地球を襲う太陽のスーパーフレア






地球からもっとも近い恒星である「太陽」。地球上に生命が誕生したのも、その生命が維持されているのも太陽からの恵みのおかげです。



しかし、もしその太陽が地球に襲い掛かってくる可能性があるとしたら…。今回は、そんな太陽のもう1つの姿に迫ってみたいと思います。





■ 太陽表面で起こる爆発



日ごろなかなか実感する機会はないですが、太陽では実にさまざまな活動が起こっています。



その中でも、太陽の大気中に蓄えられた磁場のエネルギーがもととなって、太陽表面で起こる巨大な爆発を「太陽フレア」といいます。これは、太陽系で起こっている爆発現象の中でも最大のもので、「太陽面爆発」とも呼ばれています。



この太陽フレアが起こると、大量の電磁波(エックス線・ガンマ線のほか高いエネルギーを持った荷電粒子)が発生します。

その後、宇宙空間へ飛び出していった電磁波は「太陽嵐」と呼ばれる現象を引き起こします。



太陽嵐は、地球の周りを回っている人工衛星に電波障害を引き起こしたり、さらには地球を取り巻く電離層を乱したりします。



電離層が乱されると、通常は反射するはずの短波を吸収してしまうため、それらを利用している航空・船舶無線やアマチュア無線などの長距離通信が使えなくなってしまうことがあります。これを「デリンジャー現象」と呼んでいます。



実際、2003年には太陽フレアが頻繁に発生したことで、人工衛星や地上の航空・船舶無線の通信などに多くの影響を与えました。



また、それより以前の1989年には、太陽フレアによる激しい太陽嵐によって地磁気に変動が起き、カナダのケベック州では地上の送電線に想定外の誘導電流が流れた結果、発電所の送電システムに障害が発生し、9時間もの大停電が起きたこともあります。





■ 「スーパーフレア」と「太陽フレア」



「スーパーフレア」とは、ここまで見てきた「太陽フレア」の数100倍〜1,000倍もの規模の爆発で、水素爆弾に例えるとおよそ数十万〜数千万個分のエネルギーを持ったものだとされています。



スーパーフレアが起きるには、一定の条件が必要だとされ、太陽に似た恒星の場合では、その星の近くに「スーパージュピター」と呼ばれるタイプの巨大なガス惑星が回っていることが条件であると考えられてきました。



そのため、これまで太陽では起きないと言われていました。しかし、最近の研究によって、そのような巨大ガス惑星を持たない恒星であってもスーパーフレアが確認されたことで、太陽でもこのスーパーフレアが起きる可能性が示されました。





■ スーパーフレアが地球に与える影響



先ほど、太陽フレアによる電磁波が地球に届き、通信障害や大停電が起こったということを紹介しましたが、もしも、その数100倍〜1,000倍も威力があるスーパーフレアが起きたりしたら、地球はいったいどんな影響を受けるのでしょうか。



一番の影響としては、スーパーフレアによって発生した強力な電磁波や電子などが地球に降り注ぐことにより、通信障害以外にもっと身近なところで電子機器が誤作動を起こすなどの可能性が懸念されています。



なぁんだ、その程度か……と思うかもしれません。



けれども、パソコンや携帯電話といった通信システムのみならず、発電所や交通機関、さらには人工衛星や軍事システムなど、あらゆるものが電子機器で制御されているこの現代社会では、それによってどのような事態が起こるのか、まったく予想がつきません。



万が一、地球規模での大停電や通信障害が起これば、復旧までに相当な時間と費用がかかるため、世界経済に与える損失は計り知れないものとなるでしょう。





■ まとめ



今回は太陽でも起こる可能性があるとされる「スーパーフレア」について紹介しました。



地球の長い歴史の中では、何度か起こったことかもしれませんが、文明がより高度になって、電子機器が日常生活にあふれている現代社会においては、まったく予想していないような影響が出るかもしれません。



とはいえ、太陽でこのような巨大なスーパーフレアが起こるというのはあくまで1つの学説に過ぎず、過去に太陽でスーパーフレアが発生したという痕跡も見つかっていません。



むやみに過剰反応することなく、今後の研究によって発生の仕組みや可能性・影響範囲などが解明されることを期待しましょう。





(文/TERA)



●著者プロフィール

小さいころから自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。