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高い地位についた人間が、ひとたび部下の意見を受け入れない「裸の王様」になれば、自分も組織もいつか大きなダメージを受ける。自然に意見が上がってくるような仕組みをつくるために上司はどうあるべきか。

■なぜ高い地位の人に意見することを強く恐れるのか

組織の階段を上れば上るほど、自分の考えや仕事ぶりや戦略について建設的な意見、評価をもらえる可能性は低くなる。上司の気分を害することは誰だって言いたくないからだ。

だが、そういった下からのフィードバックをもらわなければ、上司としての能力を高めるのは難しく、独りよがりになるおそれがあり、すばらしい考えを聴く機会を失うことにもなる。では、自分にとって耳の痛いことを部下が直接言ってくれるようにするためには、上司はどうすればよいのだろう。

ほとんどの人は上司に自分の意見を言うのは差し控えるが、それにはもっともな理由がある。

「公式の権限を持つ人々は、さまざまな形でわれわれの運命を左右することができる。たとえば、重要な資源を与えないでおくことができるし、否定的な評価をして昇進を阻むこともできる。われわれを解雇したり、解雇させたりすることさえできる」と、コーネル大学ジョンソン経営大学院准教授のジェームズ・デタートは言う。

高い地位にいる人であればあるほど、部下にこうした不安を抱かせる可能性は高くなるものだ。ハーバード大学経営大学院教授で、『Being the Boss: The 3 Imperatives for Becoming a Great Leader』(邦訳『ハーバード流ボス養成講座.優れたリーダーの3要素』)の共著者としても知られるリンダ・ヒルは、こう指摘する。

「人々が上司にフィードバックを与えないのは、なによりも上司が報復することを心配するからだ。否定的なフィードバックを受け入れるのは大多数の人にとって容易ではないことを、彼らは知っているのである」

このように部下が何も言わないのをいいことに、上司はこれまでどおりのやり方を続けたいと思うかもしれないが、部下の沈黙は上司のためにならないし、組織にとってもその上司のキャリアにとってもプラスにはならない。

■「部下の不安」を認識できるか

上司は部下が気楽にものを言える環境を整える必要があると、ヒルは言う。部下の不安を打ち破る必要があるのだと。フィードバックをもらいたいと言葉ではっきり伝えるべきだと、デタートはアドバイスする。

「私自身を含めて人はみな誤りを犯すものだ。だから、気おくれしたり、恐れたりせずに私の誤りを指摘してほしい」と、部下に伝えよう。自分が向上するために彼らからのフィードバックが必要なのだと説明しよう。

同時に、厳しいフィードバックに耳を傾けることが、どれほど不快な経験になりうるかも認識する必要がある。

「批判されると不愉快な気分になるのが人間の常であり、どれほど高い地位にいようと、上司もまた人間だ」と、ヒルは言う。それでも、不愉快な気分になるのを恐れてフィードバックを敬遠してはならない。

■人事評価以外でも意見を求めよう

人事評価の時期だけでなく、常時フィードバックを求めよう。

「あらゆる機会を利用して情報を積極的に集めたり求めたりする必要がある」と、ヒルは言う。

たとえば次のような言い方をすればよい。

「これはわれわれが一緒に設定した目標だが、君がこの目標を達成するのを手助けするために、私は何をすればいいかね」

ただし、一度求めただけで部下が率直に語ってくれると思い込んではならない。「しばらくそれを続ける必要がある。そうすれば情報が入ってくるようになり、もっと的を絞った質問ができるようになる」と、ヒルは言う。

■どこを直すべきか具体的に聞く

フィードバックを与える際に具体例を挙げるのと同じように、フィードバックを受けるときも具体例を求めるべきだ。

誰かが「あなたはチーム・ミーティングの運営の仕方がうまい」とか「あなたは権限の委譲が不十分だ」と指摘してくれたときは、具体例を挙げてくれと頼もう。そうすればそのフィードバックをより深く理解できるし、正しい指摘をしてもらうこともできる。

「相手が自分の主張やアドバイスを具体的な実例や数字で裏づけることができればできるほど、それはおそらく本当だと判断することができる」と、デタートは言う。

■アドバイスの行間を読もう

もちろん、いつも率直なフィードバックが得られるとはかぎらない。だが、部下が自分にどのような問題を自覚させたいと思っているのかを推測するのは上司の責任だ。複数の情報源からフィードバックを得て、それを照らし合わせて推論することが必要かもしれない。

たとえば5〜6人の部下に同じ質問をしてもよいと、ヒルは言う。「データを集め、自分が及ぼしている影響についてストーリーを組み立てるわけだ」。

広く網をかけることにはデタートも賛成だ。「少なくとも、自分が受け取る答えにずれや矛盾があるかどうかを知り、それに関して自分は何をする必要があるかを考える助けになる」。

■助言をどれだけ受け入れられるか

誰かが勇気を出してアドバイスしてくれたときは、それを受け入れよう。「せっかく言ってあげたのに、あれは完全に時間のムダだったと感じるのはいやなものだ」と、デタートは言う。

「フィードバックをくれた人に実際に謝意を伝える必要がある。また、彼らが解雇されたり遠ざけられたりはせず、逆に昇進するのを、他の部下たちが目にすることが重要だ」。

フィードバックをきちんと受け取り、それを踏まえて行動を変えられる人間であることを、部下に実証しよう。それは部下の間で語り草になって、より多くの部下が建設的なフィードバックをくれるようになるだろう。

■「おべっか使い」に惑わされるな

フィードバックが自社の文化に組み込まれていない場合、もしくはほとんどの部下が100%率直には語ってくれないだろうと思われる場合には、本当のことを言ってくれる信頼できる人物を1人か2人見つけようと、デタートはアドバイスする。部下でもよいし、同僚でもメンターやコーチでもよい。それが誰であれ、その人が適切なデータを入手でき、あなたと日常的に付き合っている人々から話を聞けるような体制をつくろう。

自分の聞きたいことだけを言ってくれる「おべっか使い」から話を聞くだけでよしとしてはいけない。

■匿名で意見を求めてもよい

部下に率直に語ってもらうのはきわめて難しい場合がある。その困難を乗り越える1つの方法が、360度評価を行ったり、コーチを使って匿名のフィードバックを集めたりすることだ。たとえ匿名でも、上司はきちんと対応する必要がある。

ヒルによれば、フィードバックから何を学んだかを上司が公の場で語れば、それは部下に対して、自分は批判に耳を傾ける人間だというメッセージを送ることになる。「上司がそれを行ったら、部下はもっと気楽に上司に直接本当のことを言うようになる」と、ヒルは言う。

その実例として、HCLテクノロジーズのCEO、ビニート・ナイアが、自身に関する360度評価を社内イントラネットに掲載して、幹部たちに同様にするよう促したことを挙げている。これによって人々はナイアがフィードバックを真剣に受け取る人物であることを知り、それまでよりはるかに気楽に彼に直接フィードバックをくれるようになったと、ヒルは述べている。

(エイミー・ギャロ=文 ディプロマット=翻訳 Getty Images=写真)