信長のシェフ1巻(原作:西村ミツル 漫画:梶川卓郎)
平成の料理人ケンがタイムスリップして戦国時代へ行き、信長の料理人になります。信長の外交面や戦争でさえも、料理でサポートするという異色料理漫画と言えるでしょう。コミックスの最後には西村ミツル先生による「戦国めし」と題したコラムと登場した料理のレシピも掲載されています。

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本日の夜11時15分よりテレビ朝日系でドラマ「信長のシェフ」が始まります! このドラマは金曜ナイトドラマ初の時代劇で、漫画「信長のシェフ」(原作:西村ミツル 漫画:梶川卓郎)が原作となっているのですね。ドラマ版のページを見てみると、ドラマ版と原作版とではちょっとだけ違う部分があるので、原作版のおさらいをしつつ、見所を探っていきましょう。

■まずは原作をおさらいしましょう

主人公の「ケン」は平成の料理人です。物語はそのケンが土から掘り出されるところからスタートします。はい。いきなり埋まっているのですね。その後、舞台が永禄十一年(西暦1568年)であることがわかります。1568年と言えば、そう。戦国時代なわけです。

ケンが何故平成の料理人とわかるか。それは、最初にケンを掘り出し、ケンと一緒に逃げる人が最後に「お前は絶対生き延びろ…っ そして平成に帰れぇっ!!」と言うからです。あとはコックコートを着ているからですね。ここからケンは平成の料理人ということがわかるわけです。

ケンは記憶を失っています。自分が何者なのかとか、どこからきてどこで何をすればいいのかがさっぱりわかりません。記憶を失っているのですが、歴史に対する知識と料理に対する知識だけは何故か持っているのです。これがびっくりするほど豊富な知識で、たとえば最初に料理をするときに調味料に醤油が無いことに気づき「醤油は使われ始めたのが1580年前後。ということは今はそれ以前の時代ということか」なんて判断しちゃったりします。醤油が普及し始めたのが何年頃かとか、普通はそんなに覚えていないでしょう。

それはさておき。ケンの作る料理は未来の技術が使われていることもあり、だんだんと周りの人間を虜にしていきます。最初は川でケンを拾った夏さんの家で居候をし、近所中の評判になります。その評判を聞きつけ、ケンを召し抱えるのが織田信長というわけです。

そうして、織田信長の料理番、つまりは信長のシェフとなったケンは、信長の出す無理難題を料理で解決していく。それが信長のシェフのストーリーになります。

■料理に注目しよう!

というわけで、まず注目したいのは料理です。信長の出すのは本当に無理難題だらけなのですね。

最初の料理は、それまでの料理番である井上との料理勝負になります。どこぞから連れてきた謎の男に料理番を奪われることが納得いかない井上に対し、信長は言い放つのです。

「ならばこの男と料理勝負をせい。ただし真剣勝負じゃ。負けた方は殺す」

さすが戦国時代!
いやいやいや。まあこれはさすが信長というべきで、秀吉もその直後に「やはりこのお方の考える事は人知を超えておる」と言っています。戦国時代だったら普通というわけではなさそうです。

さらにそれだけではなく、「宣教師・フロイスの本心を確かめる料理」「足利義昭に朝倉討伐を認めさせるための料理」「北畠具教に和睦を受け入れさせる料理」などなど、本当に無理難題だらけです。しかも、こういったテーマがありつつも信長はいつも「ケン! 料理を作れ!」としか言いません。なのでケンは必死にその言葉の裏を読み、料理を作っていくのです。

この「料理にメッセージを込める」ということに関しては、原作の西村ミツル先生の代表作「大使閣下の料理人」でもおなじみです。大使閣下の料理人では、主人公の大沢公がベトナムの大使館公邸料理人となり、倉木大使とともに食卓外交を行います。ただ美味しい料理を作るだけではなく、料理にメッセージを込めるのですね。これは、西村ミツル先生が実際に大使館公邸料理人だったという経験が生きた傑作なので、信長のシェフを見て興味を持った方は是非読んでみてください。

それはさておき、現代と戦国時代とでは決定的に足りないものがあります。料理の素材から、調味料まで、全然足りないのです。醤油はありませんし、砂糖もなかなか手に入らない。そんな状態で、なおかつ難題をどのようにしてクリアするのか。どんな料理が出てくるのか。信長に「うまい」と言わせることができるのか。大きな見所となるでしょう。

■人間関係は?

このドラマの人間関係はどうなっているのか。まずはこちらのキャストをごらんください。

原作には登場しないのが香椎由宇さん演じる「謎の女」です。原作では5巻になって本願寺にかくまわれている謎の女が登場しますが、こちらの謎の女はケンの脳裏に時折フラッシュバックする人みたいです。本当に謎なので、どんな存在なのか興味津々です。

あとは、夏さんの扱いが変わっていますね。ケンと恋仲(?)になるのは同じなのですが、基本的には夏さんは刀鍛冶を続けます。ケンが褒美で家をもらってからは、京都から岐阜に移り住んだりもしますが、刀鍛冶のままなのです。森可成のために槍を作ったりするのですね。ドラマでは見習い料理人としてケンの下で働くことになるようなので、どうなるのかとても興味深いです。

原作でもドラマでも共通して注目したいのは、ケンが歴史の知識を持っているということでしょう。例えば、織田信長は明智光秀に本能寺で討たれるということをケンは知っているわけです。なので、(本能寺の変の起こるずっと前に)本能寺で織田信長と明智光秀のために料理を作らなければならなくなったとき、とても複雑な気持ちになったりします。他にも、「これはあの●●だったのか……!」と後から気づいたりするのですね。自分が口を出すことによって歴史が変わってしまうかもしれない。そんなことをしていいのか。そもそも歴史は変わるのか。そういったケンの苦悩をドラマ版ではどのように描いているのかとても楽しみです。

主役のケンを演じる玉森裕太さんは、個人的にはもうちょっと髪の毛を伸ばして欲しかったというか。原作のケンは、本当に料理人なの? と思えるぐらい髪が長いのです。なので、料理をするときに紐でくくったりするのですが、そこがまたかっこよかったりするんですね。なので、ちょっと玉森ケンは髪型が現代風すぎるかなと思わなくもないんですが、きっとドラマを見ているうちに気にならなくなるんじゃないかと思っています。

あと個人的にはなんといっても及川光博さん演じる織田信長でしょうか。予告編を見ているだけでもかっこいい! 本当に気に入らないことがあったら切り飛ばすぐらいの迫力を感じますね。

というわけで、非常に楽しみなドラマ「信長のシェフ」。1月16日には原作の最新刊6巻も発売されます。個人的にドラマ版でもどこかで決め台詞的に使われるのではないかと思っている、信長の妻「濃姫」の台詞でお別れしましょう。「いとうまし」

信長のシェフ 1巻
信長のシェフ 2巻
信長のシェフ 3巻
信長のシェフ 4巻
信長のシェフ 5巻
信長のシェフ 6巻
(杉村 啓)