある」ことを知らせたもの。昔は細くたばねた箒(ほうき)のようだったのが、だんだん球形に近づいていったらしい。



なぜ「杉」の葉なのか。これには諸説あるが、江戸、明治時代の看板の形やその由来などを解説した『江戸看板図譜』(三樹書房)にこんな記述を見つけた。



「神にまつる酒を神酒(みわ)といったところから、(中略)同音の三輪神社が酒の神を祭神とするところから転じて『味酒の三輪』と三輪神社の枕詞としても用いられるようになり、その三輪神社の神木が杉なので、その縁で、杉の葉をたばねて看板とするようになった」(『江戸看板図譜』)



この説が正しいかどうかは不明だが、江戸時代にはこうした言葉遊びによる看板がいくつも登場した(「弓射る」を「湯入る」とかけて、弓矢を組み合わせた銭湯の看板など)。行きつけのお店でねにげなく目にしている看板が、江戸時代から受け継がれたものだと思うと、何だかあらためて風情を感じないだろうか。



■理髪店の「ねじねじ」が「ねじねじ」になった理由







昭和レトロな雰囲気をかもしだす理髪店のシンボルといえば、これ。透明なケースの中で3色のらせんがくるくると回りながら明るく光る、いわゆる「床屋のねじねじ」だ。正式名称は「サインポール」だが、その名は意外に知られていない。オランダ由来の菓子「有平糖」に似ていることから「有平棒(あるへいぼう)」と呼ばれた時代も。



なぜ、棒の形なのか? その発祥は中世のイギリスとされる。理容師が外科医を兼ねていた時代、瀉血(しゃけつ・血を抜いて病を治す治療法)で患者に握らせ、流れる血を皿に受けるために使われた「棒」が起源というのが有力な説だ。



この棒は血で汚れるためあらかじめ赤く塗られており、洗った包帯をらせん状に巻きつけて干すのにも使われたとか。そのときの「赤色と白色のらせん模様」が今の模様のもとになったという。ただし、青色が加わった理由ははっきりしない。



外科医と区別されるようになったときに加わったという説、またアメリカの星条旗の色からきたという説がある。――あの模様の始まりが「血」と「包帯」だったとは!



いずれにせよ、わかりやすくて目立つという点で、これ以上の看板はなかなかないのでは?



■お店の個性がつまったオモシロ看板を見つけてみよう!







さて、前編に引き続き、街のオモシロ看板をスナップでご紹介する。



どーん! と迫力の立体看板。ほぼ実サイズと思われる。



オモシロ怪しげなディスプレイは「覆麺智」というラーメン屋さん。











店名が書かれた文字看板もよく見ると「え?」と思うようなものがちらほら。これはパチンコ店の看板。何だか深い意味を感じさせるが、パチンコ店というところが笑いを誘う。





「看板」には、それぞれのお店の工夫や心意気が詰まっている。お店を選ぶ際は口コミの評判に従うのが今どきのセオリーだが、あらかじめ「おいしい」と分かっていると、それはそれでつまらないもの。明日のランチの場所は、ぜひ「看板」で決めてみてはいかがだろうか。



(撮影・取材/スナメリ舎)