図9/7割が部下の当事者意識を喚起

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人に対する心遣いが苦手な人、気を遣ったつもりが“いらぬお節介”になってしまう人は必見! 誰もが認めるハイパフォーマーたちの“絶妙な気配り”を紹介する。

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調査概要/10年10月19〜20日、マクロミルを通じて40歳以上の経営トップを除く会社員、公務員を対象にインターネットアンケートを実施。有効回答数は618人。うち、年収500万〜699万円が309人、年収1500万円以上が309人。

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■部下に自分の裸の姿をさらけだせるか

上司の仕事の多くは部下によって支えられている。それだけに部下に対する気遣いは、上司として大切な仕事の1つといえるだろう。アンケート結果から読み取れることは、部下を上手にフォローできているかどうかが成果を左右するということである。

上司がリーダーシップを発揮してプロジェクトを牽引することは当然である。しかし張り切って先頭を走ったのはいいが、振り返ったら部下がついてこなかった……というのでは能力を問われてしまう。部下がついてこないのは、与えられた仕事を他人事と受け止めるからだ。

1500万円社員の70.2%が「部下に対して、当事者意識を高めるように配慮する」と答えている(図9)。それに対し600万円社員は55.6%。

当事者意識を高めるということは目的を共有して参画意識を高めること。例えば部下の提案には、イエスであれノーであれ必ず答えることでプロジェクトに参加しているという意識を高める。本当にいい案であればプロジェクトにとり入れる。そのことで部下は「見てくれている」という安心感を抱く。

逆に「とるに足りない内容だから」とか「忙しい」といった理由で放っておいたのでは部下の気持ちは離れてしまう。

「部下の提案にはフィードバックを心がけている」かの問いに対し1500万円社員の74.1%はイエスと答えている(図10)。提案のどの部分がよかったのか、どの部分がいま一歩だったのかという具体的な指示をすることで部下のモチベーションは上がる。

1500万円社員のうち「部下のいいところを積極的に指摘する」という上司は72.5%いる(図11)。ところが600万円社員では62.8%に下がってしまう。

モチベーションを強化するハムナーの理論によれば、人は褒められたり叱られたりすることによって動機付けされる。上司の中には部下を叱ることには慣れているが、面と向かって褒めることは気恥ずかしいと思っている人もいる。しかし、今の時代の部下は、口に出して言わなければ通じないと考えたほうがよい。部下が「これは頑張った」と思っているところを見つけて褒めるのである。見当違いの褒め言葉は反発を招くだけだが、核心を突いた褒め言葉は部下のやる気を高めるだろう。

上司はプロジェクトから脱落者を出さないように統率する役目を負っている。そのために「部下の理解度を確認しながら仕事を進めている」と答えた1500万円社員は74.4%(図12)である。マネジメントの研究「コンティンジェンシー理論」では、部下の性格や能力に応じてやり方を変えよと説いている。部下の理解度を確認したら、それに応じたマネジメントが求められるということになる。

仕事を与えられた部下は、やる気のある者ほど無我夢中でとり組む。しかし処理しなければならない事柄のすべてに全力でとり組んでいては、全体的な効率が落ちてしまう。全体を俯瞰する立場にいるマネジャーが「それは重点的にやれ」「これは手を抜いてもいい」「先にとりかかれ」「端折って後回しにしてくれ」などとメリハリを利かせて交通整理をするようなアドバイスをすべきである。それには個々の部下の状況を把握しておく必要がある。

一方で1500万円社員は「部下との飲み会では和やかな雰囲気をつくる」ことも心がけている(図13)。その割合は58.5%。

会社は仕事をするためのビジネスユニットであると同時に生活の場でもあるので、「公」の中に「私」が入り込んでいるともいえる。そこでうまい上司は、飲み会という私的な色合いが強い場では人間味を見せる。一番手っ取り早いのは、自分の裸の姿をさらけだすこと。恥ずかしい失敗談を披露して部下と一緒になって自分を笑い飛ばすようであれば、部下との距離を縮めることができて、同時に度量を養うことにもなるだろう。

このように部下にも気配りができる上司は、当然のことながら自分の上司にも気配りができるはずなので、結果的には「全方位的に気配り」ができる人物ということになる。

自由回答で聞いた「嬉しかった気配り」として、家族に対する心遣いをあげた人が複数いた。部下の妻や子どもの誕生日を覚えていて、負担にならない程度のプレゼントを用意して渡すといった心遣いは嬉しいものである。

ただし、お気に入りの部下にだけ目配りするという姿勢は禁物である。部下は公平に扱うことが大前提であることはいうまでもない。

「サーバントリーダーシップ理論」では、上司が部下に奉仕することによってアウトプットが高まると説いている。経験や知識のある上位の者が、下位の者がうまくやれるよう支えていくことにより、組織を効率よく円滑に動かすことができるのだ。上司の部下に対する気配りも、上司が部下の位置まで下りることで成立するといえる。かつては「黙って俺についてこい」という強烈なリーダーシップを発揮する命令型上司もいた。しかし、今は部下に目配りしながら半歩先をいく上司が求められている。

ここで気をつけたいことは、ビジネスにおける気配りは、世間一般の気配りとは違うということだ。単なる「いい上司」であってはならない。気配りという能力を上手に使って、仕事がスムーズに進むように仕向けられる上司でありたい。そのためには、相手をよく見て個別に対応できるスキルを身につけなければならない。スキルを高めるには場数を踏むことが一番である。過去に自分がしてもらって嬉しかった気配りを部下に対して行うことから始めよう。

