第148回芥川・直木賞の選考会が行われ、直木賞は朝井リョウさんの『何者』と安部龍太郎さんの『等伯』に決まりました。平成生まれでは初の受賞となった朝井さん。2009年に『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞し、同作は映画化。着々と今回の受賞への足場をかためていました。

 受賞した『何者』は、就活の情報交換で集まった大学生5人の物語。「なぜ就職をしなければいけないのか」「内定を得るために必要なものとは」など、就活生の誰もがぶつかる悩みに向き合っていきます。

 「就活がつらいものだと言われる理由は、ふたつあるように思う。ひとつはもちろん、試験に落ち続けること。単純に、誰かから拒絶される体験を何度も繰り返すというのは、つらい。そしてもうひとつは、そんなにたいしたものではない自分を、たいしたもののように話続けなくてはならないことだ」

 同書には、就活生の言葉を代弁する言葉が度々登場します。

 「就活って、トランプでいうダウトみたいなもんじゃねえの。一を百だって言う分には、バレなきゃオッケー。ダウトのとき、1をキングだって言うみたいにな。でも、裏返されてそれが1だってバレれば終わりだし、カードがなければ戦いに参加することもできない。つまり、面接でもゼロを百だって話すのはダメ。それはバレる」

 就活をトランプに例えるなど、独特な表現に笑いがこみ上げます。

 就活に関する話題は事欠きません。それもそのはず、朝井さん自身は昨年、大学を卒業したばかり。現在は、社会人として働きながら作家活動を続けているのです。そういう意味では、誰よりも就活生の思いを表現することができる作家だといえるでしょう。

 直木賞受賞で話題になるであろう同書ですが、自身を重ねることができる就活生にとっても、楽しく読める一冊となるのではないでしょうか。



『何者』
 著者:朝井 リョウ
 出版社:新潮社
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