かつてない新しいゲームをつくりたい

ビジネスパーソン研究FILE Vol.195

株式会社Cygames 三沢宏行さん

ソーシャルゲーム『神撃のバハムート』のプランナーとして活躍


■既存のソーシャルゲームを超える新たな挑戦! プランナーとして徹底的にビジュアルにこだわった

かつてない美しいビジュアルが特徴のカードバトル型ソーシャルゲーム『神撃のバハムート』。国内のみならず、海外でも高い評価を受け、GooglePlay、App Storeといったネットストアの売り上げランキングで全米1位を獲得している大人気ゲームだ。立ち上げ時期からプランナーとして携わってきた三沢さんは、幼いころからゲームが大好きだったという。
「僕の世代は、ゲームの進化とともに歩んできたとも言えますから、僕自身、子どものころからあらゆるゲーム機で遊んできました。自らゲームをつくって遊んでいたくらいのゲーム好きでしたね。就職活動の時、あらためて『自分でモノをつくる仕事がしたい』と考え、大好きなゲーム制作に携われる仕事を選びました」

現社に入社するまでに、モバイルアプリのゲームや、家庭用ゲーム機に向けたコンシューマーゲームなどを手がける3社のゲーム制作会社を経て、プランナーやプロジェクトマネージャーとしての経験を積んできたという。
「この会社に転職したのは、社長に『会社を立ち上げるから一緒にやってくれないか』と誘われたことがきっかけでした。前職で一緒に働いた時、ユーザーに楽しんでもらう方法を考え続けていく姿勢に共感しましたし、結果も出す人だと知っていたので、『この人と一緒なら、間違いなく面白いことができる』と思ったんです」

三沢さんが入社したのは、会社立ち上げから1カ月後のこと。今後の社運を懸けたソーシャルゲーム『神撃のバハムート』のプランナーとして携わることになったが、まず、その新しさに驚いたという。
「ビジュアルをはじめ、すべてのクオリティーにこだわっているところに驚きました。僕が入社した時にはすでに半分くらいの仕様書ができ上がっていましたが、ソーシャルゲームでここまでクオリティーにこだわった作品を見たことはなかった!『これはスゴいことになるぞ』とワクワクしました」

入社直後に手がけたのは、ソーシャルでほかのユーザーとチームをつくる「騎士団」のシステムと、仲間と協力して一匹のモンスターを倒すイベント「レイドバトル」の設計。どんな画面設定にするか、体力パラメータの表示方法やボタンの場所まで細かに指示する仕様書を作成した。もともと「ヒマさえあれば仕様書を書いていたい」というくらいゲーム制作が大好きだという三沢さんにとっては、非常に楽しい時間だったという。
「何もないところから手探りで進み、『こういう設定ならこのシステムが使えるな』とか、『この画面では、こんなボタンが必要』とか、『このキャラを持ってきたら面白いイベントができる』とか、いくつもの発見を重ねていく時間は本当に楽しいですね。そして、そうした作業の果てに『あっ、これまでの要素がつながった!』というひとつの完成形へとたどり着く。その瞬間には、何とも言えない気持ち良さと達成感があります。休日にもウズウズしてしまい、まだ使うかどうかわからない部分の仕様書まで書いていましたね」

しかし、仕様書作成が終わった後、担当パートのフラッシュ(動画やゲームなどを扱うための規格)アニメーションのディレクションを手がけることになり、早くも壁にぶつかった。
「バハムートはカード画面のクオリティーが非常に高いため、それに見劣りしないアニメーションをつくらねばなりませんでした。当時のフラッシュでは容量の軽いベクターというパスデータを使うのですが、バハムートの場合、そのやり方では、アニメーション全体の演出がカード画面のクオリティーに負けてしまう。まずは一枚絵の画像で背景をたくさんつくる方法を考えましたが、これだとデータの容量が重くなり、動きも悪くなってしまうので、そこをどうクリアするかが非常に難しかったですね。また、画面の美しさのみを追求していては、ユーザーに必要な文字情報が伝わらなくなってしまいますし、カードを出すタイミングの気持ち良さなども重要。一つひとつ、細かい部分までこだわっていきました」

三沢さんは手本になりそうなフラッシュ例をチェックしながら学び、パートナーのデザイナーと一緒に1フレームずつ動かしながらの細かい作業を続けた。
「最初のうちは『この文字の大きさでは見にくい』『ボタンの位置が使いづらい』など、一方的に指示を出していましたが、それではデザイナーにも嫌がられてしまう。ただ押し付けるのではなく、『こうしたらどうなりますか?』と一緒に試し、うまくいったら一緒に喜び、お互いに学びながら成長できるようなコミュニケーションを心がけました」

自分自身としては、最後まで「これでいいのか。もっと違うやり方でさらなるクオリティーの追求ができたのではないか」と悩んだが、リリース後は素晴らしい反響だったという。
「一緒にゲームをリリースしたパートナー企業の方からも『フラッシュのクオリティーが非常に高く、素晴らしい』という評価をもらうことができました。どうやっていくべきか迷い続けていただけに、評価されたことが本当にうれしかったですね!」


