2012年12月16日に投開票する衆院総選挙では、「シルバーデモクラシー」の問題もクローズアップされた。一般に「シルバーデモクラシー」とは、高齢者世代の割合が多くなると、高齢者を優遇した政策を打ち出さなければならなくなって、若者に不利になりがちだ、という意味。人口の割合がいびつになっていることに加え、高齢者の投票率が若者に比べて高いことが原因だ。

では、「若者目線」の政策を実現するには、どう行動すればいいのか。マニフェストの分析結果や若者に対する調査結果をまとめてみた。

60代の投票率は84.15%

高齢者の投票率の高さは、民主党が政権交代を果たした09年の総選挙の結果を見れば一目瞭然だ。世代別に投票率が高い順番に並べると、60代(84.15%)、50代(79.69%)、40代(72.63%)、70歳以上(71.06%)、30代(63.87%)。20代投票率が最も低く、49.45%だった。

そのせいもあって、投じられる票全体のうち、若者の「シェア」も低くなる。「新経済連盟」がまとめた全投票者数の世代別構成によると、70代、60代、50代が、それぞれ20%程度、40代、30代が15%程度を占めているのに対して、20代は、わずか9.1%に過ぎない。

ちなみに、この09年の衆院選で当選した議員の平均年齢は52.0歳だった。

このように選挙で高齢者の発言力が強い状況が続いているため、例えば高齢者医療費が「高止まり」し、年金も高い水準になるなど、若年者が社会保険料に見合った給付が受けられる見通しが立たない「負担超過」になるのは確実な状況だ。

この状況に異議を唱える声は決して少なくなく、「若者目線」からの政策評価も進んでいる。

「気になった政策分野」では経済が一番

例えば若手大学教員らでつくる「ワカモノ・マニフェスト策定委員会」では、「労働・雇用」「財政・社会保障」「政治参画」の3つの分野で各党の政策について「世代間格差を改善する政策かどうか」を評価している。

「労働・雇用」の分野では、労働市場の流動化と同一労働同一賃金を明記する「みんな」「維新」が高い評価を得る一方、社民、共産については「正規雇用の規制強化を目指す」、「未来」の前身にあたる「生活」については「財政出動依存」として否定的な評価を受けている。

「財政・社会保障」では、民主と維新の評価が高い。民主は、増税スケジュールを明記しながら現役世代向け給付やマイナンバー制を掲げた点、維新は世代間格差の是正を明記し、規制緩和による競争力重視を打ち出している点が前向きに受け止められている。一方、生活、社民、共産は「増税批判しつつ対案を示さない」と批判されている。

「政治参画」の分野では、社民党が「18歳選挙権、インターネット選挙解禁にくわえ、被選挙権や供託金引き下げ、在職立候補制へも言及」として高評価だ。

また、若者の投票率向上を目指す学生団体「ivote」が12月2日から7日にかけて、10代と20代の若者を対象に「気になった政策分野」をフェイスブックで聞いたところ、全部で538人が回答した。うち、多かったのは経済155票、外交117票、社会保障82票、エネルギー72票、の順だった。

代表の上中彩慧(うえなか・さえ)さん(20)は、

「就活を控えた若者に関心の高い雇用の問題も、この(多く票を集めた)『経済』に含まれるのでは」

と話しており、身近な問題への関心が、経済政策への関心につながっているとみている。