信頼関係はコミュニケーションの量で決まる

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とくに攻撃的な性格ではないのに、なぜかまわりから反感を買いやすい人がいます。敵をつくりやすい人は、周囲から信頼を得ていないのでしょう。たとえば部下から信頼を得ていれば、きつい言葉で叱っても相手はしっかり受け止めてくれます。しかし、近くを歩いているおじさんにいきなり同じことを指摘されたら、たとえ正論でもカチンときます。発言内容は関係ありません。敵をつくるかどうかは、信頼関係しだいです。

まわりから信頼される条件はいくつかありますが、なかでも大切なのは、相手を褒める気配りでしょう。そういうと、褒め慣れていない人は心理的な負担を感じるようです。しかし、大げさに褒める必要はありません。褒めることの本質は、相手を認めてあげることです。「すごいな」と大きなアクションで驚いたりする必要はなく、相手の肩をポンと叩いて「頑張ってるね」と一言添えるだけで、信頼感が醸成されていきます。

自慢話をする人も要注意。嫌われる上司は、部下を激励しているつもりが、いつのまにか「俺はこんなに仕事ができる」「自分の若いときはもっと頑張っていた」と自慢話にシフトしてしまう傾向がある。こういう人は部下に反感を持たれて職場で孤立しがちです。

生命保険のトップセールスには、この手のタイプが少なくありません。もともと一匹狼でチームマネジメントを苦手としている人が多いのですが、成功体験が豊富なので、つい自慢話をしてまわりから顰蹙を買うのです。

ただ、知り合いのトップセールスの中には、マネジャーとして成功した人もいました。その理由を尋ねると、ある人は「いつも失敗談を話していた」と答えてくれた。これは重要なヒントです。失敗談は相手の共感を呼び、親密感を増す効果があります。仕事以外のプライベートを明かしていくのもいい。いずれにしても同じ目線で話すことが大事です。

■行動を計測すれば思考も変えられる

もともと気配りは苦手で、いまさら考え方を変えるのは難しいという人もいるでしょう。そこで参考にしてもらいたいのが行動科学マネジメントです。行動科学マネジメントとは、行動分析学をベースとする人材育成メソッドであり、行動の積み重ねで目標を達成させる科学的なマネジメント手法のこと。これはセルフマネジメントにも活用できます。

この手法では、人の思考も「考える行動」としてとらえます。思考を変えるには、まず思考を可視化して計測することが大切です。よく使われるのは輪ゴムによる計測法です。仮にポジティブシンキングを身につけたければ、右腕に複数の輪ゴムをかけ、マイナスの発想が浮かぶたびに輪ゴムを左腕に移します。このように頭の中を可視化して、プラスの輪ゴムの数が少しずつ増えるように思考=行動を変えていくのです。

行動科学では、コントロールしたい行動をターゲット行動と呼びますが、気配りのターゲット行動として計測するのは「挨拶した」「一声かけた」といったことでいい。コミュニケーションは1回の濃さより回数の多さに影響を受けます。軽い一言でも、回数が多いほうが人間関係はよくなります。

部下との関係に悩んでいたあるマネジャーは、机の上に全員の名前を書いた表を貼り、1人1人と会話したかどうかを毎日チェックしたところ、コミュニケーション量が増加。職場の雰囲気が明るくなり、離職率も改善したそうです。

自慢話が多い人は「質問する」をターゲット行動にしてもいいでしょう。コミュニケーションの基本は、話すことより聞くことです。ところが自慢の多い人は、自分の話ばかりして相手の話を聞こうとしない。これを変えるために質問した数を数えるのです。

いくつかターゲット行動を紹介しましたが、最初は1つに絞ってください。急に無理をすると続かないので、行動チェックも週に1回か2回でいい。最初はハードルを低くして、少しずつ回数やターゲット行動を増やしていきます。

下手に1カ月で行動を変えようとしてはいけません。職場の人たちは、5年、10年、場合によっては一生一緒に働く仲間です。無理をせずに1〜2年かけてじっくり行動を変えていったほうが、いい関係を築けるはずです。

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行動科学マネジメント研究所所長 石田 淳 
日本の行動科学マネジメントの第一人者。米国のビジネス界で大きな成果を上げる行動分析を基にしたマネジメント手法を日本人に適したものにアレンジし、「行動科学マネジメント」として確立。主著に『教える技術』。

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(行動科学マネジメント研究所所長 石田 淳 構成=村上 敬)