中長期的には懸念は残るものの、目先は楽観論が広がる米国経済
先手を打って、金融緩和を打ち出す米国に対し、その効果への期待感からドルが買われている。「財政の崖」という問題もあるが、妥協点を見いだすことに困難はないはずだ。


QE3のネガティブなサプライズは消化済み。ドルへの信認が高まる

本稿は米国大統領選挙および両院議会選挙前の予想であることをご理解願いたい。

その米国大統領選挙だが、選挙結果が相場に大きな影響を及ぼすとは考えていない。すなわち、「財政の崖」の趨勢に最も影響を及ぼすだろうブッシュ減税については、オバマ、ロムニー両陣営の主張に根本的な差はなく、議会選挙の結果にかかわらず、妥協点を見いだす(減税延長)ことに大きな困難はないと思われる。

歳出削減については、議会選挙の結果次第で妥協点(削減の緩和)までの時間軸が不透明になる可能性は否定できないものの、足元の景況への悪影響を考慮して妥協点を探るものと思われる。むろん、妥協により中長期的な財政再建への懸念は残り、将来再び「財政の崖」から転がり落ちるリスクは否定できないが、短期的には米国経済への楽観論をもたらすと考える。

さて、2012年の為替相場の主役が欧州危機であったことは誰しもが認めるところだろう。ユーロは現在小康状態を保っているが、問題の根本的解決には程遠いこともまた、マーケットの共通認識だ。スペインの行く末はいまだ定まらず、鳴りを潜めているかに見えるギリシャのユーロ離脱も、まだその可能性は否定できない。

欧州経済の足どりはきわめて重く、債務問題解決のためには避けて通れない緊縮財政に対して、当該国民の理解が得られない現状を鑑みれば、ユーロを積極的に買うという選択肢はなかなか取りづらい。

一方、米国に目を向けると、相場はすでにQE3の発動によるドルへのネガティブインパクトを消化していると思われる。むしろ、世界中が金融緩和策をとる中、米国は一歩も二歩も先んじていることから、その効果への期待がドルへの評価につながりつつある。

実際、最近発表される米国の経済指標にはポジティブサプライズが多く、米国経済は力強さには欠けるものの、着実に回復の道をたどっているといえる。グローバル経済を牽引する米国経済が巡航速度を保つならば、ドルへの信認はいやが応でも高まるはずだ。

そしていつものことだが、日本発のファクターが相場を動かすことはない。政治不在という局面が長引くことにより、経済回復が遅れることがないことを祈るばかりである。

2013年を読み解く急所!
リスクオンでドルが買われるようなこれまでと異なる相場、つまりドル高スタートの年となりそうだ。一方、ユーロに関しては、欧州経済の足どりは重く、まだ積極的に買える状況にはない。

上田 眞理人(MARITO UEDA)
FXプライム専務取締役

1979年、東京大学法学部卒業後、東京銀行入行。ニューヨーク支店で為替ディーラー、本店為替資金部を経て、モルガン銀行東京支店へ移籍。以降、外資系銀行数社で外国為替部長などを歴任。2003年12月より現職。



この記事は「WEBネットマネー2013年1月号」に掲載されたものです。