千葉県浦安市のノスタルジックタウン・猫実(ねこざね)をほっこり散歩

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東京都心からすぐの千葉県浦安市は、都会的でモダンなイメージがあるが、実はもともとは静かな漁師町。

山本周五郎の小説『青べか物語』の舞台としても知られる街だ。

今日は、今も昔ながらのぬくもりを感じるノスタルジックタウンなこの地を、ゆっくりと時間をかけて歩いてみたいと思う。

「べか舟」というものがある。

ノリを採る時に使った木造の舟で、幅が約84センチと狭いのが特徴だ。

もともとはひとりで櫂(かい)を漕(こ)いで乗る舟だったそうだが、後に発動機が取り付けられるようになった。

このべか舟、昔は浦安市でよく見られたものだという。

昭和39年(1964)に海の埋め立て事業が始まり、昭和44年(1969)に地下鉄東西線が開通するとたちまち都市化が進んだ浦安。

しかしもともとは、東京湾に面して旧江戸川や境川に囲まれたことより、陸の孤島とも言われ、ゆったり時が流れる漁師町であった。

その古き良き浦安の風情を今もたたえて伝統を残しているのが、市の中心である当代島(とうだいじま)、猫実(ねこざね)、堀江、北栄(きたざかえ)、富士見地区を含む元町地域だ。

それにしても気になるのが、猫実という地名。

なんともかわいい名前ではないか。

どうにもこうにも猫好きの心をくすぐる。

そこで、カメラ片手にふらっと、猫実、そしてそのお隣の堀江を散歩してみることにした。

駅を降りて南側に行けばもうそこは猫実だった。

表通りは近代的だが、一歩路地に入ればのんびりとした時間が流れている。

焼きはまぐり店やつくだ煮店がちらほら見えるのは、やはりかつて漁師町であったからなのか。

庚申塔(こうしんとう)や、昭和の時代をほうふつとさせる商店街の看板なども見られる。

てくてくと歩いていると、小さなカフェに出合った。

それが「猫実珈琲店」だ。

注文を受けてから豆をひき、丁寧にドリップするコーヒーの香りが店内に漂い、いるだけで心が温かくなる店。

読書をしながら静かにくつろぐ地元客の姿も見える。

こんな店では、コーヒーとともにオリジナルのお菓子を楽しみたい。

店のおすすめのひとつである、猫の顔と肉球をかたどった「猫実もなか」を頼めば、さらに気分が盛り上がってくる。

あまりにもかわいくて食べるのをちゅうちょしてしまうが、国産もち米や国産はちみつ、北海道のバターなどを使って、丁寧に手作りされた逸品なのだから、やはりしっかり味わってしかるべし! 猫好きの友人へのお土産にも最適だ。

その他、猫型のクッキーもある。

銭湯の煙突などを眺めながら歩いていくと境川に出た。

ここを超えると住所は堀江となる。

堀江に入るとすぐにフラワー商店街。

ここには、おいしい老舗そば店や海鮮丼の店などもあるようだ。

古い民家も多く、かつての漁師の屋敷なども残っている。

それらの屋敷は博物館として無料で見学できるとのことで、ふらっと中に入ってみるのもおすすめ。

日本の昔の木造建築の立派さに今更ながら驚かされるだろう。

再びフラワー商店街から境川に沿ってふらふら歩いていくと、釣り用の小舟が浮かぶ姿が見えた。

そのそばで、堤防に寄りかかり地元のおじいちゃん、おばあちゃんがぽかぽかと憩う姿はなんともほほえましい。

行き交う自転車も心なしかゆったり進んでいる気がしてくる。

そのままふらふら歩いていくと旧江戸川に出た。

川沿いには船宿が数々あるが、その中の一軒の看板に大きく「青べか物語」と書いてあった。

そう、このあたり一帯は、山本周五郎の小説『青べか物語』の舞台だったところなのだ。

作中、浦安は「百万坪から眺めると、浦粕(うらかす)町がどんなに小さく心ぼそげであるか」とされているので、今の浦安市とは異なる小さな町であったことが分かる。