一方、部下から上司に向けた心配りで最も重要なのは情報の伝達だろう。部下の立場では、上司に素早く情報を上げることこそが最良の気遣いといえる。

「上司に対して、重要な情報は早く伝える」ことを心がけている1500万円社員が35.3%(「あてはまる」の回答)いるのに対し、600万円社員は23.3%(同)にすぎなかった(図14)。

情報の伝達がすさまじく速い銀行員や商社マンがいる。例えば取引先の新規事業の政策変更が夕方の会議で決まったとすると、就業時間が終わっていても、その日のうちに彼らの上司に当たる次長・部長クラスにまで情報が上がっている。場合によっては役員も把握していて対応策を指示している。情報がカネになるということを身に染みて知っているからこそ伝達が速いのである。

会議で決まったことを逐一伝えればいいということではなくて、即座に伝えるべき情報と、明日補足して伝えるべき情報と、自分で処理すればいい情報を瞬時に腑分け判断する能力が必要ということだ。この判断ができないと些細な情報でもナマの形で上げてしまい、上司を混乱させることになる。

実は、重要な情報を素早く上げることはむずかしいことではない。むずかしいのは自分のミスなどのネガティブ情報を上司に報告する場合である。誰でもネガティブ情報を上司に伝えるのは気が重い。もう少し時間が経てば解決できるかもしれないし、新たな展開が期待できるかもしれない――そんなふうに都合よく解釈して先延ばししたくなるのが心情だ。

しかしネガティブ情報は顧客にとってマイナス事態が進行していることを示す最重要情報なので、発覚した時点で上司に報告して会社として対応しなければとり返しがつかなくなることもある。自分自身、上司、そして会社の危機管理能力が問われる場面だ。

1500万円社員の23.3%(「あてはまる」の回答)は「言いにくい報告もすぐにする」と答えている(図15)。600万円社員では13.3%(同)に下がる。

ただ実際にネガティブ情報を伝えるときには、上司に心構えの時間を与える気配りも必要だ。取引先から青い顔で帰社していきなり「部長大変です!」と叫んだのでは部長の血圧は上がってしまうだろう。事前に電話したり、会ったらまず何度か誠実に謝る。その間に心の準備をしてもらい、例えば「3000万円の仕事を失いそうです」などと報告すれば、感情任せに怒鳴られることはないだろう。さらに、部長に「で、どうするんだ?」と聞かれたときの答えを用意しておく。

一時期「飲みニケーション」という言葉が流行した。昔は上司が酒の席に部下を誘うことは当たり前の光景で、このような言葉が生まれる余地もなかった。しかし今は違う。部下は上司の誘いを「うっとうしい」と感じることもある。ところが「上司に飲みに誘われたら必ず同行する」ことを気配りと考える部下も、実は少なくない。一見ごますりに映るこの行動にも消極派と積極派の2タイプがあって、消極派の行動には「上司に誘われたから仕方なく」とか「覚えがめでたいように」という気持ちが働いており、積極派には「ビジネスに役立てる目的」という思惑がある。例えば積極派は酒の席では当たり障りのない話をしておき、帰りのタクシーの中で自分が通したい案件の根回しを行うというように。こちらは場をうまく利用した気配りといえそうだ。

■気配り力を上げる通勤時のトレーニング

会議の準備やメールの利用法でも年収による大きな違いが生じている。

1500万円社員の52.4%が実行している「資料は事前にメールで配布しておく」ことも根回しの1つといえる(図16)。資料を事前に配付しておくことで出席者は提案内容を検討する時間がつくれ、的を射た意見を述べることができるだろう。少なくとも会議で説明が延々と続く事態は避けられる。

また、会議の日時が近づいたことを知らせるリマインドメールも、デキる社員は積極的に利用している。

「リマインドメールを出す」と答えた1500万円社員は38.3%に上り、600万円社員の23.2%を大きく引き離している(図17)。1500万円社員は相手に負担をかけずに、念押ししたという証拠はしっかり残るというリマインドメールのメリットを活かしてさりげなく気配りをしているのだ。

では通常のメールの書き方はどうか。1500万円社員の72.8%が「メールは相手によって文体や長さを変える」のに対して、600万円社員は57.7%にとどまっている(図18)。

さらに相手や依頼内容によっては手紙のほうが適していることがあるし、地位が高い人、年齢が高い人でも、時候の挨拶抜きで「要件だけを簡潔に書く」ことを喜ぶ人もいる。そこでメールでもTPOに合わせた文体や長さで書き分ける気配りが求められる。

ここまで読んでわかるようにビジネスにおける気配りは決してむずかしいことではない。相手をよく見て相手の気持ちになって行動すれば、自然にできるはずである。

とはいえ自信が持てないという人もいるだろう。そんな不安があれば、まず自分が次の2つのタイプのどちらに当てはまるのかを考えてほしい。

(1)気配りしたいと思っているが行動に移せない人。

(2)気配りするより前に行動してしまう人。

もし(1)のタイプなら朝の通勤電車の中で「今日はこんな気配りをする」と1つ、2つでも決めて行動に移そう。いきなり高度な気配りを目指さずに、社内宴会の幹事を務めるなど低い階段を一歩一歩上る感覚でいい。

(2)のタイプは帰りの通勤電車の中で「今日の行動がうまくいったかどうか」を反省しよう。ノートをつけ、なぜうまくいかなかったかを明確にするとさらに改善は進む。

朝晩の通勤電車の中で、毎日少しずつ職場にいる人々を思い気持ちを慮り、そして日中に行動する。それが継続できれば、「仕事の強力な味方」を増やすことができるだろう。

※すべて雑誌掲載当時

(東京ガス西山経営研究所所長 西山昭彦 構成=山本信幸)