「フリー(無料)」で儲かる仕組みをつくるには −門倉貴史

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■日本人に働きやすい「返報性の原理」

マクドナルドの無料コーヒー、グリーやモバゲータウンなどの無料ゲーム、書籍の無料公開など、本来は有料の商品やサービスをフリー(無料)で提供するビジネスが目立つようになりました。海外では無料レンタカーや、果ては無料の売春宿まで登場しています。

フリーのビジネスが流行る背景には、消費が飽和しているうえにデフレ傾向が強まっていることがあります。単に魅力的な商品を投入しただけでは売れなくなり、低価格志向と親和性の高いフリーが消費者にアピールするための手段として活用されているのです。

フリーのビジネスモデルの核心は、無料の商品・サービスを呼び水にして顧客を囲い込み、顧客の一部に有料の商品・サービスを購入してもらい、利益をあげることにあります。

なぜ、無料の商品・サービスを提供すると、有料商品・サービスの販売につながるのか。それは心理学でいう「返報性の原理」(他人から何かをしてもらうと、お返しをしなければという感情を持ちやすい)が働くためです。とくに義理堅いといわれる日本人には、この原理が働きやすいと考えられます。

では、フリーで儲かる仕組みをつくるためには、どんなことに気をつければよいでしょうか。

まず重要なポイントは、無料提供する商品・サービスにかかるコストをできるだけ安く抑えることです。

その点でフリーと親和性が高いのはネット上のサービスです。たとえば、ネットを通じて書籍の内容を公開すれば、コストはかかりません。失敗してもダメージは少なくてすみます。逆にリアルな世界のモノやサービスはどうしてもコストがかかってしまいます。

斬新なアイデアを考え、他に先駆けて取り組むことも重要なポイントです。宣伝効果を高めるには、消費者にインパクトを与えなければなりません。そのためにはまだ誰も手がけていない分野ややり方でフリーを手がけることです。それも、できるだけ短期間で。

他社が成功したのを真似て、後追いで参入してもうまくいきません。二番煎じではインパクトがなく、消費者に「またか……」と思われるだけでしょう。短期間で展開するのは、追随者が出てくると顧客が分散し、宣伝効果が薄れ、フリーのビジネスモデルがあっという間に成立しなくなるからです。

また、フリーを展開するには、提供する商品・サービスの品質がよいことが大前提となります。本を無料公開しても、内容がよくなければ口コミは広がりません。もし定価で販売しても「買いたい」と思う人が多い商品・サービスを無料で提供してはじめて、顧客の囲い込みができるのです。

マクドナルドは2009年7月24日から30日までの1週間に関東エリアで無料コーヒーの提供キャンペーンを実施し、客数を大幅に伸ばしました。

このキャンペーンは期間中は朝8〜9時までの間、100万杯限定でプレミアムローストコーヒーが無料で飲めるという内容でした。その後、無料コーヒーキャンペーンは全国で実施され、同社の最高益更新に寄与しました。

無料コーヒーが成功したのは、あらかじめ期間と提供数を限定し、かつほかに追随者が現れなかったため、費用対効果の非常に大きい宣伝効果がもたらされたからだと考えられます。

一方で失敗例としては、1990年代に展開された無料パソコンがあります。当時、まだまだ高価だったパソコンを無料にしたために初期コストがかさんだうえに、すぐ追随者が現れて宣伝効果は消失。結局、コストだけかかって顧客の囲い込みができず、共倒れしてしまったのです。

※すべて雑誌掲載当時

(BRICs経済研究所代表 門倉貴史 構成=宮内 健 撮影=山下弘毅)