皆さん、あけましておめでとうございます。年頭にあたり、2013年にぼくが注目している国際政治のトピックスを挙げてみたいと思います!

2012年は世界中で選挙や政権交代が同時発生し、ぼく自身にとっても、約10年間暮らした中国からアメリカへ拠点を移すなど変化の大きな年でした。2013年は地に足をつけ、中国、アメリカ、日本を中心に世界を体感し、情勢を読む訓練を積んでいきたいと思います。

まず注目すべき点は、アメリカと中国の新体制のスタートです。

両者の置かれた立場は対照的です。習近平(しゅうきんぺい)体制にとっては、1期目の5年間は“試金石”。政権の安定が最優先で、無理はできません。一方、2期目の当選を果たしたオバマ大統領にとっては、泣いても笑っても最後の4年間。経済、貿易、人権などの分野で、“責任ある大国”として振る舞い、中国により多くを追求していくべきでしょう。

ただ、敵対しても失うもののほうが大きいという点は両国に共通している。表向きは多少の緊張が生まれても、実務レベルでは比較的安定した交渉プロセスが続くとぼくは分析しています。

不気味なのは北朝鮮の存在でしょう。昨年末に強行されたミサイル発射実験は世界を震撼させました。金正日一周忌式典などを見る限り、金正恩は引き続き父の“先軍政治”路線を踏襲していくと思われます。

EUでは金融危機が続いていますが、財政破綻したギリシャを北部の国々が見放すという最悪の事態には至っていません。2013年9月に連邦議会選挙が実施される予定のドイツを中心に、ユーロの安定性と権威性を保護し、金融システム再構築が模索されていくことでしょう。英フィナンシャルタイムズが2012年の“パーソン・オブ・ザ・イヤー”に選んだのは、欧州中央銀行のマリオ・ドラギ総裁でした。

中東情勢は複雑を極めています。米軍がアラブ地域からの撤退を進めている趨勢(すうせい)下で、イラン、イラク、シリア、そしてイスラエルとパレスチナ……など、火種が活性化し得るポイントはむしろ多くなるかもしれない。今年もアラブ中東は“世界の火薬庫”として国際政治を困惑させ続けるでしょう。

日本の外交における最大の懸案事項は、対中関係と日米同盟をどうマネジメントするかです。

ぼくが日頃ハーバード大学で接しているアメリカの東アジア専門家たちは、日中で「武力衝突も辞さない」といったナショナリスティックな世論が高騰する危険性を警戒しています。「アジア重視」を継続するオバマ政権にとっても、日中の戦略的安定関係は必要不可欠。特に尖閣問題は、戦後アメリカが日本を統治した時代の判断の是非を問われる歴史的案件であり、昨今最も重視している中国との関係を悪化させ得る懸案でもある。介入には慎重にならざるを得ない。日中間で道筋をつけてくれというのが本音でしょう。

尖閣問題を発端に硬直化しつつある日中関係ですが、ともに「タカ派」と見られがちな安倍晋三・習近平というニューリーダーの同時登場が、現状打開のきっかけにならないだろうか。そんな視点で、ぼくは現状をウオッチしています。両者が二国・多国間の外交舞台で個人的信頼関係を構築できるかどうか、動向を注意深く追跡していく必要がある。

日中間で“領土に関する問題”をどう説明し合い、落とし込むか。アメリカの力をどう活用するか。法的手段に訴えることは現実的なのか、それとも実質的な“棚上げ”のまま、現状維持でいくのか。日中両国、そしてアメリカも、新しい時代に即した新しいアプローチを探る努力を怠るべきではない。そこには政府の力だけでなく、当事者意識を持った民間の知恵が反映されるべきであることは言うまでもありません。

時代がフルスピードで動いているなか、明るい未来を切り開くのに「斬新な方法」が必要ないというなら、その理由を逆に教えて!!

今週のひと言

アメリカ、中国、そして日本。新政権のスタートに注目です!

●加藤嘉一(かとう・よしかず)

日本語、中国語、英語でコラムを書く国際コラムニスト。1984年生まれ、静岡県出身。高校卒業後、単身で北京大学へ留学、同大学国際関係学院修士課程修了。2012年8月、約10年間暮らした中国を離れ渡米。現在はハーバード大学ケネディスクールフェロー。新天地で米中関係を研究しながら武者修行中。本連載をもとに書き下ろしを加えて再構成した最新刊『逆転思考 激動の中国、ぼくは駆け抜けた』(小社刊)が大好評発売中!