世界で一番出会ってはいけない二人のボーイミーツガール!!

年の瀬も迫ってきました。

今頃店舗では福袋の売り場を作るのに、四苦八苦しているんでしょう。福袋といえば、大体いつも僕は3が日で売り切るべき数を読み違えてしまうんです。
1月いっぱいまで、時には2月3月まで売り場に残してしまいます。何なんでしょうか。業なのでしょうか。

【関連:読者が情緒不安定になるほどの独特な世界観を持ったマンガ『変身のニュース』】
 
今年こそは、きれいに3が日ですっきりと売り切りたい!
ので、みなさんVV福袋は渋谷パルコでどうぞ!

そういえば、今回のVV福袋はなんと漫画家のオノ・ナツメさんがデザインしていただいたものになってます!
可愛くって、なんともめでたい柄になっていますので、みなさん店頭でチェックしてみてください!
こっそり袋を空けちゃだめですよ。

さて、今年最後のマンガのご紹介はこちら!

世界で一番出会ってはいけない二人のボーイミーツガール!!

今日マチ子 「アノネ、」上巻 秋田書店 です。

繊細な絵柄に叙情的な言葉を織り込み、少年少女の壊れやすく不安定だけども、どこか無敵でまぶしい彼らの日常を描いた物語をいくつも紡ぎだしてきた彼女。
今回はそれら従来の作品とは一線を画したものとなっております。

題材は「戦争」。

以前も、沖縄のひめゆり部隊の少女のお話を凄惨ながらも輝かしく描いた「COCOON」という作品を発表していたのですが、今作はさらに一歩、「戦争」というものを真摯にとらえ、「COCOON」で描ききれなかったものを産み出そうとしています。

舞台は架空のとある国。間近に開戦が予感される情勢のもと、帝国が東方系人種の迫害を推し進めている時代。

主人公の花子は家族とともに、迫害から逃れるために隠れ部屋に移り住む。
一方、もう一人の主人公・太郎は画家を夢見ていたが両親や周囲から反対されひとり部屋にこもるようになる。
そして、太郎と花子はとある「部屋」で巡り合って……。
といった出だしで物語は始まります。

有名な「アンネの日記」をモチーフに、もしアンネとあの独裁者がお互い少年少女の時に出会っていたら……。

作品の帯にも書かれているのですが、
「世界でいちばん出逢ってはいけないふたりのボーイ・ミーツ・ガール。
ボーイ・デストロイズ・ガール。」
まさにこの作品に的確なコピーです。

戦争・平和、現代・過去・未来、そして現実と空想。あらゆる想像・事象を咀嚼し、「それ」をどう表現するか。
今日マチ子がこの作品で戦っているのがみてとれます。

たとえば、太郎と花子が邂逅する「部屋」の場面。
真っ白で何もない場所で二人はたびたび心を通わせます。そこでの二人は本当に純粋無垢で、部屋同様真っ白な二人のやりとりはほほえましくも滑稽です。

一方で、軍に連行されて収容所に連行される花子とその家族の場面。
花子はいつか解放されると信じて、明るく収容所生活を過ごします。
その彼女の輝かしさが何とも見てて痛々しい。その後の未来が容易に想像できてしまうので。

現実と空想を行き来して、歴史ものでも現代ものでもなく、ましてやファンタジーでもない世界が、気づけば目の前に広がっていました。

先日行われたトークショーで、彼女は

「別に平和主義者でもないんですが、今の自分にしか描けない戦争の話があって、それを描きたい。」

と言ってました。

そんな彼女が今、ほかにも連載を多く抱えた中で一番、力と想いを込めて描いているのがこの「アノネ、」なのです。

来春発売予定の下巻にはきっと想像以上の凄惨な出来事が繰り広げられるのでしょう。
こちらも相当な覚悟をもって読まないといけません。

きっと、将来彼女の代表作になるであろうこの作品。
あなたも目撃者になりませんか。

といったところで今年のコラムはこれでおしまい!
また来年も、素敵なマンガに出会えますように!
それではよいお年を―。

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■文:ヴィレッジヴァンガード・渋谷パルコ店・大岩店長(通称:マンガ番長)
■記事提供協力:ヴィレッジヴァンガードマガジン / http://vv-magazine.com/