人気アニメの製作出資、プロモーション製作を担当

ビジネスパーソン研究FILE Vol.198

株式会社テレビ東京 番泰之さん

人気アニメのプロモーション製作を担当する番さん


■自分が編集した番組が、世に送り出されていく重みとやりがいを実感

「驚いたのは機器の多さと、スイッチの複雑さ。本当にこれだけの機器構成を覚えられるのか、まったく自信がありませんでした(笑)」
これが、技術局映像技術部に配属されたときの正直な胸の内。それでも、番さんは上司や先輩の横について必死で仕事を覚え、まもなくスポーツ中継などの追っかけ放送を担当するようになった。
「例えばゴルフなら、朝から行われているトーナメントを放送時間に合う長さに編集し、時間差で放送していくのが追っかけ放送です。私の役割は、ハードディスクに収録されたトーナメントを、スポーツディレクターの指示に基づいてVTR室で編集していくこと。失敗すれば、放送できないという最悪の事態もありえるので、時間は死守しなければなりません。いきなり放送に直結した業務に携わることになったので、すごいプレッシャーでした」

時間とせめぎあいながら、スポーツのディレクターと連携して納得のいく番組に仕上げていくには、バランス感覚が求められる。番さんは、定期的に行われるゴルフトーナメントや、2002年に開催された日韓ワールドカップサッカーなど数々の実践を経て、そのバランス感覚を磨いていった。
「私の手元に届くのは、現場で撮影したカメラマンやディレクター、プロデューサーなど、多くの人が作り上げたもの。その最終段階を自分が預かり、編集して世に送り出していくという仕事の重みを、ひしひしと感じました。緊張の連続でしたが、自分がかかわった番組が世に出ていくことに、大きなやりがいを覚えました」

放送設備の管理・運用にも携わった。その一つが、選挙の開票システムづくりだ。開票データをどのように収集し、どのように見せるのかを選挙担当のディレクターらと相談し、その意向に沿ってプログラマーらと一緒にシステムを作り上げる。数年に一度のこととはいえ、選挙開票は非常に注目度の高いイベント的な番組。番さんは、過去に先輩が構築してきたシステムに新たな工夫を加えて、当確を発表する社内のスタッフが判断しやすいシステムづくりを経験した。

ほかにも、株価の表示システム、テレビリモコンのdボタンを押すと表示されるデータ放送の設備づくり、アニメなどの画面の光の点滅などで視聴者が発作を誘発しないレベルに収まっているかどうかをチェックするハーディングマシーンの運用管理など、映像技術部での8年間で実にさまざまな業務経験を積んだ。

「そろそろ新たなステップアップを…」と考えていた矢先、アニメ局の発足に伴う社内公募があることを知った番さんは、迷うことなく応募した。
「テレビ東京の主軸は、経済番組、アニメ番組、そして旅番組と言われる中、ポケモン、NARUTOに代表されるアニメは、キャラクタービジネスも含めた自社ノウハウを多く持っている。この公募は、そのノウハウを吸収する絶好のチャンスだと思いましたし、『いずれはアニメ事業をけん引できる存在になりたい』という野心もありました(笑)」


■コラボなど相乗効果を狙ったプロモーションを実践し、映画の興行収入を拡大

異動となったアニメ業務推進部で番さんが最初に担当したのは、広告会社との電波料の交渉や番組放送枠の調整業務と、それに伴う編成や営業といった社内部署との調整業務だ。
「アニメ番組にはテレビ東京が出資しているもの、製作費を出して発注や購入するもの、また、広告会社が番組を持ち込むケースなど、さまざまな番組形態がありますが、どのケースにしても放送実現に向けて、広告会社とどの放送枠で、どれくらいの電波料なのかなど交渉し着地点を探します。それぞれ立場が違いますから、お互いが納得できるよう調整することがもっとも難しい点でした」

1年後、アニメ事業部に統合されてからは、社内外の調整業務に加えて、個別番組の出資担当としてプロモーション作業も担当するようになった。インターネットはもちろん、イベントや各社の商品展開との連動など複数の媒体を活用して、相乗効果を狙ったプロモーションを考えていくのが、番さんの役割だ。
「テレビ東京で放送しているアニメ番組は、1週間に約35本。事業部にとって重要なのは、いかにヒットする作品を持ってくるか、いかに長く続く人気番組に育てるか。人気が出て番組が長続きすれば、映像を使ったビデオグラム(ビデオテープ、ビデオディスク、DVDなど)や、キャラクターを使ったグッズやゲームなど、二次利用が増えて会社の収益アップにつながるからです」

最初に携わったのは、海外80カ国以上で放送されている大人気アニメ『NARUTO-ナルト-』。3人のチームで担当しているとはいえ、テレビ番組だけでなく劇場版(映画)やスピンオフ(派生)番組もあって、やるべき仕事は山積。「異動してすぐ劇場版を担当することになったんですが、最初は業務の全体像が見えておらず、目の前の仕事を日々さばくのが精一杯。まるで、突風に巻き込まれたようでした(笑)」

現在は『NARUTO-ナルト-』に加えて、『銀魂』や『プリティーリズム』も担当。『NARUTO-ナルト-』では2本の劇場版を経験し、3本目となる『ROAD TO NINJA-NARUTO THE MOVIE-』は、より力の入ったプロモーション作業を行った。
「通常、原作者とは別の方がストーリーやキャラクターデザインを行いますが、本作では原作者に作業いただけることになりました。それによって、原作者ならではの原作者にしか描けない劇場版NARUTOが完成。何が何でもヒットさせたいと、これまで以上の大掛かりなプロモーションを行い、チームで施策案を検討してほかの番組とコラボした番宣を流すなど、アニメでは珍しいプロモーションを行うこともできました」

新たな取り組みが功を奏し、興行収入は前年比約180パーセントと躍進。

アニメ番組や映画の製作は高額な製作費がかかるため、テレビ局1社で負担するのではなく、出版社やアニメ製作会社、玩具メーカーやゲーム会社などが共同で出資して、1本の番組を製作することが多い。番さんは、こうした出資業務や、二次利用による収益を出資率などに従って分配していく管理業務なども担当している。
「番組製作に出資した事業会社は、いわば運命共同体。立場は違っても、各社が得意分野で貢献して、ヒットという同じ目的に向かっていくことがこの仕事の醍醐味ですね。事業会社同士のコラボなど、思わぬ宣伝プランが生まれる面白さも魅力です」

アニメ事業に携わるようになって4年、先輩が築いた作品を長続きさせ、次の展開を考える仕事にはかなり慣れてきた。
「まだ自分でアニメ番組を立ち上げた経験がないので、今後の目標は、企画立案するところから、製作出資、放送までをトータルでプロデュースすることですね。人の心を動かすような良い作品、かつ、収益を生むような強い作品を世に送り出していきたいと思っています」