効果を検証! 動物がいると癒やしになるのは本当か?




動物がいると癒やしになるとよく耳にします。自宅で飼えない人でも猫カフェがあったり、あるいは動物の写真や動画に癒やされる人も多いです。アニマルコンパニオンやアニマル・セラピーという言葉もあり、研究も進んでいます。けれど、動物の癒やし効果は「なんとなく」ではなく、本当に証明されているのでしょうか。動物の癒やし効果について、科学的に検証します。



■医療現場から求められている段階ではない



お話をうかがったのは、帝京科学大学アニマルサイエンス学科准教授で精神科医でもある横山章光先生。横山先生は、「アニマル・セラピー(ロボット・セラピー)」「ペット・ロス」「動物虐待」「動物介在教育」「日本人の動物観」など、人間と動物の関係を包括的に研究されています。



――「アニマル・セラピー」とは何ですか?



「アニマル・セラピーという言葉は、実は日本の造語です。世界的には、動物との触れ合い活動などをおこなうレクレーションである『AAA(Animal Assisted Activity=動物介在活動)』と、医療スタッフが目的を設定しておこなう補助医療である『AAT(Animal Assisted Therapy=動物介在療法)』に分けて考えられています」



――そうだったのですね。知りませんでした。アニマル・セラピーは日本でも浸透しつつあるのですか?



「動物介在活動(AAA)、動物介在療法(AAT)ともに、欧米ではかなり進んでいます。日本でも、老人福祉施設への訪問など、動物介在活動(AAA)は増えてきています。動物介在療法(AAT)もないわけではないのですが、医療現場のスタッフが忙しくて、それどころではないというのもあるようです」



――アニマル・セラピーは、現場で喜ばれているのですか?



「喜ばれているかもしれませんが、日本ではまだ、医療現場や福祉施設側から求められているという段階ではありません。この表現が適切なのかわかりませんが、ある意味、アニマル・セラピーを実施したいと考えている団体側が『押しかけている』という現状があります。医療現場や教育現場など、相手から求められていく段階にならないと、普及したとはいえないと思います」



■アニマルセラピーの実証データもあるけれど



――アニマル・セラピーの効果は、科学的に実証されているのですか?



「データを取るのはとても難しいのですが、例えば、1980年に発表され、1995年に追試されたブルックリン大学のフリードマンによる研究があります。心筋梗塞で入院した患者たちの1年後の生存率を調べたところ、『ペット飼育』と『社会的サポート』があった人の生存率が明らかに高かったというものです。



日本ですと、茨城県のある村の調査では、ペットを飼っている人のほうが手段的日常生活動作能力(IADL)が良好で、犬猫を飼っている人のほうが降圧剤を飲んでいる割合が低かったという報告もあります。



と、実例を挙げましたが、大切なのはデータではないと思っています。うーん、本当は、それ以外のもののほうがずっと大きいと思うんですよね」



■動物が人間の医療を助けてくれているという視点を持つこと



――先生は、どのような分野でアニマル・セラピーの導入を期待しますか?



「動物たちに、心や体のリハビリのサポート役になってもらえないかというのがあります。また、週1回くらいは、精神科医への訪問に飼い犬を同伴できるようになったらいいですね。それと、自閉症児や被虐待児に対しては、動物の存在が治療や養育を円滑に行えるかもしれません。また、心的外傷後ストレス障害(PTSD)についても、動物の助けがほしいですね」



――今後のアニマル・セラピーは、どうなっていくと思いますか?



「日本では、動物は愛玩対象になっています。欧米のように、動物をはっきりとしたパートナーとみなす観念が希薄なので、もしかしたら、日本にはアニマル・セラピーは向いていないんじゃないかと思ってしまうときもあります。



もし、日本でアニマルセラピーを導入していくのであれば、動物を搾取対象とせず、人間の医療を助けていただくという視点をもつことが肝要だと考えています。そのためには恣意(しい)的な『個々の』愛玩ではなく、『社会』全体による動物の地位の底上げが必要になります」



いろいろと問題はあるのかもしれませんが、必要としてくれる人のところへ必要なセラピーが届くようになるといいですよね。



取材協力

帝京科学大学アニマルサイエンス学科准教授、精神科医、ヒトと動物の関係学会常任理事

横山章光先生

ヒトと動物の関係学会 http://www.hars.gr.jp/

著書:「アニマル・セラピーとは何か」(NHKブックス,1996年)ほか。



(OFFICE-SANGA 臼村さおり)