――その他に気に入っているシーンを教えてください。

野波:この映画を観てると、男女間のすれ違いの可笑しさが色々な場面にありますよね。特に小泉さん演じる環希と、旦那の浮気相手とのワインのかけ合いシーンは印象的です。女性の恐さと可笑しさがよく現れていて。女性って面白いなっていう(笑)。様子を伺いながら、距離をとりつつ、最後に爆発するっていうのは女性独特ですね。男の人ってもっとしっかり喧嘩すると思うんですよ。

――野波さんは、修羅場的な経験はありますか?

野波:今まで修羅場は無いんですよね! 今後あるかもしれませんけど(笑)。逆に一度なってみたい気はしますね。自分が何を言うのか、どんな行動をするのかが気になります。でもきっと、いざとなったらどんと構えて、慌てふためくことは無いと思いますね。男性は大慌てで逃げちゃうと思うけど。そういう部分でも男女って面白いなって。

――艶というキャラクターにも、女性の強さや恐さや可笑しさが描かれていましたね。

野波:私は艶みたいな人ってうらやましいなと思っていて。奔放で自由気ままに生きているのに、最後まで阿部寛さん扮する松生がずっと好きでいてくれて、ずっと自分に向き合っていてくれて、女性として幸せだなって思いますね。最後、艶は松生に「ざまあみろ」って言われますけど、本当に言って欲しかった言葉なんじゃないかな。あそこまで男性を好きにさせてしまう女性ってすごいですよね。

――“艶”という名前がまず絶妙ですよね。野波さんは、“つやのある人”とはどんな人だと思いますか?

野波:つやって色気とはまた違うと思うんですよね。わざとらしいものでは無く、ふと感じるものなのかもしれません。年齢を重ねて、経験した色々な出来事をしっかり受け止めていて、前向きに歩いている人がいいなぁと思いますね。女性ってすごく“いい”じゃないですか。私、男性よりも女性の方が特権がたくさんあると思っていて。楽しいことがたくさんありますよね。お母さんになっても、おばあちゃんになっても女性であることを忘れていない人は、素敵だなって思います。

――本作では、大胆なベッドシーンにも挑戦されていますね。

野波:そうですね。男性と絡むシーンだったり、ベッドシーンが多かったので、どんな撮影になるのかなとは思っていたんですけど、現場は本当に明るくて。行定監督とは以前にも仕事をしたことがあったので、安心感もありました。湊と太田さんとの最初のベッドシーンの撮影でも、私はニップレス姿でウロウロ歩いていたくらい(笑)。笑いが絶えないんだけど、でも本番になるとビシっと決まるというとてもやりやすい現場でした。

――では、全然緊張は無かった?

野波:一切緊張しませんでしたね。お布団の上に横になって会話をするシーンでも、セットや照明の関係で撮影開始まで結構時間がかかって、すっぽんぽんのまま寝ちゃいました(笑)。それぐらいリラックスしていて、完成した映画を観たら、その寝起きの、まどろんでいる感じがちょうど良かったなって思っています。

――その自然体な雰囲気が、映画のトーンとバッチリ合っていたのでしょうね。

野波:この映画は映像もとてもキレイで、音楽も素晴らしく、脚本を読んだ時に感じたフランス映画っぽいな、という印象はそのままでした。自分が出ているシーンは全然客観視出来なくて、「何かお尻大きいなぁ……」とかそんなことばかり考えていましたが(笑)。

――いえいえ、野波さんのスタイルは本当に素晴らしくて、観ていてうっとりしてしまいました。スタイルを維持する秘訣などは何かありますか?

野波:走ることがすごく好きで、1度に1時間ほど、週に2〜3回は走っていますね。形から入るタイプなので、着ていてテンションの上がるウェアを揃えて、音楽を聴きながら走っています。まだ始めて1年経っていないくらいなのですが、体調もすごく良くなってストレス解消にもなるので、これからも続けていきたいですね。

自由奔放な恋愛をしていながら、媚びずにしっかりと生きている湊というキャラクターは、野波麻帆自身が持つ魅力ともつながっていると感じられる。湊が感じている女としての楽しさや辛さは、現代に生きる女性達の気持ちを代弁してくれている様であり、思わず共感してしまう言葉も多いことだろう。

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