お客さまの「かわいい」のためにチームでブランドを育てていく

ビジネスパーソン研究FILE Vol.196

株式会社ワコール 岩井将也さん

営業担当として、売り上げ拡大につながる仕掛けを提案


■2年目に担当した一大プロモーションで、「FUN FUN WEEK(ファンファンウィーク)」のヒットに貢献

株式会社ワコールの新入社員研修が終わりに近づいたある日、岩井さんは、ドキドキしながら正式配属の辞令を待っていた。自分の名前がなかなか呼ばれない。これは、つまり関連会社への配属を意味していた。
「自分の名前が呼ばれて、株式会社ウンナナクールへの配属を聞いた瞬間、驚きのあまり一瞬返事ができませんでした。まさにやりたいと思っていた仕事ができる配属先だったので、うれしくて声が出なかったんです!」

インナーウェア、ナイトウェア、スポーツウェアなどの製造・販売を行うワコールには、百貨店さまや量販店さまなどに商品を卸す「卸」と、商業ビルなどに自社ブランドの店舗を出して販売・運営する「直営」という大きく分けて2通りの販売形態がある。直営ビジネスに携わりたかった岩井さんは、多くの直営店を展開する株式会社ウンナナクールへの配属で、入社早々その望みがかなったのだ。
「ワコールは卸がメインですが、僕は、お客さまに直に商品を提供できる直営店を運営する環境で、ビジネスの流れを知りたいと思っていたんです。でも『経験できるのは、10年後ぐらいかな』と思っていたので、本当に驚きました」

6月に配属された株式会社ウンナナクールは、2001年にワコールから誕生したキュートなインナーウェアのブランド「une nana cool(ウンナナクール)」を製造・販売している。当時の株式会社ウンナナクールは、ショップスタッフを含めて従業員が約350名、内勤者は10名という小さな組織。岩井さんは販売部で、結婚退職する先輩の仕事を引き継ぎ、販売促進のための各種ツールづくりや新店舗の開発に携わることになった。

そして10年1月、岩井さんに大きなチャンスが訪れた。「une nana cool」で新しく発表するランジェリー「FUN FUN WEEK(ファンファンウィーク)」を担当することになり、そのコンセプトメイキングや期間限定ショップの設営、チラシやDM、店内に飾るPOPの制作などを任されたのだ。多額の予算をかけた一大プロジェクトである。
「最初に思ったのは『FUN FUN WEEKを、時代を超えて愛されるロングセラー商品にしたい』ということ。とはいえ、すべてが初めての経験なので、まずはインナーウェアショップからアウターショップ、雑貨店までいろいろな店舗を見て回り、参考にしました」

そのうえで、広告会社やデザイン会社と打ち合わせを重ね、期間限定ショップがオープンしたときの店内POPの内容や設置場所、設置方法などが、商品コンセプトに合っているかを確認しながら、ショップづくりを進行。同時に、スタッフ選考や商品の納入タイミング、効果的な見せ方なども考え、決定していった。
「商品が完成し、店舗デザイナーやグラフィックデザイナーも決まっているのに、僕がショップの具現化で失敗するわけにはいかない、とにかく必死でした。同時進行で販促グッズの制作も行い、DMはティーザー広告(※1)にするなど、商品の登場感にも工夫を凝らしました」

10年2月25日に発売となった「FUN FUN WEEK」は、現在も好調な売れ行きを見せるロングセラーとなっている。
「そのころは毎日が慌ただし過ぎて、ヒットした実感が持てませんでした。売れたという喜びがこみ上げてきたのは、半年以上たってからでしょうか(笑)。ヒットした要因は、大々的に予算をかけてプロモ―ションしたこともありますが、本部だけでなく、販売を担当する社員やアルバイトも一緒になり、『この商品にかけるぞ!』と気持ちを一つにできたことが大きかったと思います。商品の良さには自信がありましたし、株式会社ウンナナクールの社運をかけた『FUN FUN WEEK』が軌道に乗り、皆で達成感を分かち合えたのは何よりの喜びでした」

(※1)=商品の全容を紹介せず、小出しにするなどして、あえて一部を隠すことで好奇心をあおる広告手法


■直営店を回り、売り上げ拡大につながるさまざまな対策を考え、スピーディに実践

11年10月、岩井さんは、今度は「LuncH(ランチ)」というブランドの営業を担当することになった。「LuncH」は、「une nana cool」から生まれたブランドで、インナーとしてだけでなくアウターとしても着こなせるレディス用とメンズ用を展開している。その全国16店舗の売り上げを拡大させることが、岩井さんの現在に至るミッションだ。直営店がテナントとして入っている商業ビルの営業担当者さまとの商談の中で、ほかのテナント店の状況を聞きながら、商品の認知度アップや売り上げ拡大につながる仕掛けを提案し、実施している。毎日のように直営店を回り、商品の動きやスタッフの状況を知ることも営業担当に欠かせない活動だ。

店長やエリアマネジャーの話を聞いて状況を把握し、売り上げ拡大のためのチラシ配布や催事売り場の展開などの販促活動からスタッフの補充まで、さまざまな対策をスピーディに考え、実践していく。その中で、岩井さんは「自分たちの動き次第で売り上げが変わる」ということを学んだ。
「重要なのが、ショップスタッフのモチベーション。皆で声をかけ合い、接客するのが基本ですが、チームワークがうまくとれていない店舗には、皆で腹を割って話し合うよう提案することもあります。言いたいことを言い合えると関係が改善され、翌日からの売り上げが明らかに変わってくるんです。また、ショップを訪問する際には、お客さまの視点で見るよう心がけています。『この並べ方では商品が見づらいな』と思えば、見やすく手に取りやすいように工夫したり、売り上げが好調な他店舗の参考事例をアドバイスしたり。人に働きかける難しさはありますが、個々の課題をスピーディに解決することで、成果が数字としてすぐに目に見える。これが営業の面白さであり、醍醐味ですね」

入社当時、男性上司から「男には女性のインナーウェアは販売できない。だったら、ほかに何ができるのかという思考を持て」というアドバイスを受けた。以来、岩井さんは、インナーウェアを数ある他社のヒット商品に置き換えて考えるなど、男性である自分にしか持てない視点や思考に基づいて仕事に取り組んでいる。
「将来の目標は、入社直後に経験した販売促進の仕事をあらためて担当すること。当時は営業現場の経験がありませんでしたが、店舗の状況やお客さまの感覚がわかる営業の仕事に携わった今の経験を生かして、もう一度挑戦したいんです。そうしたら、もっと効果的な広告の見せ方やプロモーション展開ができると確信しています」