図7・8・9(図表提供=フランクリン・コヴィー・ジャパン)

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フランクリン・コヴィー社の「7つの習慣」セミナーは、これまでに20万人以上が受講。そんな同社が提供する最新のリーダーシップ研修とは。

リーダーには4つの役割が求められるが、これらが果たされないとき、組織は多くの問題を抱える(図7)。

まず、リーダーが信頼を呼び起こせない場合、陰口や内輪もめ、中傷などがはびこり出す。意義を与えられない場合、方向性や意思決定の基準があいまいになり、陰で思惑をめぐらせるメンバーが増えたり、政治ゲームが繰り広げられたりするようになる。人を育てるしくみや意思決定のプロセスなどのシステムを創造できない場合、組織はまとまりをなくし、部門間競争、共依存体質、あからさまな偽善などが生じてくる。そしてメンバーの力を解き放てず管理が強まると、チームは無力化し、周囲への無関心、内職の横行などが見られるようになる。

このような組織の症状は慢性化していく。急性の痛みとしては、低品質、コストの増大、柔軟性の欠如、行動の鈍さなどが表れる。そして「市場」での失敗、マイナスのキャッシュフローなどの事態に陥る。

そうならないよう、4つの役割をしっかり果たしていきたい。4つの中でも中核をなすのは「信頼」の構築である。信頼がベースになければ、他の3つの役割を果たすことはできない。

現在はスピード重視の時代といわれるが、信頼はビジネスにスピードをもたらす大きな要素である。私たちの活動は、大部分が人間関係や組織内関係を通して行われ、そこで交わされるコミュニケーションは信頼関係が基盤となる。たとえコミュニケーションが明確かつ的確であったとしても、信頼関係が欠如した状態では、多くのロスを生み、コストを支払うことになる。

強い信頼関係の下では、言葉の裏に隠れた意味合い、隠れた問題さえも相手に伝わり、コミュニケーションは瞬時に成り立つ。仮に失敗した場合でも、互いに許し合い、協力してリカバリーできる。信頼は仕事のスピードを速め、同時にコストを下げるのである。

最も信頼できるビジネスリーダーの1人に世界的な投資家であるウォーレン・バフェットがいる。彼はウォルマートの子会社を約230億ドルで買収したことがある。通常これだけの規模の取引を締結するには1年近くかけ、相手企業の調査に数百万ドルものコストを要するものである。ところが、この買収では両者に厚い信頼関係が築かれていたので、わずか2時間の話し合いで握手をし、相手企業の調査は行わなかった。取引はわずか29日間で完了したのである。「我々はウォルマート側の計画がすべて実現するとわかっていたし、実際その通りになった」とバフェットは後に述べている。信頼関係がスピードを生み、コストを最小限にするという同じ原則はどのような組織、どのような人間関係にも適用される。

リーダーの信頼は「人格」と「能力」の2つから成り立つ。両者が高いレベルにあって初めて、そのリーダーは信頼性があるとメンバーから評価される。仮に、人格が並外れてよくても、能力の低さをカバーすることはできない。その反対も同様で、どちらも高いレベルにあることが求められる。

図8はその関係を樹木にたとえた絵である。ここにあげられている各項目について、日頃の自分を省みてほしい。

「第8の習慣リーダーシップ」の研修ではもう1つ、リーダーが自らを振り返るためのツールを取り入れている。これはコヴィー博士の息子、スティーブン・M・R・コヴィーが著書『スピード・オブ・トラスト』であげている「信頼されるリーダーの13の行動」である(図9)。表の項目を日々の行動に照らし合わせてみよう。自分の強みと弱みが明確になるはずだ。

今後、日本の職場にダイバーシティ(多様性)が浸透してくると、信頼性の重要性はますます高まる。個性の対立とどう向き合うかという試練が日常的に起こるはずである。そのとき信頼に基づくコミュニケーションが成り立たなければ、活動は大きなロスを生む。

リーダーは対立を避けることなく、むしろチャンスと捉えるべきである。もし自分の考えと合わない意見がメンバーから出てきたらどう応じるか。対立する意見を頭から受け容れないリーダーには、誰しも口を閉ざすものだ。

会議の場でA案とB案が提出されたときは、どちらか1つを選ぶのではなく、対立を避けて妥協案をつくるのでもない。お互いの違いを認めたうえで融合するという思考が求められる。

画期的な製品を数多く生み出したことで有名な米IDEOは、1990年代に「21世紀に持っていけるショッピングカートをつくろう」というプロジェクトを立ち上げた。従来のカートは大きくて頑丈なため、傾斜のある場所で人や車を傷つけるなどいくつもの問題があったからである。

このプロジェクトには社内の人たちだけでなく、消費者や学者など多くの人が参加し、安全性、使い勝手、デザインなどさまざまな観点から複数の案が出された。最終的に、従来の角ばったフォルムではなく、丸みのあるスマートなカートが誕生した。それはすべての案に見られるアイデアが活かされ、しかもどの案とも違うものになった。多くの関係者の意見に耳を傾けたうえで、第3の案に到達できたのである。

この事例と同様に、リーダーには、自分の考えを主張する前に、メンバーを理解するように努めることがまず求められる。メンバーとの強い信頼関係はそこから築かれるのである。

(フランクリン・コヴィー・ジャパン副社長 竹村富士徳 構成=伊田欣司)