■プランナーをまとめるリーダーとなり、人を動かす難しさを実感。多様な価値観を受け入れて成長

入社3カ月目、アニメーション制作をなんとか乗り越えた三沢さんは、バハムートチームのプランナーやエンジニアの間でコミュニケーションがうまくいっていないことに気づく。
「それまでは各自で分業していましたが、全体の情報共有ができていないため、プランナーからエンジニアに新しい情報が伝わっていなかったり、変更部分について聞くべき相手が誰なのかわからなかったりすることが多くあり、行き違いによる無駄が少なくなかった。『このままだとチーム全体がうまくいかなくなる!』と思い、プランナーのみが責任を負うのではなく、現場全体でやり方を考えていかねばならないと考えました」

そこで、三沢さんはプランナー全体をまとめるリーダー役を担当することに。エンジニアチーム、デザイナーチームのリーダーと進捗状況や変更箇所などの情報を共有して各プランナーに伝える一方、プランナーへの仕事の割り振りの決定を手がけたり、それぞれの作業における報告・連絡・相談の窓口としても活躍。情報の交通整理を行うことで現場をスムーズに動かせるようになったという。
「自分自身の担当する作業を進めながら、全体の進行を把握したり、指示を与えたりするなどの業務をこなしていく大変さはありましたが、行き違いのストレスがなくなったことで、みんなで完成に向かってひたすら突き進むことができましたね。ゲームのリリース直後には、想定外の利用者数にサーバがダウンするというトラブルも発生しましたが、みんなで会社に泊まり込み、夢中で『マズい!』『どうする!?』『こうしよう!』とワイワイやりながら乗り切った。すごく楽しくて充実感があったし、チームに強い団結力が生まれましたね」

ゲームのリリース後、三沢さんはそのままプランナーチームのリーダーとして、プロデューサーからのイベントコンセプトを仕様書に落とし込むことから、プランナーへの仕事の割り振り、全体の作業の進捗の管理まで、開発チームの取りまとめを手がけていった。
「プロジェクトが進むにつれ、プランナーの人数も増えていきました。が、人によってモチベーションも性格も違いましたし、それぞれの経験値も違った。仕事を振るくらいなら自分がやった方が早いと思うケースもあったし、忙しさからモチベーションが下がってしまう人も出てきた」

リーダーの自分に責任があるので、必ず解決しなければ。そう考えた三沢さんは、チームビルディングやコーチングの本を読んだり、先輩に相談するなどした後、プランナー全員と面談して「今、何に困っていて、今後どうしたいのか」を率直に聞こうと考えた。
「じっくり話を聞いたことで、仕事や働き方に対する考え方はそれぞれに違うのだと気づかされました。この会社でゲーム制作のキャリアを積みたい人、バハムートが大好きな人、仕事は仕事としてプライベートを大事にしたい人など、本当にさまざまで。僕自身は、一日中ずっとゲームのことを考えていたいタイプですが、そうじゃない人もいる。『プロジェクトを回していくためには、みんな指示通りに頑張るのが当たり前』と思っていましたが、各自の考え方を理解し、それぞれに合わせて仕事を振ったり、励ましたりしていこうという考えに変化しましたね。仕事の内容そのものも、細かい指示をどんどん与えるのではなく、おおまかな状態から任せていくスタイルを取り、そこにやりがいを見いだしてもらおうと考えました」

以来、チームのモチベーションも復活し、みんなが前向きに頑張ってくれるようになったという。
「リーダーとして、チーム全体が効率良く力を発揮できる環境を整えることに注力しています。規模が大きくなった現在、プランナーの人数も当時に比べて増えましたが、それぞれに得意分野も仕事の進め方も違う。全員がやりがいを見失うことがないように配慮していきたいと思っていますし、これまでに自分が積み重ねたゲーム作成のノウハウをしっかり伝えていきたいですね」

三沢さんは、「ソーシャルゲームに携わる面白さは、『つくり続けていけるところ』にある」と話す。
「コンシューマーゲームは、一度完成させてしまえばそこで終わりですが、ソーシャルゲームでは、ユーザーの反応を見て、次のイベントに反映させていくことができる。やりたいことが次から次へと出てきます。砂場を与えられた子どものように、ずっと遊び続けていられるんですから、毎日楽しいですね!」

これまでに「ファミ通アワード2011」ソーシャルゲーム ルーキー賞、「Mobage Award 2011 Platinum Prize」といった数々の賞を受賞してきたこのゲームだが、三沢さんは「まだまだこれでは満足しない」と話す。
「これまでにないような、他社が追いつけないほどのスゴいものをつくりたい! 今後は、バハムートを超えるような新しいゲームをつくることが目標ですね。そのためにも、まずは自分の時間をつくりたい。みんなの力を借りながら、組織をより効率的に動かしていく方法を探していきたいと思います」