今、説明会からOB訪問、面接に至るまで、就活の主導権を握っているのが、なかばモンスターペアレント化した親たちなのだという

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教育現場でしばしば問題になる“モンスターペアレント”。我が子の就活に親が関わる“親子就活”が広まっているなか、こうした親が就活生を追い詰める事例も増えているという。

都内の大学に通うA君は企業説明会に足しげく通う多忙な日々を過ごすが、母親からの猛烈なプレッシャーに悩まされているという。

「最近、テレビCMを見てはお母さんに『この企業受けなさい』と言われます。例えば深夜に流れる企業のイメージCM。“航空機には欠かせない部品で世界シェア1位”との触れ込みにお母さんは反応し、目の色を変えて『すぐにエントリーしなさい!』と言われました」

都内の別の大学に通う就活生B君の悩みも深い。

「親の考えを押しつけてくるのが耐えられません。『お父さんの時代は2、3社に絞って活動してたもんだぞ。なんでおまえは50社も60社も受けてるんだ!』とか『市役所か金融に絞りなさい』とか『サイバー○ージェントなんて、オマエにITは無理だ』とか……。大学受験のときとは比べられないほどストレスフルです」

父親だけでなく、母親も母親で猛烈なプレスをかけてくるそうだ。

「就職ナビのマイページに入るために必要なIDとパスワードは、母との共有。最近、セミナーから帰ってきたばかりの母に『お母さんと一緒に戦うのよ! 教えなさい』と言われて仕方なく……。翌日からは無断でエントリー企業の選考スケジュールを調べては『あんた、締め切り間近よ!』とプレッシャーをかけてくる毎日。関心がないのに『ブリ○ストンにエントリーしといたわ。安定企業よ』と勝手に就活を進めることもしばしば。ウンザリです」(B君)

外では企業訪問に疲れ果て、家では親の言動に神経をすり減らす。しかし、当の親たちはこうした就活生の悩みに気づいていないようだ。関東の大学に通う就活生C君の母親が自慢げに話す。

「親は親で一生懸命なの。私は息子のために“就勝弁当”を作ってあげています。会社説明会が毎日のように続くときには鰻とニラをたくさん入れた疲労回復料理を、面接日には消化がよくリラックス効果のある豆腐グラタン。息子はとっても喜んでくれてるわ」

親の過干渉は採用企業にも及ぶ。ある半導体製造装置メーカーの採用担当者がこう話す。

「手前みそですが、弊社は半導体製造装置メーカーとしては国内トップクラスなんです。でもBtoB(企業間取引)企業ですから認知度が低く、内定者の親御さんから電話で内定辞退を申し入れられるケースが毎年あるんです。優秀な人材をそんな理由で逃してはならないと、最近では親向けの企業説明会を行なっています」

中堅商社の採用担当者も明かしてくれた。

「不採用の通知を送付した数日後、ある学生の母親から『なんでウチの息子が落とされなきゃいけないの。納得のいく説明をしなさい』とお叱りの電話がありました。そう言われましても……」

今や、“モンスターペアレント”は就活にも進出しているのだ。

(取材・文/興山英雄、イラスト/服部元信)