歯科医に聞く。かぶせ物が続けて取れた、飲み込んだ……大丈夫?




キャラメルを食べていると、口の中でガリッと音が……。歯の詰め物が取れてしまいました。翌日、続けてかぶせ物が2つも取れ、食事中の出来事だったためそのうち1つはごっくんと飲み込むはめに。

なぜ続けてこんなことになるのでしょうか。また、飲み込んだ詰め物が胃につっかえたりなど、大変なことに……とはならないのでしょうか。



歯学博士で歯科・口腔衛生外科の江上歯科(大阪市北区)院長・江上一郎先生に詳しいお話を伺いました。



■かぶせ物が取れた歯を放置すると、連続して取れやすい



「治療後の歯のかぶせ物や詰め物が続けて取れることはよくあるんです。キャラメル、ガム、あめ、グミなど粘着性があるお菓子を食べているときに、詰め物やかぶせ物がそれらにくっついて取れてしまうんです」と話す江上先生は、なぜそうなるのかについて、

「歯は押す力、かむ力はとても強いのですが、引っ張られる力には弱い。キャラメルをかむのは、わざと詰め物をはがしているような行為になります」

と続けます。



やはり、詰め物が古くて劣化していると取れやすいのでしょうか。

「その傾向にあります。長年、毎日かみ続けていますと、衝撃の積み重ねで詰め物と歯の間の接着面が劣化したり、詰め物、かぶせ物が変形して取れやすくなることがあります。



また、治療した歯そのものがむし歯や歯周病で変形して詰め物やかぶせ物と合わなくなることも原因の一つです。かぶせてあるのに、水がしみる、かむと痛みがあるなど違和感がある場合は、むし歯が進行していると考えられます。早めに治療しましょう」(江上先生)



筆者のように、日を置かずに連続して3つも取れることがよくあるのでしょうか。江上先生はこう説明します。

「1つ取れると、その歯をかばってほかの歯でかもうとするでしょう。それらのほかの歯のかぶせ物がたまたま古かったり、歯に異変が起きていると連鎖で取れていきます。ですから、詰め物やかぶせ物が1つでも取れたら、すぐに治療したほうがいいんです。ほかの歯の損傷の予防になると考えてください」



■かぶせ物を飲み込んだら排出される



取れたかぶせ物を持って歯科医に行けば、再利用できるのでしょうか。

「できることもあります。むし歯がないか、かぶせ物に損傷がないかなどを確認してから治療をします。ですから、取れたかぶせ物が手元にあれば、歯科医に持参してください。そのかぶせ物を治療した歯科医でなくても、どこの歯科医でも治療してくれます」(江上先生)



かぶせ物が取れたまま、忙しくて放っておいたことがあります。江上先生は、こうアドバイスをします。

「取れた歯に食べ物が詰まってむし歯になりやすい、ほかの歯に悪影響を及ぼす確率が高くなります。忙しくてそう何度も歯科に行けない、出張先で取れたなどの場合は、近くの歯科に飛び込み、『出張中です』などと事情を話してください。



その場で応急処置として、歯のざらつきや違和感がないよう、またうまくかめるように仮のかぶせ物を作ってくれます。その後にあらためてかかりつけ医で治療をするとよいでしょう」



詰め物やかぶせ物の寿命はどのぐらいなのでしょうか。

「その人の歯と歯ぐきの状態、また歯磨きやかみ方、かむ力、歯ぎしりのくせなど習慣にもよりますから一概には言えませんが、歯科医としては、『一生使えるかぶせ物であるように作る』という姿勢で治療に臨みます。

かぶせ物は金属ですから、耐久性には優れています。自分の歯より強い、と思ってください」(江上先生)



銀のかぶせ物を飲み込んでしまったのですが、大丈夫でしょうか。

「内臓のどこかにひっかかるのではないか、手術をして取り出さなければ、と心配される方は多いのですが、ほとんどの場合は胃から腸と消化器官を経て排出されます。

ごくまれに、胃に落ちないでのどにつかえてむせるということもあります。魚の骨がのどにひっかかって歯科や耳鼻咽喉科で取ってもらうことがあるのと同じひっかかり方です。吐き出せない場合はすぐにかかりつけ医に相談してください」(江上先生)



1つでも詰め物やかぶせ物が取れたとき、放っておくといくつも取れることがある――。歯ぐきの具合が特別に悪いのかなどと想像していたので少し気が楽になりました。詰め物がとれたらすぐに歯科で処置をしてもらうことが得策とのことです。



(海野愛子/ユンブル)



監修:江上一郎氏。歯学博士。専門は口腔(こうくう)衛生。歯科・歯科口腔外科の江上歯科院長。

江上歯科 大阪市北区中津3-6-6 阪急中津駅から徒歩1分、御堂筋線中津駅から徒歩4分 TEL:06-6371-8902 http://www.egami.ne.jp/