ディズニーが危なかったころのお話




先日、ウォルト・ディズニー・カンパニーは『スター・ウォーズ』シリーズで有名なルーカス・フィルムを買収しました。ディズニーランドなどのテーマパークビジネスも成功しています。現在は盤石のように見えますが、倒産も疑われるような危機的な状況がかつてあったことをご存じでしょうか?





1927年にミッキーマウスが生まれ、彼は1928年公開の『蒸気船ウィリー』(劇場公開の短編アニメーション)から一躍人気ものになりました。



1937年には『白雪姫』、1940年には手塚治虫先生にも大きな影響を与えた『ファンタジア』が公開され、ディズニーの名声は不動のものになります。



しかし「おごれるのは久しからず」という通り、徐々にディズニーには「ディズニーが時代遅れ」というイメージがつき始めました。1970年代には「古めかしい」というイメージが定着していました。キャラクターは古く、また新しいものが出てこないというわけです。



もちろんディズニーも手をこまねいていたわけではありません。さまざまな作品で模索を続けますがあまりうまくいきませんでした。



実際その当時のディズニーの映画はいささか元気のないものです。タイトルを並べてみましょう。



■実写作品

『ベッドかざりとほうき』 1971年

『地球の頂上の島』 1973年

『続ラブ・バッグ』 1973年

『ラブ・バッグ/モンテカルロ大爆走』 1977年

『ピートとドラゴン』 1977年

『ブラックホール』 1979年

『ビバ!ラブ・バッグ』 1980年

『トロン』 1982年

『ネバークライウルフ』 1983年

『スプラッシュ』 1984年

『オズ』 1985年

『スリーメン&ベビー』 1987年

『ロジャー・ラビット』 1988年

『三銃士』 1993年



このようなラインアップで、あまり評価の高い作品は見られません。みなさんもあまり知らない作品が多いのではないでしょうか。



筆者などはバカなので、大丈夫なのかという映画『ブラックホール』など大好きなのですが、一般にはあまりヒットしませんでした。また「なんちゃってCG」を駆使した『トロン』にはコアなファンがつきましたが、やはり一般的にはヒットしませんでした(2010年にはトロン・レガシーという続編が作られています)。



■アニメーション作品

『おしゃれキャット』 1970年

『ロビン・フッド』 1973年

『くまのプーさん 完全保存版』 1977年

『ビアンカの大冒険』 1977年

『きつねと猟犬』 1981年

『コルドロン』 1985年

『オリビアちゃんの大冒険』 1986年

『オリバー ニューヨーク子猫ものがたり』 1988年

『リトル・マーメイド』 1989年

『ビアンカの大冒険 ゴールデン・イーグルを救え!』 1990年

『美女と野獣』 1991年

『アラジン』 1992年

『ライオン・キング』 1994年

『ポカホンタス』 1995年

『ノートルダムの鐘』 1996年

『ヘラクレス』 1997年

『ムーラン』 1998年

『ターザン』 1999年

『ファンタジア2000』 2000年

『ダイナソー』 2000年

『ラマになった王様』 2000年

『リロ・アンド・スティッチ』 2002年

『トレジャー・プラネット』 2002年

『ブラザー・ベア』 2003年

『ホーム・オン・ザ・レンジ にぎやか農場を救え!』 2004年

『チキン・リトル』 2005年

『ルイスと未来泥棒』 2007年

『ボルト』 2008年

『プリンセスと魔法のキス』 2009年

『塔の上のラプンツェル』 2010年

『くまのプーさん』 2011年

『シュガー・ラッシュ』 2012年



こちらは1970年〜2012年のアニメーション作品です。人気のある新しいコンテンツを作ろうと試行錯誤のあとが見られます。



■独裁者が登場!



1984年にマイケル・アイズナーというすご腕の実業家が会長兼最高経営責任者(CEO)でに就任します。この時、ディズニーの財務状況はとても悪く、危機的な状況に陥っていたと言います。



アイズナーさんはとてもワンマンな人で、あちらこちらであつれきを生みましたが、映画事業、テーマパーク事業を立て直し、ディズニーの売り上げを倍にしました。剛腕経営者だったのです。



■危機を救ったのはピクサーのコンテンツ!



80年代〜90年代のディズニーの映画の不評を救ったのはピクサー・アニメーション・スタジオでした。ピクサーは故スティーブ・ジョブズが、ジョージ・ルーカスのILM社(インダストリアル・ライト&マジック)のCG部隊を買い取ったのがそもそもの始まりです。



最初の作品1995年の『トイ・ストーリー』はディズニーとの共同製作による映画でしたが、これが全世界で爆発的なヒット。ピクサーの名前を高めるとともに、ディズニーに新しいコンテンツをもたらしました。



■ピクサーの作品

『トイ・ストーリー』 1995年

『バグズ・ライフ』 1998年

『トイ・ストーリー2』 1999年

『モンスターズ・インク』 2001年

『ファインディング・ニモ』 2003年

『Mr.インクレディブル』 2004年

『カーズ』 2006年

『レミーのおいしいレストラン』 2007年

『WALL・E/ウォーリー』 2008年

『カールじいさんの空飛ぶ家』 2009年

『トイ・ストーリー3』 2010年

『カーズ2』 2011年

『メリダとおそろしの森』 2012年



2006年にはピクサーがディズニーに買収されましたが、上記は2012年までのピクサーの作品リストです。ピクサーがいかにディズニーに貢献しているかがよくわかると思います。2000年代にまたディズニーの業績が悪くなり、2004年には業績悪化を理由に前述のマイケル・アイズナーが解雇になりました。アイズナーさんはその後、縁あってテレビの司会者業などもやってます(笑)。



ピクサーの出自はそもそもルーカルの設立したデジタル技術スタジオILMです。そのピクサーがディズニーの危機を救い、ディズニーがピクサーを買い、そしてルーカル・フィルムも買収――ということになったわけです。なんだか時代が3周くらい回ったような気がしませんか?



■ディズニーの歴史はコンテンツの歴史



ディズニーの沿革を見てると、やはりコンテンツの歴史だということがわかります。1920年代に『ラフ オグラム スタジオ』が倒産し、ディズニー・ブラザーズ社を設立したディズニーを救ったのは、新キャラクター・ミッキーマウスでした。



その後のアニメーションで生まれたキャラクターたちが、ディズニーランドを生む力になりました。70年代-80年代に停滞の時代がありましたが、それを『ウッディ』や『バズ』といった新顔のキャラクターたちが救ったのです。



この列に、今、『ルーク・スカイウォーカー』や『ダース・ベイダー』が加わろうとしています。





(高橋モータース@dcp)