小麦の輸出入を仲介。顧客と信頼関係を作り貿易を円滑に進める

WOMAN’S CAREER Vol.100

双日株式会社 松岡有希子さん

【活躍する女性社員】総合商社で、小麦の輸出入を仲介する松岡さんの仕事とは?


■顧客から信頼と満足を得て、「ありがとう」と言われることがやりがい

就職活動では総合職を志望していたが、OG訪問した社員の「事務職でもやる気次第でどんどん仕事をさせてもらえる」との言葉や選考で接した社員の雰囲気が決め手となり、事務職として入社した松岡さん。小麦の輸出入や三国間取引(※)を扱う部門に配属され、取引の会計処理や通関書類の作成など、サポート業務を担当した。
※海外の輸出者と海外の輸入者との貿易を第三国の事業者が取り次ぐ取引のこと。

「いつか総合職に転換したい」と考えていた松岡さんの思いが実現したのは入社6年目。5年目に出産した長男の子育てと仕事との両立にめどがたち、総合職への転換を希望したところ社内審査に合格。総合職として引き続き小麦事業に携わることとなり、小麦の三国間取引と開発途上国向けの食糧援助案件を担当した。

そして、「手始めに」と渡された仕事を通じて、松岡さんは総合職としての責任を実感することに。任されたのは、日本政府によるモンゴルへの小麦援助案件。小麦の調達からモンゴル政府への納入までを担当する企業を決める入札から、落札後の契約履行までを一人で担当した。
「入札条件などがまとめられた英文資料を読み込むことから始め、上司と擦り合わせながらも手探りで価格や条件を決定して入札書類を提出したところ、落札することができました。しかし、大変だったのはその後です。生産地から小麦が搬出されないなど、トラブルが多発したのです。暗中模索の状態でしたが、『自分が何とかしなきゃ』という思いで上司に相談しながら社内外の関係者に対応を問い合わせて一つひとつ調整しました。そして、最終的にはモンゴルに行って現地のスタッフや所轄官庁の担当者と調整することに。なかなか話がまとまらず、3日間の滞在予定が10日間にまで延びましたが、最終的には契約内容を少し修正し、無事に納入を終えることができました。総合職の大変さを実感するとともに、『上司に相談はするけれども、責任を負うのは自分だ』と意識が変化した仕事でした」

一方で、総合職として経験を積む中でキャリアパスや子育てとの両立に迷いも生じてきていたという。
「総合職にはジョブローテーションなどにより多様な経験を積むことが求められるため、今後のキャリアプランを具体的に考えていかなければなりませんでした。しかし、チャンスがあれば赴任したいと思っていた海外駐在も子どもが小さいために難しい状況で、上司の悩みのタネになってはいないかと悶々(もんもん)としていました。また、長男を出産した際に担当医からは2人目を産むときは早期入院が必要だとも言われていたため、仕事をしたいけれど2人目もほしいという思いも入り交じり、悩んでいました」

そんなときに2人目を妊娠。松岡さんは考えた末に退職し、約1年半、主婦業に専念した。その後、再び働きたいと仕事を探していたところ、以前の所属部署の社員に誘われて社会人11年目に派遣社員として復帰。小麦の三国間取引のサポート業務を担当し、15年目には契約社員に、翌16年目には総合職になった。

こうして現在は、東南アジアの複数の製粉会社向けの小麦の三国間取引とそれに伴うファイナンス(資金調達)業務や、日本国内の製粉会社向けの小麦の輸入業務、チームの予算や決算のとりまとめなどを担当。三国間取引においては、サプライヤーであるアメリカ、カナダ、オーストラリアなどの小麦販売企業とバイヤーである製粉会社の間に入って価格や数量などの契約交渉から配船、書類手続き、代金の決済に至るオペレーションのすべてをとりまとめ、貿易を円滑に進める役割を担っている。
「例えば、料金や輸送スケジュールなどの交渉・調整時には双方の現場を把握した上で根拠を持って説明・調整し、サプライヤーとバイヤーとの間で意見が対立したときには私たちがうまく仲裁することで取引がうまく機能します。サプライヤーからも、バイヤーからも何かあれば相談してもらえる関係ができていなければ、長く商売をさせていただくことはできませんから、日々のオペレーションに地道に取り組み、双方から信頼を得られるよう心がけています。そうして毎回の輸出入を問題なく着実に履行した結果、お客さまにお会いしたときに『いつもありがとう』と言われると、努力が報われたと感じます」

顧客から信頼を得るため、松岡さんは顧客を慮(おもんぱか)って行動することを学び、磨いてきた。
「ここ5年ほどでようやくできるようになってきたことですが、交渉時には、自社の要求ばかりを主張せず、お客さまにとってのメリットまで丁寧にお伝えするようにしています。それまでは自社のことを考えるのに精一杯なところがあり、お客さまへの気遣いが少し足りないような発言をしてしまったこともありました。その都度気づき、反省してきたことで成長できたのだと思います」

そのときどきに合った働き方を模索しながら、海外とかかわる仕事を続けてきた松岡さん。今後は、小麦事業以外にも携わっていきたいという。
「会社に来て同僚やお客さまと会って話すことや、新しくさまざまな方にお会いできること自体が楽しいので、今のような環境があれば業務内容にこだわりはありません。小麦事業しか経験がないことに危機感がありますし、何かしら変化していきたい思いもあるので、ほかの分野やまったく異なる業務にも挑戦してみたいですね」

そして最後に、キャリアの考え方について自身の経験をふまえてアドバイスしてくれた。
「同年代の友人ではなく、例えば組織をマネジメントする立場の方など、自分とは異なる視点・立場からアドバイスしてくださる方々に気軽に相談できる環境を作っておくと、長く働くための良いアドバイスをもらえることがあります。また、子育てと仕事について自分はどうしたいのか、その都度考えることも大切です。私自身、悩んだときは『なんで仕事してるんだっけ?』と自分を見つめ直していますが、いつも『仕事は楽しいし、せっかくやらせてもらえる環境があるんだから、努力してありがたく働こう』という結論に至ります。自分なりの理由があれば、何事も納得してできると思います」