「耳の穴かっぽじって聞け」は誰が最初に使ったの?


先日、綿棒を使って耳そうじをしていてふと思ったんですが、「耳の穴かっぽじって聞け」っていう言葉がありますよね。







いったい、誰が初めに使った言葉なのでしょうか?





■江戸時代に流行した人情本、つまり胸キュンドラマ!?



「耳の穴かっぽじって聞け」



そのどことなくクラシカルな響きは時代劇を連想させます。しかも啖呵(たんか)を切る時に使うような威勢のよいフレーズだから、使い手は大阪の商人ではなく、ましてや京のお公家さんでもなく・・・そう、江戸っ子!



そこで江戸時代の文献を探してみると、こんな一文を見つけました。



「ヤイ、耳の穴ァかっぽじって、よく聞きゃアがれ。かたじけなくも尊くも、小梅の姉御お由さんの弟分、古風のようだが、くりからの龍吉さんたア、おれさまのことヨ」



江戸時代の人情本『春色梅児誉美(しゅんしょくうめごよみ)』に登場するセリフです。

人情本とは下町の人びとの恋愛模様を描いた連載小説のこと。



この本のおもな登場人物は20歳前後の男女。イケメンの若き御曹司が家を捨て、年上の彼女のヒモになって楽しく暮らしているところへ、御曹司の婚約者が乗り込んできて……。

これってまるで、現代の胸キュンドラマみたいにドキドキする展開!



実際、私たちがテレビドラマに夢中になるのと同じように、当時の江戸っ子たちの間でも人情本が流行(はや)っていて、この本の作者である為永春水はじめ人情本作家は本の続きを書くのに大忙しだったそうです。



■テンポのよい言葉は、時代を超えて語り継がれる!



為永春水の『春色梅児誉美』にはいくつかの続編があって、その1つ『春色辰巳園』には「ちゃらんぽらん」という言葉が登場しています。



「ちゃらんぽらん」、「かっぽじる」……。



江戸っ子たちはどうやら、テンポのよい言葉が好きだったようですね。「チャキチャキの江戸っ子」なんて言いますもんね。



あ、ちなみに「チャキチャキ」の語源は「嫡嫡(ちゃくちゃく)」。つまり江戸時代から代々その家を継いでいる人という意味なので、正真正銘の「チャキチャキの江戸っ子」は、今の東京においては少ないのかもしれません。



■「カレシ」という言葉が生まれたのは昭和4年!



ところで女子のみなさん、自分や友だちの彼のことを「カレシ」って言いますよね。

いわゆる若者言葉とされているこの言い方、一番初めに使われたのは意外にも古く、約80年前のこと!

昭和4年、徳川夢声というラジオやテレビをはじめ幅広く活躍した作家による造語です。



その誕生秘話が語られたインタビューによると、「彼女」と「彼」の対話文を書くにあたって両方2文字にそろえたほうが都合がよいという理由で「彼」に「氏」を加えたのだとか。



「彼氏」って実は、歴史あるアカデミックな言葉だったんですね。



そう言われてみれば友だちに「彼できた?」と聞くよりは、「彼氏できた?」のほうがテンポよく会話が弾むような気もします。



■あのテレビドラマから生まれた流行語って?



テンポのよい言葉が流行語となったのは、何も昭和や江戸時代だけの話ではありません。



例えば、「ぶっちゃけ」(好き嫌いはともかくとしてキムタクが、2003年のドラマ『GOOD LUCK!!』で頻繁に使ったことで市民権を得た)。



もっと古いところでは、「僕は死にましぇん」(武田鉄矢が熱演した1991年のドラマ『101回目のプロポーズ』。このセリフは同年の流行語大賞金賞)。



さらには、ドラマの題名からすでに時代を感じさせますが『スチュワーデス物語』の「ドジでのろまなカメ」(1983年。「やるっきゃない」という昔なつかしい言葉もこのドラマ出身だとか)。



さてみなさんは、どんなテレビドラマのどんな流行語が耳に残っていますか?



(参考文献)



『春色梅児誉美』中村幸彦校注 日本古典文学大系64/岩波書店



『暮らしのことば語源辞典』山口佳紀編/講談社



『江戸時代語辞典』潁原退蔵著・尾形仂編/角川学芸出版



『明治・大正・昭和の新語・流行語辞典』米川明彦編/三省堂



(渡辺フキコ)