シンガポールのシンボル、マー・ライオンとマリーナ・ベイサンズ 撮影/和田佳久 

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節税目的の移住から変化!?

 海外移住といえば、資産家が所得税や相続税を軽減するために税金の低い国へ移住するというのが典型的なイメージだった。しかし、最近は節税目的だけではなく、起業家が海外での事業展開を拡大する拠点としての海外移住も一つのトレンドになりつつある。時流に乗った若手IT起業家が『アジア進出ならばシンガポール』という合言葉で、成功した先輩を頼り海外展開の為にシンガポール移住を行なっているという実態があるようだ。

 起業家のヨシオさん(仮名)は、日本で売上25億円規模のIT企業を経営していたが、アジア展開の為に企業売却を行い、家族を連れてシンガポールに移住してきた。ヨシオさんは、テニスコートやプール付きで150平方メートルの部屋に住み始めて数年、新規に立ち上げた現地ビジネスも既に黒字になってきている。

―何がきっかけでシンガポールに移住してきたのですか?海外移住を決意するほどの魅力はなんだったのでしょうか?

 シンガポール在住のITベンチャーキャピタリストのA氏を頼って、若手起業家の間で節税やアジアでの事業展開を目的にシンガポールに移住するのが数年前から流行り始めました。僕もその中の一人でした。

 IT起業家はウェブサイトで収益を上げられるので海外展開を行ないやすいといえます。海外展開を目指しているからこそ、日本にいるときからグローバルに働ける人材を求めていたのですが、日本ではグローバルな視点を持った人材はなかなか見つからないという問題がありました。

 海外展開を目指して英語ができる人材、グローバル志向の人材を求めて、どの海外がよいのかを考えていくとシンガポールに行きつきました。シンガポールは人件費が単純に安いというだけでなく、中国やベトナムよりも英語が通じるし、税率も低くて、治安がとてもいいという総合的な魅力があります。

 税率だけ見ると香港のほうが安いですが、アジア展開を見据えて人材獲得を考えるとシンガポールのほうが人件費と言語の問題を同時にクリアできます。

 昔は、低い税率と安価な人件費に魅力を感じて香港に行っていた資産家や起業家も、中国の人件費上昇に伴って今ではシンガポールに流れてきていますし、僕も中国の法人を売却してこちらに来ました。

大手志向の日本では人材確保が難しい

 日本での人材難というハードルに直面したことも後押ししたと思います。日本人は大手志向なので、ベンチャー企業にはなかなか良い人材が集まりません。実際に僕は従業員100人を超えてこないと、いい人材は雇えないという現実に頭を悩ませていました。

 ところが、シンガポールだと企業の規模ではなくてオファーの条件が良ければすぐに人材が集まるので、スピード経営が可能です。

 シンガポールは人材が流動的であるということに加えて、システムエンジニアの平均月収が4000〜5000ドル(30万〜40万円)とリーズナブル。

 マレーシアやインドネシアからある程度経験を積んだ技術者が高給を求めてシンガポールにやってくるので採用しやすいんです。解雇も21日前通知でよいので、雇用は企業に有利です。

 何よりも日本は採用にかかる費用も高いでしょ? こっちだと採用するのにお金がほとんどかからないんですよ。たったの199ドル(1万3000円程度)で、シンガポール、インドネシア、マレーシアなどの近隣諸国に一気に求人広告が出るので、応募も多いし、意欲の高い実力がある人材から採用していけます。

 外国人労働者は就労ビザがなくなる日から一カ月は滞在できますが、その間に転職できなければ強制退去という厳しい現実が待っているので、転職活動に関しては日本人とまったく意識が違います。

―海外展開としてのシンガポールということは、マーケットとしての魅力があるということでしょうか。

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