新興国の新たな注目株。2013年はASEAN市場が熱い!
新興国株といえば中国やブラジルばかりが注目されがちだが、今年最もパフォーマンスがよかったのはタイやフィリピンなどのASEAN株。2015年に経済共同体が誕生すれば、さらに力強い成長が期待できそうだ。


BRICsの低迷とは裏腹にASEAN株式市場のインデックスは大幅上昇!

欧州債務問題などの影響で新興国を代表するBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の株式相場も低迷しているが、比較的好調なのがASEAN(東南アジア諸国連合)市場だ。

タイ証券取引所の資料によれば、2012年初めから10月5日までのインデックス上昇率(ドル換算)はフィリピンが31.7%、シンガポールが24.0%、マレーシアが12.5%、ベトナムが11.3%、インドネシアが7.6%といずれも上伸。同じ期間に中国株が4.9%下落したのとは対照的である。

なかでも特に好調なのがタイ株だ。同時期のインデックス上昇率は32.1 %とASEAN でトップ。昨年後半、大洪水の影響によってタイ経済は大幅にスローダウンしたが、今年に入って?V字回復〞を遂げたことが下支え要因のひとつとなった。「昨年10月には洪水の影響で、タイの主要産業である自動車の工場稼働率が30%台まで落ち込んでしまいましたが、現在では100%を超えました。昨年第4四半期に前年比マイナス9%となった経済成長率も、今年は5.5〜6.0%を見込んでいます。タイ経済は完全復活を遂げたと言っていいでしょう」と語るのは、タイ証券取引所チーフマーケティングオフィサーのパコーン・ピータタワチャイさん。

世界経済が厳しい状況の中、タイ経済が好調なのには理由がある。そのひとつは、製品の輸出先が多様化していること。「10年前まで、タイ製品の輸出先は日本や欧米が中心でしたが、現在ではASEAN諸国向けが約24%、中国向けが約12%と輸出先が多様化しています。そのため、債務問題に苦しむ欧州や日米向けの輸出が不調でも、リスク分散を図れるのです」(パコーンさん)

一方、「タイ政府は世界経済の悪化による輸出の不振を見越して、国内消費を拡大させる政策を積極的に推進しています」と語るのは、フィリップ証券でタイ駐在のピクン・ピッタヤイサラクンさん。

「タクシン政権時代に天然ゴム栽培の産業化を進めた結果、地方の人々の収入が大幅に増加しました。また現政権は最低賃金の引き上げに積極的に取り組んでいて、国内消費の活性化に結びついています」(ピクンさん)

消費の盛り上がりを反映して、今年は小売りセクターの株価が特に好調だという。

ピクンさんは、「今後はタイだけでなくASEAN全域に大きな経済発展チャンスがある」と指摘する。そのキーワードは2015年に予定されているAEC(ASEAN経済共同体)の実現だ。

ASEAN経済共同体の誕生で、2015年には人口6億人の巨大市場に!

「AECが実現すれば、約6億人の巨大市場が誕生します。国境を越えて?ヒト・モノ・カネ〞が行き交い、それぞれの国の経済成長力をさらに押し上げることになるでしょう」(ピクンさん)

今後特に大きな成長が期待されているのがミャンマー、ラオス、カンボジアの3カ国。他のASEANの国々に比べて1人当たりGDPが低く、ミャンマーにいたっては民主化が始まったばかりで、これからが本格的な飛躍の時代だ。

もっとも、ミャンマー、ラオス、カンボジアはまだ証券市場が整備されておらず、日本の個人投資家が資金を直接投入するのはきわめて難しい。

「そうした点を考慮して、タイ証券取引所は、ミャンマー、ラオス、カンボジアなどで事業投資を行なっているタイの持ち株会社の株式上場を受け入れることを検討しています。これが実現すれば、日本の個人投資家も高い成長性を秘めたタイの隣国に間接的な投資ができるようになるはずです」(パコーンさん)

また、「配当利回りがASEANの国々の中でも高く、PERが比較的低水準であることもタイ株の魅力です」とパコーンさん。

BRICs市場が低迷する中、中長期投資の選択肢のひとつとして興味深い存在かもしれない。

パコーン・ピータタワチャイ(PAKORN PEETATHAWATCHAI)
タイ証券取引所 チーフ・マーケティング・オフィサー

ボストン大学経済学博士号取得。タイ証券取引所に上場している株式、債券、デリバティブの商品を監督するとともに国内外の投資家のニーズに即した商品企画、開発を行なっている。


ピクン・ピッタヤイサラクン(PIKUN PHITYA-ISARAKUL)
フィリップ証券(タイ駐在)ファンドマネジャー

東京大学経済学部卒業、コロンビア大学ビジネススクール修了(MBA)。タイ・マーチャンド・パートナーズ証券(現・シンガポールのUOBケイヒアン証券)、サシン・マネジメント・コンサルティング、マッキンゼー・アンド・カンパニーバンコク事務所を経て現職。


この記事は「WEBネットマネー2013年1月号」に掲載されたものです。