『ハッキヨイ! せきトリくん わくわく大相撲ガイド』(財団法人日本相撲協会)
公式キャラクター・ひよの山が大相撲の世界を楽しく案内。横綱・大関インタビューから、相撲部屋訪問まで密着取材も満載。

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「両国に 熱い雪がふる。」

大相撲一月場所のポスターがカッコいい!
冒頭で紹介したコピーがシンプルに記され、通常、横綱写真か浮世絵風のイラストが使用されることの多い図版が、今場所では雪ならぬ「塩をまく瞬間の腕」のみ。相撲ファンの間では「この腕、誰だ?」と話題になっています。

そんなコピーに誘われたかのように大雪が降り注いだ東京・両国国技館で、大相撲一月場所が絶賛開催中。
平成22年初場所以来3年ぶりに初日入場券が完売になるなど、大相撲人気は回復の兆しを見せています。ロックバンド「SID」が白鵬に指定懸賞をかけたり、元千代の富士・九重親方が新宿駅でちゃんこ鍋を振る舞ったりと、相撲協会主導の様々なPR作戦が功を奏した結果と言えるでしょう。

そんなPRの一環として大相撲でも今、ゆるキャラが活躍しているのをご存知でしょうか。
その名もかわいい「ひよの山」。
子どもたちに大相撲への親しみと関心を持ってもらいたいと2009年8月に誕生した鶏モチーフのキャラクターで、日本相撲協会公式サイトで連載している『ハッキヨイ!せきトリくん』の主人でもあります。

この「ひよの山」、ゆるキャラとは言いつつも、なかなか考え抜かれたキャラクターなのです。
将来の関取ならぬ「せきトリ」目指して奮闘する力士のひよっこ「ひよの山」。そもそも鶏は「二本足で立つ」ことから、ちゃんこ鍋の食材など力士のげん担ぎとして古くから愛されている食材。また、痩せ型力士のことを「そっぷ型」(オランダ語のsob=「スープ」の事で、ダシを取った後の鶏ガラに例えている)と呼ぶなど、相撲用語にも使われています。

「ひよの山」以外のライバルや兄弟子、親方衆のキャラクターも濃く、縦横2段ずつに配された4コマを巧みに使った大胆な構図など、純粋に4コマ漫画としても楽しめます。
そして初場所開催にあわせるように『ハッキヨイ!せきトリくん』の連載をまとめ、さらには「ひよの山」による横綱・大関陣へのインタビューや相撲部屋探訪など、力士や相撲界の裏側に迫った一冊『ハッキヨイ! せきトリくん わくわく大相撲ガイド』も刊行されています。

特にためになるのは、漫画とあわせ編集されている大相撲トリビア、ならぬ「とりビア」の数々です。
○まわしのサイズは6〜7メートル。でも、小錦レベルでは倍近い12〜13メートル。
○「ハッキヨイ」の語源は「発気揚揚」が詰まったもので、「気力を高めて全力で勝負しましょう」という意味。
○土俵上に描かれた二本の白い仕切り線が消えないのは、土に付きやすい「エナメル・ペイント」で描き、しかも毎日塗り直しているから。
○清めの塩は1日45キロ、ひと場所でなんと650キロ使用! etc.
他にも、「浴衣・反物コレクション」があったり、国技館地下にある秘密工場「焼き鳥部」への潜入取材があったりと、入門から一歩ずつ勝ち上がっていく「ひよの山」の成長とともに、読者もまた大相撲に関しての知識を身につけていくことができる仕組みになっています。

巻末にはちゃんこレシピが紹介されていたり、大相撲検定クイズがまとめられていたりと、実用度も抜群。
○相撲部屋ですぐに壊れてしまう電化製品は?
○本場所中、国技館の地下駐車場を使えるのはどんな地位の力士?
といった、柔らかくて「ヘェ〜」と頷ける問題から、
○相撲用語で「家賃が高い」とはどんな意味?
○番付表の小さな文字を例えて、序の口力士を各界ではなんと呼ぶ?
といった業界用語まで、奇問難問が勢揃い。
白星(正解)数に応じて番付が出るようになっていて、恥ずかしながら私は50問中21問正解で「幕下」とまさにひよっこレベル。「十両」入りは26問以上、「小結」は31問以上、「関脇」が36問以上、「大関」が42問以上、「横綱」が48問以上となかなか険しい道のりです。

でも、1300年以上の長い歴史を誇り、日本文化が深く根付いているのが大相撲。一般教養としてもぜひとも押さえておきたい情報が「大入り」です。
はじめての人でも、大相撲ファンでも楽しめる『ハッキヨイ! せきトリくん わくわく大相撲ガイド』、初場所観戦のお供にいかがでしょうか。
(オグマナオト)