海外の映画やドラマを見ていると、お金に困った男性が精子提供をして稼ぐ、という話が出てくることが結構あります。“アルバイト感覚”という描写に、ちょっと目を丸くすることがありますが、今回紹介する映画は、なんと693回も精子提供をした男性が主人公です!


「人生、ブラボー!」(原題:STARBUCK)
 42歳で独身のダヴィッド(パトリック・ユアール)は、父親が経営する精肉店で兄弟たちと一緒に働いています。でも、配達担当なのに、遅刻ばかりするし、配達を忘れたりもする、ダメダメ男のダヴィッド。おまけに借金が8万ドル(約640万円)もあり、取り立て屋におびえる毎日です。

 そんなある日、ダヴィッドの恋人のヴァレリー(ジュエリー・ル・ブルトン)の妊娠が発覚します。それを聞いたダヴィッドの困惑した様子と、彼のだらしない生活ぶりにあきれたヴァレリーは、1人で産んで育てると宣言。


 しっかりしなければと思い始めたダヴィッドに、さらに追い打ちをかけるかのように、驚きのニュースが。23年前、彼は約23カ月にわたって、「スターバック(STARBUCK)」という仮名で、693回の精子提供を行い、2万4255ドル(当時のレートで約250万円)の報酬を受け取ったのですが、その精子で533人の子どもが誕生したというのです!

 そして、そのうちの142人が、遺伝子上の父親である「スターバック」の身元開示を求める訴訟を起こす予定だと知ったダヴィッド。弁護士から、その子どもたちのプロフィールを渡されたダヴィッドは、身元を明かすつもりなどないと逆ギレし、書類をごみ箱に捨ててしまいますが、好奇心からプロフィールの1枚を見てみると、それは自分の応援するサッカーチームのスター選手のものでした。「おれの息子だったなんて……」と、驚くダヴィッドは、これをきっかけに興味を持ち、身元を隠して子どもたちを訪問し始めます。


 それぞれの人生を懸命に生きているダヴィッドの子どもたち。ダヴィッドは、そんな彼らに「何かしてあげたい」と考えるようになり、彼らの手助けをするために、さまざまなアクションを起こしていきます。


 ギョッとなってしまうような精子提供の回数に、どんな変わった映画なんだろうと思って見始めましたが、いつまでも子どものようなダヴィッドが、自分の子どもたちと交流するうちに、少しずつ成長していく姿がほほ笑ましく、思わず笑ってしまう場面も多くて、心がとても温かくなる作品でした。

 本作は、カナダのケベック州を舞台にした映画。ケン・スコット監督・脚本によるオリジナリティーあふれるこの物語は、世界中の映画祭で喝采を浴びています。すでに、スティーブン・スピルバーグ率いる「ドリームワークス」がリメイク権を手に入れ、ハリウッドでリメイク版の製作が進んでいますが、絶妙な笑いと、心にじんわりと響く本作に感動したスピルバーグは、オリジナルの風合いを生かすために、ハリウッド版でもスコットに監督と脚本の続投を依頼したそうです。


 ちなみに「スターバック」とは、世界中に20万頭以上の子どもたちがいる、カナダ生まれの超優良な遺伝子を持つ種牛の名前。

 ダヴィッドは、なぜ693回も精子提供を行ったのか? それが分かる頃には、彼のことをとても好きになっているに違いありません!

 インドの“ボリウッド”バージョンの製作も進行中だという「人生、ブラボー!」。オリジナルのカナダ版は、ぜひ押さえておくべき1本としておすすめします!

「精子提供を扱った映画」DVD紹介

「カレには言えない私のケイカク」


 精子バンクを利用して、子どもを持とうとする独身女性が、“運命の相手”と出会うロマンティック・コメディー。ニューヨークでペットショップを経営するゾーイ(ジェニファー・ロペス)は、運命の男性を待ち続けるのをやめ、“バックアップ・プラン”として未婚の母になることを選択する。精子バンクでドナーを選び、人工授精に初めて挑んだ帰り道、同じタクシーに乗り込んできたスタン(アレックス・オロックリン)と出会ったゾーイ。スタンとデートすることになったゾーイは、彼と引かれ合うが、人工授精による妊娠が成功したことに気づく。恋した相手が、見知らぬ男の精子で妊娠したことを知ったスタンの反応は!?

2010年/アメリカ/ジェニファー・ロペス、アレックス・オロックリン
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/DVD1480円/発売中
「キッズ・オールライト」


 ニック(アネット・ベニング)とジュールス(ジュリアン・ムーア)は、長年付き合っている女性同士のカップル。2人は同じ精子提供者から、それぞれが、ジョニ(ミア・ワシコウスカ)とレイザー(ジョシュ・ハッチャーソン)という子どもを産み、4人で暮らしている。母親2人と姉弟という、少し変わった家族構成だが、楽しく愛情に満ちた生活を送っていたニックたち。だがジョニとレイザーは、医学上の父親ポール(マーク・ラファロ)を探し当て、母たちに内緒で会いに行ってしまう。ポールの存在によって、平和だった家族に異変が生じ初め……。気ままな独身生活を送っていたポールが、精子提供によって誕生していた子どもと出会い、どんな行動を起こすかが見どころの1つだ。

2010年/アメリカ/アネット・ベニング、ジュリアン・ムーア
アミューズソフト/DVDオリジナルバージョン3990円/発売中