批評家・小説家の東浩紀さん(41)が、芥川賞について「じつに閉鎖的で腐った文学賞」と評した。第148回芥川龍之介賞・直木三十五賞の発表があった2013年1月16日、こうツイートした。

「芥川賞がじつに閉鎖的で腐った文学賞だという、つい10年まではだれもが知っていた常識を忘れ去られ、ネット時代になってかえって(なにも実態は変わっていないのに)なにか偉いものなんだからすごいんだろうというブランド強化が始まっているあたりに、日本社会の限界を見るのは考え過ぎかしらね」

「ライトノベルが芥川賞取れないのとか、サッカー推薦で東大入れないんですか、と同じくらいナンセンス」

受賞作家や作品を非難しているわけではなく、芥川賞自体や、同賞を「日本文学の最先端」ととらえて評価する最近の風潮を批判しているようだ。

きっかけになったのは、候補作よりもよほど売れているライトノベルや人気の小説が、なぜ芥川賞や直木賞の候補にすらあがらないのか、と疑問を呈した「ダ・ヴィンチ電子ナビ」の記事だ。芥川賞は、「無名、あるいは新鋭作家」による優秀な作品に贈呈する賞だと紹介して、ウェブで人気のラノベ作家が候補にはいってもおかしくない、と書いていた。

この記事に対し、東さんは「芥川賞の現実を知っているのだろうか」とコメントし、続けてこう斬り付けた。

「芥川賞は日本文学の最先端とかとはなんの関係もない。菊池寛の業績に集まった遺産相続者たちが、自分の目の届く新人に恩を売るための賞でしかない。だから文芸5誌からしか選ばれる。そんなの常識。ライトノベルが芥川賞取れないのとか、サッカー推薦で東大入れないんですか、と同じくらいナンセンス」(原文ママ)

そして、「こういう『常識』もだれかが言葉で伝えてかなければならないんだろうな。。」と嘆いて見せた。

舞城王太郎が候補に上がるのは「文芸誌で書くノルマをこなしてるから」

また、芥川賞がどんなものかの具体例として、今回候補に上がっていた舞城王太郎さんを引き合いに出し、

「覆面作家とか言っているかぎりまず芥川賞とれない。それでも候補作になっているのは実力があるからだけど、あのふるまいじゃとれない。でもそんな彼だって、芥川賞候補になれるのは文芸誌で半年にひとつ100枚の短編を書くというノルマをこなしているから。そういう賞なのよ」

と「閉鎖的」な面を強調。東さんが芥川賞を獲らないのかというフォロワーの質問に対しても、「だーかーらー、そういうもんじゃないんだよ。芥川賞は」と呆れた様子だった。東さんは小説家としての処女作「クォンタム・ファミリーズ」(新潮社)を2010年に発表している。

なお、今回芥川賞を受賞した黒川夏子さんの「abさんご」は早稲田文学5号に掲載されたもので、東さんの言う「文芸5誌」(文藝春秋社の「文學界」、講談社の「群像」、新潮社の「新潮」、集英社の「すばる」、河出書房新社の「文藝」)からの選出ではなかった。