読者が情緒不安定になるほどの独特な世界観を持ったマンガ『変身のニュース』

12月に入りました!

この時期になると、各お店では年末年始の準備で毎日のように商品が入荷するのですが、その荷物が入った段ボールが山のように積み上げられている様がもはや恒例の風物詩となっております。

【関連:「その道のプロが選ぶ!爆走推薦図書」過去の記事】
 
「なんでこんなに大量の荷物を送ってくるんだ!業者のいやがらせか!?」

「いやいや、店長が発注した分ですよ。」

「……。」

みなさん、よろしかったら値つけを手伝ってみませんか……。

大体この時期に店頭で積み上げている商品は、その年でヒットしたものばかりで、それらを中心に売り場を盛り上げていきます。

ちょうど年末の音楽特番みたく、その年に活躍した新人アーティストや定番の大御所の歌手になぞらえて、いろんな商品が並んでいると思えば判りやすいでしょうか。

そんな年末仕様の売り場を見てると、
「この商品は、来年もまだ引っ張れそうだな。」とか、
「あの商品はもう、この年末年始で売り切って終わりにしよう。」などなど
まるでTV番組のプロデューサーみたいな気分になります。

いくら話題のタレントや大物アーティストを出演させても、演出やプロデュースがしょぼかったら、その番組はヒットしないでしょう。
それと同様にVVも、ただヒット商品を置いただけの売り場では決していい店とは言えず、
いかに演出や提案が効いているのかが、カギとなるのです。

とか言って、偉そうに講釈を垂れてますがその演出や提案がすぐに思いつくようなものではないんですよねぇ。

その売り場の挑戦と失敗がこの仕事の醍醐味でもあるのですが…。

あ、当店は今年はJOJOとニャンコ先生、LINEで攻めていきます。よかったら覗いてみてください!

そんな商品の品出しに追われながらご紹介するマンガはこちら!
講談社 宮崎夏次系「変身のニュース」!

講談社 宮崎夏次系「変身のニュース」

今年も本当に多くの新人漫画家さんがデビューしましたが、この人は雑誌「モーニング・ツー」掲載時から本当に単行本を楽しみにしていた方で、その独特な世界観は一読の価値ありです!

独特な世界観は一読の価値あり

九つの短編を収録した短編集なのですが、その話はファンタジーであったり、淡い恋物語だったり、意味不明なシュールな話だったり、絶望と希望の話だったりと多岐にわたっているのですが、そのどのお話もある種「文学性」が感じられ、読後のインパクトはこの人の作品でしか味わえないものです。

絵柄はとても上手いとはいえませんが、繊細さと荒っぽさを兼ね備えた不思議なタッチで、その不安定さは展開される物語にも相重なり、読んでいるこちらも情緒が不安定になってしまう程なのです。

個人的に深く印象に残ったお話は、少年の淡い恋心とセカイへの破壊衝動を詩的に描いた「成人ボム夏の日」と、とある湖のほとりに住む夫婦の喪失と再生を描いた「飛んだ車」です。
雑誌でこれらの話を読んだときは、しばらく頭がボーッとしてしまい、ちょっとした放心状態に陥りました。

とにかく設定もセリフも展開も、「どうしてそうなる」みたいな、まったく不可解なことだらけの塊のような短編集なのですが、読み終えるとそのお話のどれもが不思議と腑に落ち、ある種の爽快感が得られ、その読後感がしばらく頭の中で渦巻いて自分自身も非日常の世界にいる錯覚をうける。

そんな魅力があるのです。

今この文章を書くにあたって再度読み込んでいたのですが、自分が最初に読んだ時とはまたガラッと変わった印象を受けました。
どうやら読み手のその日のコンディションによって、そのたびに印象が変わってゆくのでしょう。

その印象の変化を楽しむのも、この作品を読むにあたってのポイントなのかもしれません。

僕もまた時間をおいてから、そうですね年末年始を乗り越えてひと段落したら、またこの本を手に取ってみたいと思います。

>「毎度―。佐川急便でーす。今日は10箱です!」

あ、どうやらまた荷物が届いたみたいですので今日はこの辺で、また次回!

>「誰―?こんなに竹馬頼んだひとー?」

【その道のプロが選ぶ!爆走推薦図書】
誰かが「これ良い」って心から薦めているものって、なんであんなに欲しくなるんだろう。
その道のプロが選んだ、今オススメの、本・マンガ・音楽を、お届けします。

■文:ヴィレッジヴァンガード・渋谷パルコ店・大岩店長(通称:マンガ番長)
■記事提供協力:ヴィレッジヴァンガードマガジン / http://vv-magazine.com/