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歴史的建造物に音楽、カフェ文化──。オーストリア・ウィーンは、ハプスブルク家が愛し、今なお華やかな宮廷文化を色濃く残す残る歴史と伝統の街だ。ときどき中世の世界に迷い込んだ錯覚さえ覚える伝統と現在が交錯するこの街は人々を魅了してやまない。ウィーン、その12月。粉雪が舞う街は、幻想的な美しさに包まれる。訪れる旅人の記憶に深く残る、冬のウィーンの街を歩く。

写真上:2区の「アウガルデン公園」近くで犬を散歩する女性。閑静なエリアで、公園にはウィーン少年合唱団の寄宿舎も隣接している。

街全体がまるで美術館

歴史を紐解くと、ウィーンは13世紀後半からこの地を統治していたハプスブルク家が居城を構えた城塞都市だった。19世紀、フランツ・ヨーゼフ1世は城壁を取り払い、城壁跡に「リングシュトラウセ」と呼ばれる環状道路を設置する勅令を出す。このリンクの内側が、今日、ウィーン旧市街と呼ばれる場所。ウィーンを代表する建築物が建ち並び、ヨーロッパの中でも古い街並みが美しく保存された場所のひとつとして、2001年に世界遺産に指定されている。

写真上:「ウィーン国立歌劇場」、通称、オペラ座。1861年から1869年にかけて、ネオルネッサンス様式で建築された。 

旧市街には王朝時代の栄華を今日に伝える、教会、宮殿、庭園がたくさんある。尖塔が印象的な「シュテファン寺院」はウィーンのランドマーク的存在。ハプスブルク家歴代皇帝の墓所であり、ヴォルフガング・モーツアルトもこの寺院で結婚式と葬式を挙げた。「ウィーン・オペラ座」、ハプスブルク家が400年間にわたって収集した美術コレクションを展示する「美術史博物館」──。1周5kmほどのリンク周辺だけで帝都のさまざまな側面を垣間見ることができる旧市街は、生きた「美術館」といっていいかもしれない。

写真上:「美術史美術館」では、グスタフ・クリムトが手がけた壁画をみることができる。

写真左/「美術史美術館」が所蔵する絵画は7000点以上にのぼる。 写真右/ハプスブルク家の夏の離宮「シェーンブルン宮殿」の鏡の間。

現在、リンクには、2、30分でリンクを1周する路面電車が走っている。ウィーンを初めて訪れたなら、まずは車窓からウィーンの街の概要がはかるのがいい。気になる場所があれば、降りて歩いてみるのも一興。気の向くままに小さな路地に迷い込んでも、シュテファン寺院の尖塔が方向をしめしてくれる。

ウィーンのカフェ文化を体感する

ウィーンの人々の生活とカフェとは、とても密接に結びついている。ウィーンに住む人々の誰もがお気に入りのカフェを持っているといわれるほど。街には数えきれないほどのカフェが存在し、そのすべてが鮮烈な個性を放っている。

写真左:チョコレートやザッハトルテのほか、焼き菓子なども販売する「デメル」。カフェも併設している。

ウィーンのカフェの誕生は、17世紀後半にさかのぼる。19世紀には音楽家や作家たちが集う場となり、独特のカフェ文化が誕生。やがて、市民も、カフェで新聞を読み、語り、情報収集するようになる。当時から営業を続けるカフェも数多く、アール デコ様式のレジスターや世界各国の新聞が豊富に取り揃えられた新聞立ては、いまも変わることのないウィーンのカフェの風物詩。フロイトやクリムトが通ったカフェや、ベートーベンやモーツァルトが演奏を行ったカフェも健在だ。宮廷御用達店「デメル(Demel)」は、皇妃エリザベートも愛した店。エリザベートは、同店の砂糖のすみれ漬けが好物だったという。「カフェ・ラントマン(Cafe Landtmann)」は、マーラー、フロイト、ユリウス・ラーベ、ロミー・シュナイダーなどが集った、1873年創業の老舗カフェ。ブルク劇場や国会議事堂、ウィーン大学のすぐ近くに位置するため、今日も舞台をはねたあとの俳優や音楽家が足繁く通う。

写真上:1873年創業の老舗「カフェ・ラントマン」。2009年には東京・青山に海外1号店をオープンした。

気の向くままにカフェめぐりを楽しんでいると、「ウィーンの文化はカフェが育んだ」という言葉が真実味を帯びる。さまざまな歴史が息づくウィーンのカフェはこの街の文化そのもの。お気に入りのカフェを探し当て悠久の時の流れに身をゆだねる、そんな時間の過ごし方も悪くない。ちなみに、さまざまな種類のコーヒーがカフェのメニューに並ぶが、ウィーンの人々の定番は、泡立てたミルクを入れたカプチーノ風のメランジェなのだそう。

Demel
Kohlmarkt 14
Tel:(01)535-1717
www.demel.at

Cafe Landtmann
Dr. Karl Lueger-Ring 4
Tel:(01) 24 100-100
http://www.landtmann.at/

冬ならではのウィーンの楽しみ方

冬のウィーンはひときわ煌びやかだ。11月中旬から12月下旬まで市内の至るところで開かれる「クリスマスマーケット」は、この時期だけの風物詩。

写真上:マグカップに入った、ホットワインを売る露店は冬のヨーロッパの風物詩のひとつだ。

クリスマスのオーナメントや民芸品、お菓子やホットドックなどの露店が立ち並び、うきうきとプレゼント選びにいそしむ人々の姿を目にする。「それって、ものすごく寒いのでは?」と心配する方も多いと思うがたしかに寒い。でもそんな声を見越してか、マーケットでは「グリューワイン」が売られている。こちら、砂糖やシナモン、レモン、クローブなどのスパイスと赤ワインを温めて作る甘いホットワインのこと。店によって少しずつ味が異なるので、飲み比べするのも楽しい。グリューワインで暖を取りながら、地元の人たちと一緒にマーケットをねり歩くのは、なんとも心ときめくひと時だ。

クリスマス以降のウィーンの冬だってとても魅力的。市庁舎前広場には3月まで、広大なスケートリンクが出現。あふれる光のなかでのスケートは格別だ。カーニバルのシーズンの1、2月の週末は、必ずどこかで大きな舞踏会が開催されている。ひと冬にウィーンで催される舞踏会の数は、大小あわせると400にものぼるとか! 入場券を買って、ドレスコード(ドレスコードは舞踏会の趣旨によって異なるが、男性はタキシード、女性の場合はくるぶし丈のロングドレスが基本)を守れば、一般の観光客が参加できるものが多い。文化、芸術が集結したハプスブルク帝国時代、ウィーンでは数多くの舞踏会が催され、そこで王侯貴族たちはこぞってダンスを楽しみ、やがて正式にハプスブルク宮廷文化に取り入れられるようになる。舞踏会という言葉が遠い日のおとぎ話ではなく、人々の生活に溶け込んでいるこの地で、華麗に社交界デビューを飾ってみてはいかが?

写真右:オペラ座近くの目抜き通り、ケルントナー通りも、冬場はイルミネーションに彩られる。

(text by Aya Hasegawa)

取材協力=オーストリア航空、オーストリア政府観光局