12月16日の総選挙を経て、日本の新政権が発足します。ぼくが最も期待しているのは、日本の国益や戦略をきちんと“定義”し、それを内外に発信していくことです。

衆議院総選挙の投票日が迫ってきました。当事者意識の時代です。皆さん、ぜひ投票所へ足を運び、与えられた主権を行使してください。

どこが与党になり、誰が首相になるのかも重要ですが、それ以上にぼくが注目しているのは、混沌とする国際システムのなかで、日本の国益と戦略をどのようにエクササイズしていくかという点です。

アメリカと中国。国際秩序を左右する二大国家では年明けに首脳部が新たなスタートを切ります。日本はこの二国の狭間(はざま)で何をしていくのか考えていかなければならない。

アメリカ大統領選挙を戦ったオバマからは政治家としての「顔」、そしてあふれ出る「リーダーシップ」が感じられた。中国の共産党第18回大会では、現代中国の「力」と、何事にも慎重に対応するという指導部の「戦略」を感じました。

一方、近年の日本の選挙は「顔」「リーダーシップ」「力」「戦略」のどれとも無縁のようで、国民の思考停止を促しているようにすら感じられます。蔓延するのは「政局」をめぐるミクロなせめぎ合いばかり。国際的にアピールしたり、注目されたりするものではありません。

外から日本を見ていて痛感するのが、日本には“定義力”が圧倒的に欠如しているということです。

例えば尖閣問題で中国側ともめたとき、日本メディアは「中国は尖閣を“核心的利益”と位置づけている」と騒ぎ立てました。しかし、ぼくから言わせれば、中国が絶対に譲れない核心的利益を定義し、拡張させるのは想定内のこと。だったら日本も自国の核心的利益をきちんと“定義”し、発信し返せばいい。これこそ真の国家間交流です。アメリカが日米同盟における役割を十分に果たしていないと思うなら、日本の立場を説明し、両国の役割を“再定義”すればいいんです。

今の日本は“リアクション国家”になってしまっています。

尖閣国有化に中国側が反発すると、日本政府はアメリカに対して「尖閣は日米安保の範囲内ですよね。アメリカさんは日本を守ってくれますよね」と確認することに奔走した。この部分を取り上げて、国民を安心させようとしたメディアも少なくなかった。向き合う相手は中国なのに、アメリカのほうばかりを向いている姿は、外からは不可解に見える。国家の安全をアメリカに完全依存しているかのようなイメージを、内外に与えてしまっている。

二大国家の動きにただリアクションしているだけでは、アメリカと中国のみならず世界各国からパッシング(無視)されていくでしょう。「日本の核心的利益はこれ」「日本の戦略はこれ」と内外に訴えることを、一有権者として新政権に期待します。民間人のチカラをどう活用するか、というテーマも前向きに議論してほしいところです。

では、日本はどの分野で存在感を示せばいいのでしょうか?

現状を俯瞰(ふかん)すれば、米中は今後しばらく内政面で手いっぱいになることがわかります。テロ、核、内戦、紛争をはじめとする平和構築問題、気候変動や再生エネルギーなどの環境問題、新興国への戦略的投資・援助や自然災害対策といった“グローバルイシュー”に対しては後ろ向きで、大国としての責任に疑問が投げかけられています。

一方、世界第三の経済大国で、「円」という比較的強い通貨を持つ日本は本来的に発言力を持っていい国家。米中がコミットしかねている、それでもグローバルに議論していかなければならないイシューを日本の国益と重ね合わせて自ら“定義”し、官民一体でリードしていく国際努力が今こそ求められています。

グローバルな定義力&発信力以上に、国際社会で日本の素晴らしさをアピールする方法があるというのなら、逆に教えて!!

今週のひとこと

日本の新政権に最も必要なのは、世界へ発信する“定義力”です!

●加藤嘉一(かとう・よしかず)

日本語、中国語、英語でコラムを書く国際コラムニスト。1984年生まれ、静岡県出身。高校卒業後、単身で北京大学へ留学、同大学国際関係学院修士課程修了。2012年8月、約10年間暮らした中国を離れ渡米。現在はハーバード大学ケネディスクールフェロー。新天地で米中関係を研究しながら武者修行中。本連載をもとに書き下ろしを加えて再構成した最新刊『逆転思考 激動の中国、ぼくは駆け抜けた』(小社刊)が大好評発売中!