地獄の「階段上り下り」トレーニングで師匠越え

 40代になっての賞金王初戴冠は、男子ゴルフツアー史上初の快挙。アスリートとしては下り坂にさしかかる年齢で、藤田寛之(43)はなぜ花開いたのか。

 今季ツアー最終戦「日本シリーズJT杯」(11月29日〜12月2日)。初日から首位を守り続けた藤田は、ぶっちぎりの優勝で賞金王を確定させた。これまでのツアー全15勝のうち9勝が、40歳を過ぎてからのもの。ここ3年の賞金ランクも5位、2位、5位と上位で安定している。本誌読者の中年ゴルファーは、いったい何をしたらそうなるのか、興味津々だろう。「月刊ゴルフレビュー」編集主幹でゴルフジャーナリストの宮崎紘一氏が解説する。

「原動力は、体格と才能に恵まれなかったこと。丸山茂樹は学生時代から頭角を現し、天才ゴルファーと騒がれた。そんな鳴り物入り選手と比べ、藤田にはコンプレックスがありました」

 身長168センチ、体重70キロ。ゴルファーとしては非力であり、大きなハンディだった。宮崎氏が続ける。

「体が小さく飛距離がないのを補うには、体幹を太くする必要がある。体幹が太くなれば軸がしっかりするから、スイングも安定する。そのトレーニングを効率的に実践したのです」

 独自の肉体改造をするため、藤田は所属する葛城ゴルフクラブ(静岡県)に自分専用のジムを作った。トレーナーと研究を重ね、ランニング、体の柔軟性を高めるストレッチもやった。その一方で、ゴルファーにはタブーとされるウエートトレにも精力的に取り組んだ。

「飛ばそうとして上半身の筋力アップだけをやると、上半身に頼る打ち方になって体のバランスが崩れてしまう。ゴルフは下半身が大事。藤田は土台をガッチリさせて、回転させるゴルファーとしての真の体作りを理解していた」(宮崎氏)

 これを推し進めた原点は、97年のサントリーオープン。180センチを超える長身でパワーゴルフを展開する全盛期のジャンボ尾崎と最後まで競り合い、ツアー初優勝を果たしたのである。ゴルフ担当記者が言う。

「この試合で自分みたいな選手でも勝てると自信をつけた。かつて身長160センチの杉原輝雄が長年トップの座にいたのは、トレーニングのたまもの。杉原は神社の何百段という階段の上り下りをずっとやって足腰を鍛えていましたが、実は藤田もこの杉原式階段上り下りをやっていたのです」

 こうした肉体改造法を、40歳手前になってより効率的に改善した結果が、賞金王。師匠・芹沢信雄は「私が師匠だなんておこがましい」と称賛した。

「少なくともあと数年は藤田時代が続くでしょう。いや、今が全盛じゃないですか。おごることもまったくない男だし」(宮崎氏)

 遅咲きの「中年の星」は来年、2度目の米マスターズに挑む。