2012年の国際政治を振り返ってみましょう。政治的イベントが断続的に展開されましたが、“変化”の印象は強くないのではないでしょうか?

2012年初頭、ぼくは権力移譲が行なわれる中国について「今年は平穏だろう」と予測しました。過去の例を見る限り、リーダーの変わる年は派手なアクションを起こすことなく、政治も経済も粛々と進んでいくのが“定石”だったからです。

予測は外れました。重慶市トップだった薄熙来(はくきらい)氏の失脚という、この20年で最大の政治危機や、尖閣問題に端を発した反日デモなど政治の安定を揺るがす事件が発生しました。共産党第18回党大会にしても、日程も新指導部の人数もギリギリまで決まらないという異例の事態でした。

世界中から一挙手一投足が注目される中国は、いつでもどこでも“何か”が起こり得る、不安定で、不確実な時代に突入していくでしょう。

とはいうものの、病状が心配された習近平(しゅうきんぺい)氏は予定どおり総書記になりました。リーダーの選挙などがあった地域(アメリカ、ロシア、フランス、台湾……)も、結果的には大方の予測どおりに事が運びました。

“激動”という言葉で修飾されがちな昨今の世界が、実は“現状維持”を是とし、両極端に背を向けて“中間”に寄っているような気がしてなりません。

例えば台湾。これまでは親中派=国民党、反中派=民進党という図式でしたが、2012年1月の選挙で政権を維持した国民党の馬英九(ばえいきゅう)氏は「私が中国を訪問するときは、中華民国大統領として行く」とあえて中国を突き放し、逆に民進党のトップは「中国との関係はこれからますます大事にしていく」とあえて中国に歩み寄るスタンスで、“台湾独立”を引き出しにしまい込んでいます。

アメリカもしかり。当初は「大統領になったら、翌日には中国を為替操作国に認定する」と言っていた共和党のロムニー氏が、大統領選後半には「中国はパートナーになり得る」と繰り返していた一方で、2期当選を果たしたオバマ大統領は経済、安保などの分野で「中国に対して言うべきことは言っていく」と、意識的に中国を牽制しました。

グローバリゼーション・相互依存の時代、台湾やアメリカ政治において、「反中」や「親中」という感情的で極端になりがちな主張が国内世論に受け入れられなくなってきたということでしょう。

極端に走らず、中道を行く―。政治の選択肢が狭まってきている。予定調和とも受け取れる政治を行なわざるを得ないほど、各国政府の権力基盤が弱くなっているんです。

一方、政治家が国民の感情に迎合するポピュリズムが横行し、ナショナリズムをあおっている現状も気になります。中国では、国民の反日感情が格差への不満と結びつき、暴力事件に発展してしまう事態を心配する政府が、日本と穏健で理性的な交渉を展開できないジレンマに陥っています。中国だけではありません。国際社会から“したたかな外交”が姿を消し、強硬姿勢が横行し始めているのは懸念材料だと思います。

これらの問題点は断続的に蔓延していますから、2012年はターニングポイントというより、キーピングポイントと呼ぶほうが適切でしょう。各国で政権交代が行なわれたという意味で過渡期であることは間違いないが、転換期を迎えるには至っていません。既存の問題は、2013年も根深い難しさをもって各国首脳の頭を悩ませ続けるでしょう。

このような世界情勢の下、日本の衆院選では自民党が圧勝し、安倍新政権が誕生しました。

アメリカの主要メディアやハーバードの学者たちは、(1)日本政治の右傾化(2)日米同盟の不安定性(3)日中関係の悪化に少なからぬ懸念を示しています。ジャパンパッシングだけでなく、国際社会において、日本がトラブルメーカー的な扱いをされる傾向が強まっていると感じています。

この現状になんの危機感も抱かないなら、その理由を逆に教えて!!

今週のひと言

“中道”と“ナショナリズム”が

国際政治を覆っています!

●加藤嘉一(かとう・よしかず)

日本語、中国語、英語でコラムを書く国際コラムニスト。1984年生まれ、静岡県出身。高校卒業後、単身で北京大学へ留学、同大学国際関係学院修士課程修了。2012年8月、約10年間暮らした中国を離れ渡米。現在はハーバード大学ケネディスクールフェロー。新天地で米中関係を研究しながら武者修行中。本連載をもとに書き下ろしを加えて再構成した最新刊『逆転思考 激動の中国、ぼくは駆け抜けた』(小社刊)が大好評発売中!