岩本沙弓の”裏読み”世界診断 (23) 『日本国債』のネガティブ報道に思う--国債価格急落は”この世の終わり”!?

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皆様新年明けましておめでとうございます。

素晴らしい1年となるよう祈念しております。

2012年の年の瀬も押し迫った時に放映された『日本国債』というテレビ番組をご覧になった方も多かったのではないでしょうか。

論客の方々も既にあちこちで賛否(どちらかというと否の方が多かったような気がしますが、)両論を繰り広げておられましたが、御多分にもれず、私も懇意にしている金融マン達とこの番組の話題で、しばし盛り上がりました。

番組は冒頭のドラマシーンから暗い感じで、全体のトーンも「オドロオドロシイ」雰囲気でした。

BGMを明るいものに替えただけでも、随分と印象は変わったのではないでしょうか。

実際に明るくクローズアップすべき箇所も多くあった内容でした。

例えば、日本国債を扱っている現場のプロ代表として、日本の大手金融機関の債券部部長が登場し、「お客様の大事な預金ですので、まず安全なものとなると日本国債」とコメントしていたことなどがその最たるものです。

日本国債は最も安全な投資先と、国際金融市場の最前線にいる金融のプロが言っているという点を見逃すことはできないでしょう。

また、海外のヘッジファンドが日本国債を売りで仕掛けてくる、という内容も触れられていましたが、これまで20年近くに渡って、入れ替わり立ち代わり新しいファンドがやってきて日本国債を売ってみては巨額の損失を出し、あえなく撤収していったのです。

海外ファンドの売り仕掛けはこれまで頻繁に起こってきたことで、まるで「黒船」が来航するがごとく、今まで経験したことのない脅威が今後日本国債市場に襲いかかるというバイアスはやや行き過ぎでしょう。

効果音にしても、話題の取り上げ方にしても、しょせん脚色に過ぎないと言われるかもしれませんが、この辺りから既に、日本国債市場について、どうもネガティブな印象を訴えたい、という番組制作者の意図が読み取れます。

それでは何故ここまで悲観的状況であると煽るのか。

それにはやはり、日本が財政危機であり、消費増税やむなしのスタンスがあるからではないでしょうか。

歳出ばかりが増えている状況下では消費税を導入して歳入を増やし、財政を健全化させるしかない、そういった意識を視聴者に持ってもらいたいと考えているのでしょう。

しかし、それも内容として矛盾している点がありました。

番組中、財務省が発表している「一般会計における歳出・歳入の状況」のグラフの一般会計歳出と一般会計税の部分を取り出して、「日本の歳出と税収の差が広がり『ワニの口のようになっている』」とナレーションを入れていた箇所がありました。

なぜ、政府に入ってくるお金よりも出ていくお金の方が多くなり、『ワニの口』のようになってしまっているのか。

消費税が初めて導入されたのは1989年(平成元年)です。

それが3%から5%に引き上げられたのは1997年(平成9年)です。

つまり、消費税を導入しても税収増には結びつかず、財政を健全化しようにも出来ない。

これまでの経緯から消費税は財政再建には全く役立たない、ということをこれでは敢えて示しているようなものです。

むしろ消費税を導入したことで、日本全体の消費活動を低迷させ、それが企業収益を圧迫し、法人税収や所得税収が下がって、結果的にワニの口を大きく開ける原因の1つになったのではないか、と考える必要もあるのではないでしょうか。

消費税増税の必要性を客観的に訴えるわけでもなく、ただ漠然とした不安だけを視聴者に煽るだけの内容ならば、いったい何のための番組なのか制作意図がわかりかねる、というのが我々の結論でした。

拙著の印象から日本国債暴落論に異を唱える人物と受け止められているようですが、私自身がかねがね訴えているのは、日本国債の市場価格が下落(利回りは上昇)することイコール日本経済が破綻するという論調は行き過ぎであるという点です。