春の日銀新総裁誕生で円安反転→株価回復基調へ
日銀新総裁には、総裁の座を前回取り損ねた財務省が周到な根回しにより、財務官僚OBを押し込むと予想される。候補者と目される財務官僚OB数人は、すでに「量的緩和」や「金融緩和の強化」を声高に主張している。


2013年の日本経済のカギはただひとつ、日銀の金融政策である。デフレと超円高を容認してきた白川方明総裁が4月に任期を終えて退き、後任に大胆な量的緩和政策を実行する人物が選ばれれば、円相場は次第に円安に反転し、株価は回復基調に転じるだろう。

となると焦点は、ポスト白川総裁である。日銀総裁は内閣が任命するが、衆参両院の同意を得なければならない。前回人事の場合、当時、参院多数を占める民主党の小沢一郎代表が麻生太郎内閣指命の武藤敏郎日銀副総裁を「財務官僚上がり」として拒否した。すると、麻生政権は別の財務次官OB、田波耕治氏を重ねて指命、民主党は頑強に承認しない。自公政権は2008年3月に副総裁に就任していた白川氏を総裁に昇格させる羽目になった。

今回は逆に自民党が参院の主導権を握っている。衆院解散・総選挙が4月以降にずれ込む場合、野田政権が任命した総裁を自民党が拒絶する構図が予想されるが、前回ほど調整に難航はしないだろう。というのは、日銀総裁の座を取り損ねた財務省が周到な根回しにより、野田佳彦首相と安倍晋三自民党総裁の了解を取り付けて財務官僚OBを押し込むと予想されるからである。

民主党内では前原誠司経済財政担当相をはじめ、日銀の金融緩和を求める声が強い。それを意識して、候補者と目される財務官僚OB数人が「量的緩和」や「金融緩和の強化」を声高に主張している。

問題は、「新総裁がどこまで鮮明な量的緩和政策を打ち出せるか」。白川日銀路線の場合、小出しに国債など日銀資産を買い上げ、資金を市場に流したが、脱デフレ、超円高是正のメッセージ性が弱く、効果が出ないままだった。

この局面を打開するためには、首相の役割がかつてなく大きい。安倍政権が早期に成立すれば、政府と日銀の間で政策協定が結ばれ、共通のインフレ目標を設定し、明確な円高是正の道筋が示されると期待できる。安倍氏は過去、2年以上の間、日銀法改正を含めて金融に重大な関心を寄せ、政治家としては数少ないほどの金融政策通になっている。

気掛かりなのは、ライバルでもある石破茂幹事長の動向で、石破氏は脱デフレをさほど気にせず、日銀の現行政策に融和するきらいがある。安倍総裁は石破氏の同調を得る力量を発揮する必要がある。

2013年を読み解く急所!
政治がどこまで日銀政策を変えられるか次第だが、株価は春から次第に力強さを増す。日経平均のレンジは安値は2013年4月の9000円近辺。高値は12月の1万4000円あたりを期待したい。

田村 秀男(HIDEO TAMURA)
産経新聞社特別記者・編集委員兼論説委員

日本経済新聞ワシントン特派員、日本経済新聞ワシントン特派員、日経香港支局長、編集委員などを経て現職。『財務省「オオカミ少年論」』など著書多数。



この記事は「WEBネットマネー2013年1月号」に掲載されたものです。