アフリカでも「KUMON」!公文の世界戦略成功の秘訣

写真拡大

南アフリカ(以下・南ア)に来て驚いたのが、街のあちこちで、「KUMON」の看板を見かけること。そう、日本でもおなじみの、あの「公文」である。公文が早くから、北米やアジア諸国で展開していたことは知っていたけど、まさか、アフリカ大陸にまで――。


現在、47の国と地域で約430万人(教科数延べ)が公文式で学ぶという。なぜ、公文がこれほどまで、海外に浸透しているのか。南アでのKUMONの現状は――?

日本が世界に誇る教育サービス「KUMON」の成功の秘訣を、南アフリカ公文・津田正樹社長に聞いた。

――南アへの進出の時期と経緯を聞かせてください。

南アでの最初の教室は、まだアパルトヘイト(=人種隔離政策)統治下の約20年前に開設しています。公文の海外展開の大きな特徴は、現地からのオファーを受けて広がったことにありますが、南アも同様に、最初は現地からの要望を受けての教室開設でした。

そこからフランチャイズが広がり、1997年に公文南アフリカを設立、2012年11月現在、約260のフランチャイズ教室で約2万人が学んでいます。アフリカ大陸では南アのほか、ケニアやボツワナ、ザンビアとナミビアでも展開しています。


――ヨハネスブルグなどの都市部だけでなく、地方でもKUMONの看板を見かけて驚きました。なぜ、南アでこれほどKUMONが受け入れられているのでしょう?

特に算数・数学において、学校外教育のニーズが強いと感じています。背景には、現地の教育システム、カリキュラムより高いレベルでの教育を求める保護者の要望があるのだと思います。

私は以前イギリスに駐在していましたが、南アの学校は日本やイギリスに比べて授業時間が短く、カリキュラムもゆるいと感じます。南アでは、日本の小学生なら普通にできる分数や小数点の計算をきちんとできない子も多い。

一方、公文のプログラムは、日本の学習指導要領に準拠しているわけではなく、「高校相当の学習を自学自習でできるようになる」ことを目標に、段階別に教材を構成した全世界共通のものです。

この、「世界共通スタンダード」という部分が、自国の教育に不安を覚える南アの保護者に受け入れられている大きな要因ではないでしょうか。


――アフリカ大陸随一の先進国と言われる南アですが、所得格差が大きく、貧しい地域も多い。KUMONの教室にはどのような子どもたちが通ってくるのですか?

幼稚園から中高生までいますが、小学高学年の子どもがボリュームゾーンです。人種は、白人、黒人、アジア系など、じつにさまざま。算数・数学と、母国語としての英語の2科目ありますが、やはり算数・数学を習う生徒さんが多いですね。

大々的な広告を打っているわけではありませんが、「学年トップの生徒がKUMONをやっている」などの口コミが広がり、多くの生徒さんに通っていただいています。

教室によって異なりますが、週2回の教室で、月謝は日本円で約4千円。現地では決して安くはありませんが、南ア最大のタウンシップ(アパルトヘイト時代に制定された黒人居住区)であるソウェトにも、KUMONの教室はあります。人種を問わず、教育への関心、熱は高いと感じます。


――今後の展望は?

公文のミッションは、基礎学力を上げることです。特に数学力を養うことは、ロジカルシンキングやタイムマネジメント、ITリテラシーなど、あらゆるスキルの向上につながります。貧富の格差の拡大を始め、様々な問題を抱える南アですが、ひとつでも教室を増やし、できる限り多くの子どもたちがKUMONを経験することで、今できないことをできるようになればいいなと思います。それがこの国の未来を少しでも明るくできればと願ってやみません。

-----

穏やかな語り口の津田社長だが、経験と実績に裏打ちされた公文式の底力を見せつけられた気がする。
じつは筆者も、公文経験者。幼いころ取り組んだあの教材が、今や世界のKUMONとして、遠く地球の裏側のアフリカ大陸にまで浸透していることに驚くと同時に感動を覚えた。

一見繰り返し問題を解くだけに見えるメソッドは好みの分かれるところかもしれないが、このグローバル時代、世界共通プログラムで基礎学力を磨く公文式の良さが日本でも見直されてもいいのではないだろうか。世界どの国にいても、同じ目標に向けてステップアップできるKUMON、海外転勤族の筆者にとっても、大きな魅力である。


恩田 和(Nagomi Onda)
全国紙記者、アメリカ大学院留学、鉄道会社広報を経て、2010年に長女を出産。国内外の出産、育児、教育分野の取材を主に手掛ける。2012年5月より南アフリカのヨハネスブルグに在住。アフリカで子育て、取材活動を満喫します!