経済活動の主体が市井の人々であるからこそ、身近なデータから景況感を読み解くことが可能だ。そうした「景気のジンクス」について、三井住友アセットマネジメントのチーフエコノミスト・宅森昭吉氏が解説する。

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 2012年後半、足下の景気は足踏み状態だった。たとえば9月の景気動向指数(速報値)では景気の現状を示す一致指数が6か月連続の下降となり、内閣府は基調判断を「下方への局面変化」に下方修正、「すでに景気後退局面に入った可能性が高い」と発表した。

 こうした景況感の悪化は、身近な事象にも表われている。たとえば、8月まで約半年にわたって減少していたもやしの売り上げが、9月に増加に転じた。もやしは価格が安く栄養もあるので、財布を引き締めたい人が手に取りやすい食材だ。景気悪化時に売り上げが増える傾向にあり、企業倒産による負債総額のデータとほぼ連動している。

 また、人気テレビ番組『笑点』(日本テレビ系)が、10月から部門トップの視聴率を獲得し続けていたのも景気弱含みを示すサインだ。『笑点』は、景気が悪くなると「暗い気分を笑いで吹き飛ばしたい」という人々の心をつかみ、視聴率が上がる傾向にある。日曜夕方に外出せず家でテレビを見ている人が多いのも、消費者マインドの悪化を示しているといえる。

 こうした景気の「ジンクス」は、これまで偶然とはいえない確率で景気動向や株価と一致しており、決してあなどれない「経済指標」のひとつだ。経済活動の主体はほかでもなく市井の人々であり、彼らのマインドが景気を動かしているからだ。

※マネーポスト2013年新春号