刷れるドル、刷れない金。金価格上昇はFRBの?お墨付き〞
金融緩和により、米ドルの価値は希薄化。一方の金は、陸の埋蔵量の多くは採掘が進み、残るは海底金鉱床。掘り出すには莫大なコストが必要で、容易に増産には踏み切れない。つまり、金価格とドルの価値の差はますます広がるばかりだ。


QE3が継続する限り、金価格は高値圏を維持。再び最高値更新へ

大局観で金市場の潮流を見ると、2011年は1900ドルを突破し、史上最高値更新の年。2012年は急激な上昇に対する調整。そして2013年は再び史上最高値更新の年とみる。金の本格的な下落が来るとすれば、早くて2014年後半以降、おそらく2015年ごろだろう。

QE3については「米国経済の改善傾向が定着するまで無期限に続ける」方針ゆえ、筆者は「QE∞(無限大)」と命名しているほど。その間、金の生産量は10%程度しか増えておらず、「刷れるドル、刷れない金」の価値の差はカイ離するばかりだ。このFRBの「有事対応の非伝統的金融政策」は2015年半ばまで続行とFOMCでも明言されており、それまでドル建て金価格が高値圏を維持することにFRB自らが暗黙のお墨付きを与えているようなものだ。

なお、2015年以降、市中に放出された過剰流動性が「回収」される出口戦略が実施されるときに米国は「金融の崖」に立たされ、金価格は下落傾向に転じるだろう。2013年は「財政の崖」問題も顕在化し、これ以上先送りできない瀬戸際に立たされる。そこで米国債格下げなど信用不安が再燃すれば、ストレートにドル安となり、金価格上昇は加速するだろう。

一方、欧州債務危機についてはどうか。筆者は南欧諸国に数回出向き、現地での空気を吸ってきたが、ギリシャ・スペイン問題は野球でいえば、いまだ7回表。少なくとも2015年くらいまでに解決できる話ではない。一言で言えば、ドイツ、ギリシャは見放せるが、スペインは大きすぎてつぶせない。ギリシャ抜きのユーロへ秩序ある移行を遂げるには数年かかる。その間、金市場には「安全性への逃避マネー」が流入するが、欧州リスクがピークに近づくと、流動性選好で金も現金化の売りの波にさらされるだろう。

金価格が下げたとき、特に1500〜1600ドル台になると、にわかに集中的に買いを入れ、?鉄板〞の下支え役となるのが新興国だ。筆者は上海金取引所や中国の大手銀行貴金属業務のアドバイザリ―を経験して実態を見てきたが、両国とも文化的に金選好度がきめて高い国民を10億人以上抱えているのだ。

2013年を読み解く急所!
金価格予測の勘所は4つ。?米国の「財政の崖」と「金融の崖」、?欧州債務危機、?中国・インドの新興国、?限定的な金生産量。以上を踏まえると、少なくとも2013年は金価格の高値圏維持は継続しそうだ。

豊島 逸夫(ITSUO TOSHIMA)
豊島逸夫事務所代表

一橋大学経済学部卒業。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)、スイス銀行、金の国際調査機関・ワールド ゴールド カウンシルの日韓地域代表を経て、2011年10月に豊島逸夫事務所を設立。金の第一人者として活躍。



この記事は「WEBネットマネー2013年1月号」に掲載されたものです。