笑いを交えながら作品に込めた思い、情熱を語った河合勇人監督と武富健治(左から)

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 『映画 鈴木先生』公開直前イベントが9日、新宿ロフトプラスワンで行なわれ、コミック原作者の武富健治と河合勇人監督が登場。平均視聴率2.1パーセント(関東地区 / ビデオリサーチ社調べ)と低迷を極めた同ドラマが、いかにして映画化実現にいたったか、その経緯を熱く語った。

 イベントが始まると、河合と武富は早速ドラマ版の視聴率に言及。武富は会場に集まったファンに「この中で本放送の第1話を観た人!」と質問を投げ掛け、ほとんどの人が挙手すると「この場所に限っていえば高視聴率だね」と返し、会場を笑いの渦に巻き込む。すると河合も「初回が確か2.6パーセント。ああ、このドラマは尻上がりに数字が上がるタイプだな、と思っていたら第1話が最高視聴率だった」と追い打ち掛けた。

 自虐ネタになるほどの低視聴率だった本作が、映画化に漕ぎ着けた要因を河合は「情熱のバトンタッチ」だったと語る。「この企画はそもそも映画化が前提だったんです。これだけの長編を2時間で切り取るのは難しいということで連続ドラマ化が先行し、見事にコケたわけですが、『映画にしよう!』という初心だけはなぜかスタッフ全員が捨てなかった」と舞台裏を告白。さらに河合は「現場の人間がほとんど映画畑の人だったから数字に鈍感だった、というのも大きいかな」とテレビ的な発想がなかったことも強調した。

 この日のイベントには、プロデューサーの守屋圭一郎、武富と親交の深いドキュメンタリー監督の松江哲明、ライターの松谷創一郎氏も参加し、『鈴木先生』をさかなに熱いトークを展開。特にコミック版への思い入れが強いという松江から「ドラマシリーズからすでに映画っぽい映像でしたね」と切り込まれた河合が「いい作品はヒットしない、という風潮に風穴を空けたかったんだけどね……」と語るなど、くやしい思いを映画に託したことをうかがわせた。

 テレビドラマ版では、独自の教育理論「鈴木メソッド」を駆使する中学校の国語教師・鈴木先生(長谷川博己)の悪戦苦闘を描き、低視聴率ながら第49回ギャラクシー賞優秀賞ほか数々の賞を受賞する高評価を受けた本作。映画版は、生徒たちが文化祭の季節に心躍らせる中、問題児だったOBが学校に立てこもり、人質事件を巻き起こすというサスペンス仕立てになっている。(取材・文:坂田正樹)

『映画 鈴木先生』は2013年1月12日より全国公開