「大卒の3割が3年以内に入社した企業を辞めている」ことが、厚生労働省が発表した資料で明らかになった。

 今回、厚労省がまとめた資料は、2003年3月卒〜2011年3月卒の新入社員の従業員規模別と産業別の離職者数および離職率である。大卒の離職率については、これまでも「3年3割(3年で3割が退職する)」といわれてきたが、調査の平均はまさにこの通説を裏付けている。

 だが、驚くべきは、従業員5人未満の零細企業では「1年目で3割、2年目で5割、3年目で6割」が離職している状況であり、企業の従業員規模による離職率の著しい格差だ。従業員数が多くなるにしたがって離職率は低下する。

 2009年3月に卒業した大学新卒者の3年後の離職率は28.8%と2003年3月卒以降では最も低い水準となっている。リーマン・ショックの影響で容易に転職先が見つかる雇用環境でなかったことが影響している可能性がある。

 しかし、「従業員5人未満」の企業の離職率は59.2%とリーマン・ショック以前と変わらず非常に高い水準にある。「5〜29人」が49.8%、「30〜99人」が37.9%、「100〜499人」が30.1%と中小企業では3割以上となっている。

 「500〜999人」規模で26.3%とようやく3割を切る水準で、「従業員1000人以上」は20.5%となり、零細企業とは約4割の大差がつく状況だ。

 こうした理由には、零細・中小企業と大手企業でもっとも格差があるといわれる「教育研修の機会の不足」「OJTの不足」「将来的な給与格差」「安定した組織」などがあると思われる。

 一方、産業別でも離職率に差が出ている。2009年3月大卒を見ると3年間に4割以上が辞め、離職率が最も高い水準にあるのが「教育、学習支援業」(48.8%)、「宿泊業、飲食サービス業」(48.5%)、「生活関連サービス業、娯楽業」(45.0%)である。

 離職率の全体平均(28.8%)を上回っているのは、「医療、福祉」(38.6%)、「不動産業、物品賃貸業」(38.5%)、「小売業」(35.8%)、「サービス業(他に分類されないもの)」(33.9%)、「学術研究、専門・技術サービス業」(31.7%)となっている。

 「建設業」(27.6%)、「卸売業」(26.8%)、「情報通信業」(25.1%)、「運輸業、郵便業」(20.8%)、「金融・保険業」(18.9%)、「複合サービス事業」(16.4%)、「製造業」(15.6%)と続き、離職率が最も低い水準なのは、「鉱業、採石業、砂利採取業」(6.1%)、「電気・ガス・熱供給・水道業」(7.4%)。

 インフラ整備や重厚長大といわれる従業員数規模で大手企業が多い産業ほど、離職率は低くなる傾向にある。

[人材採用・育成の人事専門誌「日本人材ニュースHRN」Vol.163(2012年11月7日発行)より転載] ※記事の内容は掲載時点のものです。

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