優待ウオッチャーに突撃取材!2013年版 新設優待最新動向!
株主優待を実施する企業は1000社を突破し、全上場企業の3割に迫っている。
株主への利益還元に積極的な企業が増えている証拠で、個人投資家には朗報だ。
では、どんな優待が好まれるのか? そもそも企業は何のために優待制度を設けているのか?また、優待制度を実施すると投資家や株価にどう影響するのか? 疑問は尽きない。
そこでマーケットの専門家に、有利な優待銘柄選びにつながる最新動向を取材してみた。
回答してくれたのは大和インべスター・リレーションズの松永聖祥氏だ。


3割が優待制度を実施。株主多様化に効力発揮、長期保有投資家を優遇

今ではすっかり普及した株主優待。昔は小売りなど一般消費者に近い一部の企業が商品券を配る程度だった。ところが10年前に300社足らずだった優待実施企業は年々増え続け、2012年11月9日時点で1062社となった。全上場企業の約3割である。

ひと昔前まで「優待なんてやる必要はない」という企業も少なくなかった。しかし、この10年で実施率が高まり、今では「おそらく、どの会社も優待を検討しているはずです」(大和インべスター・リレーションズの企画グループ長・松永聖祥さん)。

株主優待制度のある企業は業績がよくて、IR(投資家向け広報活動)にも積極的な企業が圧倒的に多い。

ただ、企業の側にも優待導入に踏み切る?事情〞がある。株主づくりの問題だ。「バブル後、金融機関との株式の持ち合い関係が崩れ、長く保有してもらう新たな株主が必要になってきました。機関投資家の一過性の動きで株価が乱高下することも、会社にとっては好ましくありません。そこで、優待で個人株主を増やそうという発想になるわけです」と松永さん。

こうして新規公開企業だけでなく、古参企業からも優待の新設に踏み切るケースが出てきた。戦後の東証再開時からの上場企業である富士フイルムが、2012年4月に初の優待導入を決め、経団連系の老舗企業の間で話題になったのが好例。また、安定経営の広島ガスも電力・ガス会社で初めて優待制度を設けた。「最近の流行は長期保有投資家の優遇」と松永さん。チケット販売のぴあを皮切りに、今では約80社が長期保有に優遇措置を設けており、「今後も増えてくると思います」。

具体的には、保有期間が1年や3年などと長い投資家に優待券などを多く割り当てる方式。商品券が人気の三越伊勢丹ホールディングスや、自社商品を優待特典とするヤクルト本社などが導入済みだ。条件をもっと厳しくして、長期保有者だけに株主優待を適用する企業は資生堂やハウス食品など6社ある。追随する企業も出てきそうだ。

優待は配当と同じく利益還元だが、現金ではない分、期末まで株式を保有してくれた投資家への感謝の気持ち的な意味合いが強い。しかし、現実には期末の権利確定日に買って、翌朝にはさっさと売ってしまう?1泊2日株主〞も多い。これでは、優待の趣旨である「株主への感謝」とは程遠く、安定株主づくりの目的も果たせない。苦肉の策が、長期株主優遇措置なのだ。

また、保有株数による絞り込みも加速。東証など全国の取引所の最低投資金額引き下げの呼びかけに応じ、企業はこれまで1000株が主流だった売買単位を下げて100株に。結果、5万円足らずで買える銘柄が増えた。

投資金額の引き下げ後も優待内容を据え置けば、わずか数万円の資金を調達するために毎年1000円のクオカードを贈ることになる。これでは非効率としか言いようがない。

そこで、売買は100株単位でも優待は1000株などと制限する企業が増え、今では95社に。「企業が優待にもコスト意識を強めた結果です」と、松永さんは分析する。期末時点で株主であったとしても、優待を受けられないケースがあるので注意したい。

優待は確かに株主層拡大につながる。ここ1年で優待を始めた54社の約3分の2に相当する35社で優待導入後に株主数が増加。なかには2倍以上になった企業も2割強と効果は確認できたので、優待実施率はさらに高まりそうだ。企業は優待制度で、まとまった株数を長く持ってくれる投資家を探しているのだ。



松永聖祥(まつなが・さとよし)
大和インベスター・リレーションズ 企画グループ長

1988年に大和証券入社、営業企画部に配属。2002年より大和インベスター・リレーションズで株主優待関連はもちろん、企業のIRに関する業務で大活躍している。2008年より企画グループ長!




この記事は「WEBネットマネー2013年2月号」に掲載されたものです。