脚本のみならず、2012年2月には初のオリジナル小説『小野寺の弟 小野寺の姉』も出版され、『本の雑誌』2012年上半期ベストテンの第2位にも選ばれた西田征史さん。小説を書かれたのは日常の何気ない心の揺らぎを描きたかったからだとか。


 『小野寺の弟 小野寺の姉』を書き出したのは「怪物くん」と「Tiger & Bunny」の脚本を同時に書いていた時期。スケールの大きい、人間ではない話の脚本を書いていたので、こんどは対極にある日常のなかで泣いたり笑ったりというちょっとしたブレだけを描く作品ができないかなと。ただ、それだけで終わってしまうと地味な作品になってしまうので、そんな中でも各章ごとにオチの効いたといいますか、起承転結がはっきりあって読みやすいものを書いてみたいと思って動き出しました。

 日常生活の中に些細な幸せを見出す作品ですが、震災の影響もあったのでしょうか?

 書き出したのは震災より一年以上前です。ただ震災以降も手直しはしているので、やっぱりどこか気持ちの変化はあったと思います。ぼくはどの作品も元々そういう部分(日常を大事にすること)に主眼を置いてやってきたので、震災以降、その部分がより強くなったということはあったかもしれないですね。

 小説を書くのと、脚本を書くのに違いはありましたか?

 まったく違いました。180度違うというか。どちらかというと、僕は脚本を簡潔に書くようにしているんです。映像が浮かぶようにというか。だから表現にはこだわらず「立っている」と脚本では表現するところを、小説の場合「佇んでいる」とか別の表現だったり。「言う」っていう表現にしても、「告げる」なのか「口を開く」なのか色んな言い表し方がある。一個一個の表現をそれで味わっていただくのが小説なので、そこがゼロからの作業だったというか、今まで自分にとって無い部分だったので、逆に苦戦しましたね。

 映像で表現するのと、文字で書き表すこと、一番違いが出るのは何ですか?

 実は小説を書いていて一番面白かったのはモノローグ、「心の声」です。映像作品でももちろん心の声は使ったりしますが、僕は極端に少なくて。アニメの「Tiger & Bunny」ではむしろ1回も使わないようにしたんですね。「アニメは意識せず実写っぽく」というオファーが元々あったので、僕がいつもやってきたモノローグを使わないやり方にしました。なぜそこにこだわるかというと、映像でモノローグを使いすぎると、役者さんの表情ひとつで伝わる部分を消してしまうというか、演技の味を消してしまう気がするから。でも小説ではむしろ、脚本では書けなかった、本当は口でこういいながらもこう思っていたとか、裏の気持ちまで書けるっていうのがすごく面白かったですね。そこを遊びどころとして、兄弟の本音と建て前を描いたつもりなのですが・・・・・・楽しんでいただけていたら幸いです。

 学生時代から「日本語の美しさ」と「構造の秀逸さ」を楽しむことに目覚め、様々な本に影響を受けてきた西田征史さん。これから西田さんが出会う本が、今後の作品にどのような影響を与えていくのか、ますます目が離せません!

≪プロフィール≫
西田征史(にしだまさふみ)
1975年生まれ、東京都出身。お笑い芸人・俳優とマルチに活動したのち、2000年から脚本家として活動。ドラマ「怪物くん」、「妖怪人間ベム」など連続ドラマ及び映画等多くのヒット作を持ち、舞台の脚本・演出や、テレビ番組の構成など活動は多岐にわたる。2012年には初のオリジナル小説『小野寺の弟 小野寺の姉』を出版した。



『世界婚活 (ideaink 〈アイデアインク〉)』
 著者:中村 綾花
 出版社:朝日出版社
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