早稲田、明治などの有名大学でも相次いで保護者向けセミナーを開催。企業や就職情報会社、大学キャリアセンター、就活塾などを巻き込み、“親子就活”の広がりが加速している

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今年も本格的に動き出した就職活動。ここ数年のトレンドでは、企業説明会の同伴やOB訪問のセッティングなど、親子二人三脚で内定を目指す「親子就活」が広まっている。

就活解禁を2ヵ月後に控えた昨年10月、明治大学・駿河台キャンパスで開かれた保護者向けセミナーに約2000人が詰めかけたように、今や就活は親にとっても重大な関心ごとになっているのだ。

早稲田大学でも昨年12月に保護者向けセミナーを学内で開催。約200人の保護者が集まった会場で、キャリアセンターのベテラン職員が約1時間半、就活の現状や早大生の就職実績、学生に求められる能力といった点をみっちり講演した。

「今や大学進学率50%時代。多くの18歳が大学に来るのでピンキリの格差が拡大し、キリのほうは『就職活動』という漢字が書けない。『割合』の意味がわからない。息子さんは大丈夫ですか?」

ざわめく参加者たちを黙らせたのは、講師の次のひと言だった。

「選考の過程で『あ、この学生には親の影響力があるな』と面接官に見透かされたら終わり。『親の意見を聞かないと行動しないタイプ』『自立心が希薄』と判断されます」

セミナー終了後、「ウチは大丈夫。息子の意思に任せていますから」と動じない親がいる一方で、「これから娘とどう接すればいいのよ」と混乱を隠せない声も聞かれた。

親の影響が見えると面接に落ちる――。こう指摘されているのにも関わらず、今度は“塾”に頼る親も後を絶たない。その熱烈な需要と就職難に支えられ、目下、急成長を遂げているのが就活塾だ。国内最大級の就活支援塾とうたう「内定塾」には東京校、大阪校を合わせ、就活生500人が通う。

わが子を塾に入れる親の心境はこうだ。ある塾生の母親が話す。

「息子は去年、就活に失敗し、いま一浪中。もう自分たちだけじゃ手に負えないから入塾させたのよ。費用は自己分析&面接講座に個別面談、グループディスカッションと集団面接の練習会や回数無制限のエントリーシート添削がセットで年間16万8000円。一流企業と中小企業じゃ生涯賃金がナン億も変わるわけでしょ? それを思えば安い!」

ただ、子供のためとはいえ過保護になるのはよくない。東京都内にある就活塾「就活ゼミ」の有川智浩代表がこう話す。

「子供の就活に過干渉な親もいます。自宅で面接練習に付き合うくらいならいいが、エントリーシートの代筆をする親まで。塾の講義で個人指導をしていると、その学生のレベルがおおよそわかるものなんですが、添削依頼してきたエントリーシートの出来があまりにも違う。本人に問い詰めたら、『実は親が……』と。それどころか、『家族がwebテストを受けてくれるのでSPI(適性検査)は落ちたことがない』という子もいました」

どうして、今どきの親は、これほど“わが子の就活”に熱心になるのか? 『東洋経済HRオンライン』編集長で、『親子で勝つ就活』(東洋経済新報社)の著者、田宮寛之氏がこう話す。

「昨今の大学生の保護者は、子供が小中学校に入る時点から私立受験などで熱心だった人が少なくありません。塾の月謝、塾への送迎、受験のストレス、学校の授業料……。重たい負担に耐え抜いてきたのは、いい会社に就職させるためと考える保護者がほとんど。たとえ東大に入学できても大企業に就職できなければ『子育て失敗』と考える親も少なくありません。そんな親にとって就活は『子育て最終決戦』ともいえるのです」

子供をいい企業に入社させることが、子育ての集大成。“親子就活”の広がりの背景には、こうした親世代の意識が強く関わっているようだ。

(取材・文/興山英雄)