課題だらけの今の日本では、従来どおりの枠組みの中で与野党が対立しているヒマなどないはずです。では、どんな新しいカタチをつくればいいのでしょうか?

皆さんが本稿を読んでいる頃には、日本の新政権の枠組みがおおかた決まっていることと思いますが、執筆段階では選挙戦の真っ最中です。先日、ある日本の有識者とお話ししたとき、非常に満足げな表情でこんなことを言われました。

「2012年は日本、アメリカ、中国をはじめ各国で政権交代、あるいは選挙が行なわれた。今後の世界情勢を占う意味で歴史的な年だった」

ぼくは激しい違和感を覚えました。いったい何を勘違いされているのでしょうか?

アメリカ大統領選や中国の権力移譲は、行なわれるべくして行なわれた。数年前から決まっていた政治的アジェンダです。日本の総選挙はまったく性質が異なる。こういうカタチを取らざるを得ない状況になってしまったのです。あたかも「世界の潮流に日本も乗っている」というような物言いは、感覚が麻痺していると言わざるを得ません。

小泉純一郎氏の退任以降、アメリカでも中国でも、「今誰が日本の首相を務めているのか」をほとんどの人は知りませんし、日本政府がどんな国家ビジョンを持っているのかも理解していません。まず、この危機的な状況を自覚しないといけない。日本は仮にも世界第3位の経済大国なのですから。

正直、ぼくも内閣総理大臣が何をしたいのかよくわかりません。多くの政党が立ち上がり、おのおのが独善的なことを言い放っている。論点、争点、焦点がぼやけて見える。日本人でさえ何が起こっているのかわからないのに、国際社会に理解してくれというほうが無理な話です。

残念ながら、新政権の枠組みが従来の常識の範疇に収まるようなものなら、為政者たちは選挙前に言っていたことの多くを実行には移せないでしょう。参議院選挙が来年夏に行なわれますから、日本の政治はまた政局に翻弄され続けるのでしょう。ジャパンパッシングが蔓延する危機感に直面する日々です。

今の日本の状況を根本的に打破するには、もうこれまでの政治の枠組みとはまったく違う形の「大連立」しかないとぼくは考えています。

立場をはっきりさせなければならないイシューは山ほどあります。消費税、原発、TPP、対中政策、日米同盟……。従来の枠組みでは、これらを国会で審議し、決めることは不可能に思えてなりません。

ならば、異なる政党でもイシューごとに協調し、国民に向かって議論そのものを発信していくしかない。原発ならこの党とこの党、消費税ならあの党とあの党、TPPならその党とその党……。結果的に、これまでとは違った次元の大連立という選択肢に行き着く可能性はある。米中の有識者や企業家たちも「大連立」とまでは言わなくても、「日本の国家としての戦略が知りたい」という願望を口にしています。

政党の都合ひとつで行政が滞り、国民の思考停止を促す。この悪循環は断ち切らなければならない。さもなければ、日本は国際社会のなかでますます埋没していってしまう。

まずやるべきことは、議論を国民の目に見える形で行なうことです。透明性こそが説得力。政治家がオープンな場で論議することで“顔”が見え、政治への理解も深まる。ぼくはアメリカ大統領選の選挙キャンペーンを見ながら、その重要性を実感しました。

議論の場は国会だけではない。テレビでもいいし、SNSを使ってもいい。聴衆の前という“リアル”とネットを通じた“バーチャル”の双方を貫くようなコミュニケーション空間をつくって、政治を身近な存在にしなければなりません。

日本に必要なのは、ダイナミックな議論の先にある「実行力」です。限界に達している国民の政治不信を今変えようとしないならいつ変えるというのか、逆に教えて!

今週のひとこと

日本に必要なのは、オープンな議論の先にある「実行力」です!

●加藤嘉一(かとう・よしかず)

日本語、中国語、英語でコラムを書く国際コラムニスト。1984年生まれ、静岡県出身。高校卒業後、単身で北京大学へ留学、同大学国際関係学院修士課程修 了。2012年8月、約10年間暮らした中国を離れ渡米。現在はハーバード大学ケネディスクールフェロー。新天地で米中関係を研究しながら武者修行中。本 連載をもとに書き下ろしを加えて再構成した最新刊『逆転思考 激動の中国、ぼくは駆け抜けた』(小社刊)が大好評発売中!