クレディセゾン社長 林野 宏氏

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■堤清二氏をライバルと見立てた新人時代

ビジネスは今、「K1」の時代。100%本気の格闘技の様相です。景気がいい頃は市場が成長し各社はそのパイを分け合った。それはバトルロイヤルのようで一見派手ですが勝ち負けが明確ではなく、ダラダラと試合が続くような印象でした。しかし現状は、やるかやられるかの真剣勝負で1秒たりとも気が抜けません。

もとより資本主義における企業の本質は、競争です。日々少しずつ価値観が変化する顧客の支持を取り付ける競争が続くのです。

21世紀を勝ち抜くのに重要だと私が考えるのは創造的破壊。誰かのイミテーション(模倣)ではなく、マーケティングを超えて全く新しいイノベーションを起こすことです。そのためには社員が強くなければなりません。当社では中途採用を重視しており女性の幹部登用も積極的に行っています。多様性を重視し社内をある種のカオスにすることで、社員間に健全な競争が生まれると考えています。

では競争の激しい社内でライバルに勝つにはどうしたらいいか。結論を言えば、自らが高い志やビジョンを持つことが大切です。自覚が、自己を鍛え、結果的に人より秀でるきっかけになるのです。

私は大学卒業後、西武百貨店へ入社しました。その頃の西武には、社長の堤清二さんという絶対的な存在が君臨していました。しかし、新人の私は当時から「社長に勝ちたい」と、勝手に堤さんを仮想のライバルに仕立てていました。39歳のときに今の会社(当時は西武クレジット)にうつってからも同じ志を抱き続け、2000年に社長に就任しました。

これまで私にも多くのライバルがいましたが、最終的に勝てたのはこの「トップを目指す」気持ちの強さがあったからでしょう。

社長をライバルに見立て、そのポジションを本気で目指せば目の前の課題だけでなく大きな視点でものごとを捉える習慣がつく。

この時点で狭い視野で汲々とするライバルに一歩差をつけられる。目標が部課長ではなく組織の頂であるため努力が長続きするのです。努力が長続きすると、自分なりの戦略も持ちライバルに勝る武器を持とうと絶えず精進できます。上司に依存せずに自分でものを考え行動するので知恵もつきます。

それに社長以外をライバル視しないから、些細なことで怒られても過剰に落ち込むこともなく、くだらない嫉妬も必要ありません。ライバルより精神的に優位に立つのです。大きな目標があれば休日の過ごし方も変わる。ムダな時間をなくし自己投資や人脈づくりの時間を増やそうとします。社長らしい広範な知識を身につけるべくあらゆる本を多読精読するのです。

そうやって日々を過ごすと、真の実力がつく。努力の日々を重ねると、その実力は、単に社内で通用するレベルのものから同業他社、さらには異業種でも通用するオールマイティなものに進化します。そうなれば怖いものはありません。

もちろんライバルも黙ってはいない。簡単には勝てません。そこで大切なのは敵を知ることです。

今の会社に赴任して私が最初にしたのはライバル企業への挨拶。彼らの多くは銀行からの出向者でカード事業の経験はなく、しかも2〜3年で銀行に戻るのです。そこがライバル企業の弱点でした。こちらもノウハウや人脈がなかったけれど、カードの時代がくるという先見性とやる気だけはあった。だから「勝てる」と思ったのです。

相手の苦手な部分を発見したら、そこで勝負する。もし相手がエリート大出身で細かい仕事を嫌がる腰が重いタイプなら、自分は泥臭く顧客のもとへこまめに足を運び面倒臭い仕事を引き受ける。相手の弱みを逆手に取るのです。

ただ、どうしてもライバルにかなわない場合は、無理して戦ってもノイローゼになりますから、潔く撤退して違う土俵でリベンジする勇気も必要でしょう。

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クレディセゾン社長 林野 宏
1942年生まれ。埼玉大学卒業後、西武百貨店入社。82年西武クレジット(現・クレディセゾン)に転籍し、2000年より現職。

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(クレディセゾン社長 林野 宏 構成=大塚常好 撮影=小原孝博)