官能小説には実体験が描かれているのか? OL小説家にインタビュー




長引く不況はまだ終焉の気配を見せず、なかなか給料が上がらない昨今。世間ではフルタイムで働きながら、バイトやFXなどの副業でお金を稼いでいる人も多い。そんな中、派遣社員として勤務しながら、官能小説を書いている女性がいる。小川沙耶さんだ。スポーツ紙や雑誌などで作品を発表し、文庫本を三冊刊行。ダブルワークの実態や、官能小説のネタ元についてインタビューを行った。



■原稿料はボーナスのようなもの



――官能小説を書いて得る収入は?



「人にもよると思いますが、まだまだ駆け出しの私はスポーツ紙の連載ですと、週に4〜5本掲載されて、ひと月に都心のワンルームの家賃ぐらいでしょうか。ほかにも雑誌、WEBなど、媒体によって単価が違うので、本当にお小遣い程度のときもあります。ご飯を食べたらほとんど残らない、みたいな」



――著作が出るとどのくらいもらえるんですか?



「契約にもよります。最初に初版分の原稿料をいただく場合もありますし、印税率も人によって違います。本の値段にもよるので、これもさまざまですね。私の場合は文庫本を出したときは、月給以上の金額をいただけました。さすがにお給料の二カ月分には届きませんが、私はボーナスがないので文庫本のギャラをいただいたときは妙にうれしいですね(笑)。正社員の人ってこんな気持ちになるのかな、って」



――派遣社員との両立は大変ですか?



「大変といえば大変ですね。執筆の仕事が立て込んでいるときは、会社からまっすぐ帰り、パソコンに向かって深夜まで書く日が続きますし、早起きして書くこともあります。体がしんどくなって、『会社休みたいなー』って思うときがありますね」



――なぜ官能小説家になろうと思ったんですか?



「単純に、官能小説を好きだったということがあります。いろいろ読んでいくうち、オリジナルのエロチックなストーリーや描写を思いつくようになったのと、全然関係ないジャンルの映画や小説を読んでも『ここで主人公がこの女性を……』みたいなアイデアも浮かんじゃうようになりまして(笑)」



――もう書くべくして書いた、と(笑)。



「そうですね(笑)。あと、派遣社員として、このままただ普通に働くのもなあ、という思いもありました。自分の人生を充実させる何かが欲しくて、知り合いのライターさんに頼んでスポーツ紙の編集者さんに作品を読んでもらったんです。そこが始まりでした」



■友達の性体験を元に作品を書く



――小川さんは、実際の性体験を元にした官能小説を多数発表されていますよね。



「最近はほとんどそうですね。きっかけは友達の性体験を聞いているときに、これを小説にしたら面白いかもな、と思ったことでした。自分の体験はあまり作品には出しませんが、もし私の体験が官能小説になったら、と考えたらちょっとうれしかったんです。話を提供してくれた方々も、皆さん喜んでくださっています。



OL生活との両立は大変ですけど、提供してくださった方のうれしそうな、でもちょっと恥ずかしそうな笑顔や声を聞くと、頑張って書いて良かったなあって思います」



――最新刊では、10人の人妻たちによる体験が描かれています。印象に残っている方はいますか?



「皆さん、本当に印象に残っているんですが、そうですねえ……。一冊目と二冊目は専業主婦の方の体験もあったんですが、今作は働いている女性に絞りました。私も働いているので、より近い距離感で皆さんの性を感じられたというか」



――あこがれた体験はありましたか?



「やっぱり、自分と似たような職種の方の体験ですね。職場の女性社員と男あさりをしている方や、仕事のパートナーである男性と関係を持ってしまった方、男との逢瀬を楽しむためにうその理由で仕事中に外出する方など、自分と重ね合わせやすくてドキドキしましたね」



――2012年は二冊も出されたわけですが、周囲の反応はどうですか?



「官能小説を書いていることは、ごく親しい友達しか知らないんですが、特にこれといってないですね。私も読んでみてよとか言えなくて(笑)。アマゾンなどでこっそり買って読んでくれているといいな。



あと、ツイッターをやっているんですが、温かいメッセージをいただくことが多くて励みになっています。あまりつぶやけてなくて、なかなか返信もできていなくて……。この場をお借りしておわび申し上げます。申し訳ありません。これからも応援よろしくお願いします!」



会社からの給与以外にお金を稼ぐ方法は実にさまざま。小川さんは派遣社員としての収入と官能小説で得る収入を足すと、同世代の友人を上回ることもあるという。ゆくゆくは専業作家として食べていけるようになりたいそうだ。



つい色眼鏡で見てしまいがちなジャンルだが、自分が好きなことでお金を稼げる幸せにちゃんと感謝している姿に好感を持てた。



小川沙耶

派遣OL兼官能小説家。都内某大手関連企業に勤めながら官能小説を執筆。

ツイッター @ogawasaya



(OFFICE-SANGA 白石幸治)