自動車産業のパラダイムシフトをチャンスととらえ世界を変えていく主体者に

人事部長インタビュー Vol.41

Honda(本田技研工業株式会社) 小澤学さん

同社が大切にする「権威なきリーダーシップ」とは?


■世界で3900万人を超えるお客さまと出会い、さらなる喜びの拡大を目指す

私たちHondaは、2010年に「良いものを早く、安く、低炭素でお客さまにお届けする」という「次の10年の方向性」を掲げ、事業を推進しています。ここ数年で、地球規模の環境意識の高まりと、先進国から新興国への世界経済の構造変化により、世界の四輪市場では「小型車志向」が一気に進みました。こうした時代の変化に挑戦し続けることで、16年には、二輪車、四輪車、汎用製品を合わせて、全世界で3900万人を超えるお客さまと出会い、喜びのさらなる拡大を目指していく。それが私たちのビジョンです。

四輪事業においては、世界中のお客さまのニーズにいち早く対応でき、競争力のあるコストでベストな仕様を実現する「グローバルオペレーション改革」を掲げています。その一つとして、先進国だけでなく成長著しい新興国も含めた各地域が初期段階から開発に参画する取り組みを進めています。短期間に各地域に同じモデルを投入することで、早い段階からグローバルでまとまった生産台数を確保し、それらの部品を最も競争力のある地域でまとめて作ることにより、調達価格を大幅に引き下げることが可能となります。

また、世界各地域によって異なるお客さまの声に直接お応えできる商品を創り、お客さまの喜びを最大化していきます。例えばアジアでは、競争の激しい低価格車市場が展開されていますが、そこに対しては、アジア戦略車ブリオのプラットフォームを活用したセダンタイプや多目的タイプの車種を展開していきます。

パーソナルモビリティメーカーとして、私たちが取り組む領域は四輪事業だけには留まりません。Hondaの原点である二輪事業においては、いち早く海外に進出したことにより得られたノウハウや、リーディングカンパニーとしてのブランド力を原動力とし、アフリカ、中南米諸国などの新成長市場にも参入していきます。また、MotoGPマシンの技術をフィードバックしたバイクの開発にも着手し、新たなスポーツバイクの歴史を作ろうと挑戦しています。

汎用パワープロダクツ事業においては、東日本大震災の経験から、停電時でも自立運転可能な家庭用ガスエンジンコージェネレーションユニットを開発しました。こうしたエネルギーマネジメントそのもののあり方を提案することで、Hondaだからこそ実現できる、役に立つ領域の拡大を目指しています。

グローバルビジネスの構造変化、多種多様なお客さまからの要望など、一連のパラダイムシフトをどう捉えるのか? Hondaは、変化をチャンスととらえ、モビリティでイノベーションを起こす主体者となって世界を変えていこうと考えているのです。


■強烈な自我を持ったチームだからこそできるイノベーションを、世界で

Hondaには「国籍や学歴など属人要素にとらわれない登用を進めていく」という基本概念がありますが、グローバル人材マネジメントについては課題に直面していることも事実です。私たちは、創業後の早い段階から海外売上高比率が8割以上を占める事業を営んでいます。従業員約18万人のうち、約10万人は外国の仲間ですが、一人ひとりの能力を最大限生かしてシナジーを生むような組織体制にするためには、これまで以上の変化が必要なステージになっているのです。

どういうことかと言うと、事業としてのグローバリゼーションは海外売上高比率の高さがそれを物語っていますが、人のグローバリゼーションという観点においては、まだまだ日本人中心のオペレーションとなっているのが現状です。私たちのお客さまは非常に多様性に富んでいます。それも世界規模で、めまぐるしい早さで多様化が進んでいる。それを理解するだけの多様な価値観を社内で醸成するためには、一人ひとりが多様な価値観、視野観を持ちながら、グローバルHondaとしての総合力、求心力を高める変化をしていく必要があるということです。

そんな現代において、私たちが大切にしたいのは「権威なきリーダーシップ」です。Hondaでは、海外でマネジメントをする人材は、英語ができるできないよりも、あくまでビジネスニーズに照らして選んでいますが、最も重視しているのは、熱量が高いこと、つまり人間力がある人かどうかということです。その人に熱い人間的な魅力があれば、権威などなくても、人はついていきます。言葉の出来不出来を差し置いて、海外でリーダーシップを発揮し、人を動かすことができるというわけです。

僕がイタリアに赴任することになったとき、「人前で怒ってはいけない。怒鳴ってはいけない」など、いろんな方からアドバイスをいただきました。ところが、まったくそうではない。仕事上で必要と感じれば、心から怒りましたし、そうしていいと思った。仕事に対して真剣であれば、国や人種が異なっても、その根底にある“想い”というのは必ず伝わるものです。本当に重要なのは、自分をさらけ出し、真剣勝負ができるかどうか。そういうことの方が大切で、本質的だと思うのです。

HondaのDNAは「飽くなきチャレンジ」や、「俺たちにしかできないことをやってやろう」という個人の強烈な自我にあると思っています。どんな環境変化があろうとも、一人ひとりの“強烈な自我”を結集させ、世の中に期待されているような「イノベーション」を起こしていかなくてはならないですし、それこそが、私たちが自分たちに渇望し、目指している姿なのです。