経済キャスター・鈴木ともみが惚れた、”珠玉”の一冊 (26) ”ミスター円”榊原英資氏が語った--『鎖国モード』の日本だから生きのびる!

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経済キャスターの鈴木ともみです。

今回は、榊原英資さんの新著『鎖国シンドローム 「内向き」日本だから生きのびる』(集英社)をご紹介します。

政治・経済、社会、明日の日本を担う若者までもが「内向き」だといわれる昨今の日本。

停滞、迷走する日本の将来はこのままで本当に大丈夫なのか? と皆が不安を抱くなか、同書は、これからの日本のあるべき姿をしっかりと描き出しています。

日本が「鎖国」モードに入るということは、決して後ろ向きな選択ではなく、むしろ前向きな方向性でもあるのです。

凝り固まった私たちの常識を覆し、日本人の誇るべき資質を再認識させてくれる珠玉の一冊です。

鈴木 : 「失われた10年、20年」と言われ、停滞、迷走する政治・経済、社会が慢性化し、誰もが不安を抱いてしまう時代が続いていますが、同書を読むと、とても穏やかな気持ちになりますね。

「鎖国」という言葉からは、どうしても閉鎖的で保守的なイメージを持ってしまいますが、実はこれまで日本は歴史的に江戸時代だけでなく、何度も「鎖国」モードを経験しているということを知りました。

榊原 : そうなのです。

いわゆる鎖国時代と言うと、皆さん江戸時代を思い浮かべますが、必ずしもそれだけではありません。

日本の過去2000年の歴史においては「鎖国的な時代」というものが、何度も繰り返されており、主に4つの時代がありました。

鈴木 : その「鎖国時代」と反対に「開国時代」というのがあって、日本は開国と鎖国を繰り返してきたという分析は、とても興味深いものです。

榊原 : 日本の歴史を長期的な視野で眺めると、「開国時代」と「鎖国時代」を繰り返すことで、社会が変化し、磨かれ、成長してきたということがわかります。

開国時代に海外の最新情報や外来文化を取り入れ、鎖国時代に、それらの情報をもとに、独自の解釈や改良を加えて、日本特有の社会やシステム、文化を構築します。

そして、その現象はある意味「日本化」と呼んで良いものだと言えるのです。

鈴木 : そもそも、日本特有の「鎖国時代」が繰り返し訪れる背景には、何があるのでしょうか?榊原 : そこには、日本人特有の精神性「鎖国メンタリティ」が存在します。

この「鎖国メンタリティ」には状況や環境によって強弱があり、弱まる時代には海外を意識して開国モードになる、強まる時代には海外との交流が減り、内向きモードになります。

鈴木 : 他の国には見受けられない、その日本人特有の精神性である「鎖国メンタリティ」は、日本という国が、一度も外国に征服されたことがないという歴史に起因するものだそうですね。

鈴木 : 日本は、鎖国の時代に社会や文化を熟成させるモデルができ上がったわけですね。

榊原 : そうなのです。

「鎖国メンタリティ」は、新たな拡大や成長を求めるというよりは、「内向き」な成熟を求めるものです。

それにより、日本は安定的で幸福な社会を形成することができました。

鈴木 : 一方で、その「鎖国メンタリティ」が及ぼす弊害についてもご指摘されています。

企業ガバナンスと「鎖国メンタリティ」の関連性について、オリンパス事件や大王製紙事件などが起こった原因には、企業の隠蔽体質があると分析されていますね。

鈴木 : 1990年代以降の急速なグローバル化に、日本特有の鎖国メンタリティがそぐわない一面もあるわけですね。

その1990年代に日本は「失われた10年、20年」と呼ばれる時代に入っていきます。

榊原 : 90年代は、バブルの崩壊、金融システムの崩壊と長期的な二つの危機に直面しました。

その状況下で、大型の公共事業対策などで景気を下支えしましたし、私も直接政策対応に関わっていましたが、95年4月には1ドル=80円を切っていた為替レートも日米の協調介入により9月には100円台に戻したのです。